|
「記録は破られるためにある」、そう語ったのは現役時代の巨人軍・王選手だったでしょうか。
現在開催されている第12回世界選手権「世界陸上」で、16日に100mで9秒58、そして20日に200mで19秒19の世界記録を樹立した、今日で23歳になるジャマイカのウサイン・ボルト選手の快挙は驚異的であり、一方で記録の持つ宿命を感じさせるものでしたね。
100mに限れば、1968年にアメリカのジム・ハインズが10秒の壁を初めて破って9秒95を記録して以来、世界のトップアスリートが38年間かかって縮めてきた0.21秒を、ボルト選手は昨年0.05秒縮め、さらにそのわずか1年後に0.11秒も縮めたのでした。
身長196cm、体重86kg。ストライド(歩幅)にして40歩。時速にして37.6km。これで100mを駆け抜けるボルト選手は、自ら壁を破り、そして自ら新たな壁を築く宿命のアスリートの一人になったのでした。
ボルト選手の活躍に沸き立つこの「世界陸上」の開催地はドイツ連邦共和国の首都ベルリン。この地に打ち立てられた「ベルリンの壁」が崩壊したのがちょうど20年前。それからさらに遡ること45年、この地で繰り広げられたエピソードを描くのがトム・クルーズ主演の映画「ワルキューレ」。
原題の「Valkyrie」の語義は 「valr」(戦場で横たわる死体)と 「kjόsa」(選ぶ)を合わせたもので「戦死者を選ぶ者」の意味で、この「ヴァルキューレ」は、北欧神話に登場する複数の半神だともされています。
本作では、シュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)が、ワーグナーの「ワルキューレ」を聴いた事から、世界の独裁者アドルフ・ヒトラーを完全に転覆させる、ある作戦を思い付くことになります。ワーグナーから徹底した影響を受け、ワーグナーの思想からイデオロギーを作り出し、ワーグナーのヴィジョンの成就とその実行を生涯の使命と見なしていた人物、それがヒトラーであるといわれています。
<Wagner - Die Walküre: "The Ride of the Valkyries" (Boulez)>
http://www.youtube.com/watch?v=1aKAH_t0aXA
本作で描かれる1944年7月20日のヒトラー暗殺未遂時、この「ワルキューレ作戦」は、反乱側が内乱鎮圧計画「ヴァルキューレ」を利用して権力掌握を計ったもので、暗殺計画自体の名称ではないそうですが、ヒトラー暗殺計画はこれまで、単独犯及び組織的なものを含めて少なくとも43回も企てられたこと知りました。
それは、ヒトラーという壁に立ち向かったドイツの良心たちの闘いでもあったわけです。この計画から9ヶ月後にヒトラーの壁は瓦解しますが、それから16年後に「ベルリンの壁」が築かれ、28年間にわたり東西を隔てることになりました。
そして、20年後の今、このベルリンの地で闘われるのは凄惨な殺戮戦ではなく、アスリートたちがプライドを賭けて闘う実に清々しいゲーム。参加国は世界212の国と地域、参加人数は約2000人。平和であればこそ、彼が見せてくれるパフォーマンスに興じることができるんですね。
〜「ヴァルキューレ」(ドイツ語:Die Walküre)はリヒャルト・ワーグナーが1856年に作曲し1870年に初演した楽劇。台本も作曲者による。「ワルキューレ』」表記もある。ワーグナーの代表作である舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』四部作の2作目に当たる。〜
ワーグナーのワルキューレは、フランシス・コッポラ監督の「地獄の黙示録」(1979)のベトナム空爆シーンで使われて衝撃的な効果をあげましたね。
<Great Movie Scenes 16 of 50 - Apocalypse Now>
http://www.youtube.com/watch?v=taaWqHyifzk&feature=related
|