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この本に収録されている、「報わざるエリシオのために」、「ケンジントンに捧げる花束」、「悲しくて翼もなくて」、「九月の四分の一」という四つの作品にはそれぞれテーマ曲が設定されています。「四十代の読者には懐かしさで胸が締め付けられるだろう。ロックとポップスの王道から、少しだけはずれたところで、佳曲を選んでいる。二十代の人は、小説を読みながら、ぜひこれらの曲をきいてみてもらいたい」(石田衣良「解説」より)
「報わざるエリシオのために」・・・・ビートルズ「イフ・アイ・フェル」
チェスの世界に耽溺する「僕」山本、高校来の同級生・武井亮一、同年齢で大学の一年先輩・中山頼子、彫刻美術館のブロンズ像、その作家でノルウェイの彫刻家ヤン・ウルフセンが登場します。
「おそらくはこの世の中は理由のあるものとないものとで溢れている。結論のあるものとないものに埋め尽くされている・・・」そして「意味のない作業を続けることこそが、実は生きることの本当の意味を知ることになる・・・」、「まったく無意味に見えるものは、存在することによって無意味なものなどないということを主張する・・・」
「ケンジントンに捧げる花束」・・・・ローリング・ストーンズ「ルビー・チューズデイ」
冥王星を巡るストーリー。「将棋ファン」の編集長を退職した42歳の「僕」、8年間交際している34歳の美奈子、1929年にイギリスに留学している間スパイ容疑をかけられ、そのまま帰化した吉田宗八、その妻でイギリス人ジェーン・ブラックストック。将棋を通して遠い日本を愛し続けた男が主人公に声なく語りかける思いに主人公は忘れていたものを発見します。
「悲しくて翼もなくて」・・・・レッド・ツェッペリン「ロックン・ロール」
登場人物は、月刊誌編集者・松崎43歳、同級生でバンド仲間の石田、不治の病を抱える高校時代の二年後輩・沢木真美。
松崎はツッペリンの「ザ・ソング・リメインズ・ザ・セイム」という曲の意味を履き違えていたということに気づくことで、二十年従事してきた仕事の振り返り、一端のけじめをつけるために故郷の北海道の思い出の場所に向かいます。
「歌とは何なのか?生きるとは何なのか?そして私たちはどこに向かって転がっていけばいいのか?誰がそれを知っているというのか。生きるとは何か、死ぬとは何か。私たちは何に向かって転がり続けているのか?・・・・それはこの自問に対する答えを探す旅でした。
<Led Zeppelin - Rock 'n' Roll - Earls Court 1975>
http://www.youtube.com/watch?v=FPczhhroQN0&feature=related
<The Song Remains the Same - Led Zeppelin>
http://www.youtube.com/watch?v=CcYZlRWWxO0
「九月の四分の一」・・・・アバ「ダンシング・クイーン」
登場人物は、小説家・僕、村川健二40歳、13年前に旅先で知り合い6日間をともに過ごした同年齢の高木奈緒、唯一のフランス人の友人・ジョエル35歳。
ある日雑誌で偶然見かけたブリュッセルのグランプラス広場の写真に惹かれ、自分の心の中にポッカリと空いた空間が必要なのではないか、それが挫折感の逃げ場所であるかもしれないが、そのような空間を求めてブリュッセルに旅立つ。一方の奈緒は絵の評論家を目指すために大学の研究室を辞め、本場の絵を見る目的で訪れたオランダ、ベルギー、フランスをルートに取った一人旅の中間地点がブリュッセルでした。
アバの「ダンシング・クイーン」は、スウェーデン王妃の結婚パーティーで始めて演奏され、この曲をバックに王妃が踊ったことから、フランスでは「すべての恋人たちの歌」ということになっているそうです。
まだ読んでいない方にはお勧めの一冊です。
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