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昨日、アンジェラ・アキさんの熊本でのコンサートに行ってきました。座席はなんと、1階1列33番。ステージのバックには左手にギター、右手にベース、中央奥にドラムセットがアレンジされ、中央フロントに、二台のピアノが置かれていました。私の正面の3m先には、これから演奏されることを待つグランドピアノが鎮座していました。
思えばこのブログで最初に彼女のことを取り上げたのは2006年の1月30日でした。以来6/16、6/21、2007年3/7、10/23と四度にわたって記事にしてきました。一人のミュージシャンのことについてこのブログで取り上げたのは、ビートルズを除いてアンジェラ・アキさんしかいません。あれから二年、私は昨日その彼女のステージの正面に座ったのです。
開演は19:15。バンドのメンバーに少し遅れて主役が登場すると会場は一気に総立ちとなり、そのまま彼女の世界に誘われていきました。最初にアンジェラ・アキさんが座ったのはステージ左手のコンパクト・グランドピアノでした。その距離7m。私の座席からは座っていれば彼女の顔が半分くらいしか見えない位置でしたが、総立ちになった聴衆と一緒に立った私には充分視界に捉えられる距離。
スタンディングで彼女の世界に浸りながらも、初老に達しようとする私の胸中で次第に「ん?今日はこの状態でずっと聞くのか?」という不安が過ぎります。でもそれは杞憂でした。彼女は数曲を演奏すると、私たちを座らせてくれました。そして、彼女の軽快なトークが始まり、ついに私の正面のグランドピアノの前に座りました。その距離3m。
「アンジェラ・アキ」の真骨頂であるピアノ一本で歌い上げる弾き語りのバラードが始まりました。それは、まるでデジャブでした。私はかつて彼女のCDを聞きながらぼんやりと、自分一人の目の前で彼女の弾き語りを聴けたら最高だろうなぁと思ったことがありました。その空想が、その瞬間、自分が想像した以上の至近距離で現実に起きていたのでした。その距離3m。
このコンサートには、私は実は最初から行くことを諦めていました。今まさに旬のミュージシャンのコンサートですから、チケット入手は困難だろうと思っていたからです。ところが昨年末に前職時代の同僚から思わぬプレゼントが舞い込んだのです。同僚の名は「亜紀ちゃん」でした。しかもいただいたチケットがこの席でした。その距離3m。
彼女のバラードに浸りながら、そのわずか3mの至近距離で聴きながら、その一挙手一投足が視界に入るこの距離が、思いのほか近寄りがたい、越えてはいけない3mであることにふと気づきました。まるでたった一人で聴いているかのような幻想に入りながら、実は私の背後には1600名の聴衆がいることを感じた瞬間、その3mがこの世で最も遠い神聖な距離のように感じたのです。
ステージは佳境に入り、アンジェラ・アキさんがピアノを離れステージ狭しとばかりに走り回り、聴衆に向かって唄いかけます。そして彼女が私の正面立ったとき、その距離は再接近のわずか2m。ここまで近いと思わず硬直して彼女の姿を見据えることが不可能となりました。人は予想以上の現実に置かれると、萎縮してしまうのですね。
コンサートが引け、興奮冷めやらぬ思いで会場を後にするとき、携帯を確認すると着信と留守電が入っていました。クオーターの一人娘を持つ沖縄の友人からでした。ほぼ一年ぶりに連絡をよこしてきたその友人に折り返し電話を入れました。いきなり「何してんの?」という彼女に、私はこう応えていました。「君の娘さんのコンサートに行ってきたところだよ」と。彼女の娘さんは「アンジェラ」と名づけられていました。
「どんなときも挫けずに頑張って欲しい」。そこには必ず「HOME」があり、「TODAY」が待っている。それがアンジェラ・アキさんのメッセージ。私にとってはこれまでの人生で最も苦しかった一年が終わり、心機一転を掲げる新年に、このようなプレゼントをしてくれた「亜紀ちゃん」に心から感謝します。ありがとうございました。
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