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新自由主義からの脱却を問う米大統領選と周回遅れの日本の参院選

田中良紹氏 国会探検 9th Jun 2016 


アメリカ大統領選挙の候補者選びでヒラリー・クリントンが勝利宣言し、「ガラスの天井を突き破り、初めて女性が大政党の大統領候補になった」と演説した。

 

一方のバーニー・サンダースは「ヒラリーに電話で祝意を伝えた」と述べて彼女の勝利を認めながら、しかし党大会まで「戦いは続く」と演説して支持者の熱狂的な声援を受けた。サンダースの「戦い」とは民主党の綱領に国民皆保険など「大きな政府」の主張を反映させることである。

 

一方でヒラリーと本選挙を戦うことになるドナルド・トランプはサンダース支持層取り込みに力を入れ、富裕層への課税や最低賃金引き上げを主張している。ヒラリーも勝利宣言の中で「サンダースの選挙戦は民主党を強くした」と語り、サンダース支持者を取り込む構えを見せた。ヒラリーもトランプも自称「社会主義者」の影響力を無視できないのである。

 

この予備選挙が始まる前まで全く無名の上院議員バーニー・サンダースは、こうしてアメリカ政治に地殻変動をもたらす存在となった。サンダースの主張がなぜ若者を中心に熱狂的に支持されるかといえば、それが新自由主義とは真逆の思想だからである。

 

レーガノミクスに代表される新自由主義の経済政策がアメリカ政治に現れるのはニクソン政権時代である。ただし新自由主義の経済政策はアメリカではなく南米チリで実施された。ニクソンは「社会主義は暴力革命でしか実現されない」と主張してきたが、1970年に南米チリは自由選挙で社会主義政権を誕生させた。

 

その前年にアメリカ大統領に就任したニクソンは自分の主張を覆す社会主義政権を認めない。1973年にチリ軍部のクーデターを支援して政権を転覆させた。そして誕生したピノチェト軍事独裁政権にシカゴ学派のミルトン・フリードマンが唱える新自由主義経済政策をやらせたのである。

 

国営企業を民営化し、規制緩和と大企業優遇、また農業の大規模化などを進めるためシカゴ学派の経済学者がアメリカから派遣された。これが世界で初めてとなる新自由主義経済政策の登場である。

 

それはチリ経済を刺激し、フリードマンが「チリの奇跡」と喜ぶほどの経済成長を成し遂げたが、同時に格差を拡大させ、3年後にはマイナス成長に陥る。最終的にピノチェトはシカゴ学派の経済学者らをアメリカに帰国させ、新自由主義経済政策は失敗に終わった。

 

次に新自由主義が脚光を浴びたのは1980年代のレーガン、サッチャー、中曽根時代である。レーガノミクスが注目を集め、民営化による「小さな政府」が世界の趨勢となり、「弱肉強食」時代が幕を開けた。しかし共和党の本流であるブッシュ(父)はレーガノミクスを「ブードゥー・エコノミー(怪しげな経済)」と批判した。

 

ところが「小さな政府」路線はアメリカ社会に定着する。日本を真似て国民皆保険をやろうとした民主党のクリントン政権は国民の理解を得られず、「大きな政府の時代は終わった」と宣言する羽目に陥る。そしてブッシュ(子)政権時代には「ネオコン」がさらにそれを徹底し、ついに大恐慌に匹敵するリーマン・ショックを招くのである。

 

そして新自由主義は貧富の格差を拡大し、福祉を切り捨て、若者は学費を借金で賄わざるを得ず、借金返済のために働く人生を背負うようになった。それが学費ゼロ、最低賃金引き上げ、国民皆保険などを主張するバーニー・サンダースへの熱狂的な支持を生む。そして共和党でも「ネオコン」路線とは立場を異にするトランプが共和党の候補者を次々に蹴散らして指名を確実にした。こちらも白人貧困層の不満が生み出した候補である。

 

つまりアメリカ大統領選挙はシカゴ学派の新自由主義政策が40年を経て何をもたらしたかを確認させ、そこからの転換を問うための選挙なのである。ヒラリーはクリントン政権時代に「大きな政府の時代は終わった」と宣言した過去と、サンダースが予想を超える支持を集めた現在とをどうバランスさせるかが問われている。そのため副大統領候補に誰を指名するかが注目される。

 

マサチューセッツ州選出の上院議員で「ウォール街を占拠せよ!」の思想的リーダーであるエリザベス・ウォーレンを起用するという噂が流れたこともあるが、それが現実になればファースト・レディとして「国民皆保険」の実現を目指したヒラリーが、あの時は挫折したが今度は新自由主義を脱皮する可能性がある。

 

彼女はファースト・レディ時代にF・ルーズベルト夫人のエレノアを真似ようとした。エレノアはルーズベルトのニューディール政策、つまり「大きな政府」路線を支え、リベラルな政策を次々に発案した人物である。そしてフリードマンの新自由主義はニューディール政策の土台となったケインズ経済学の批判から生まれた。

 

ヒラリーが大恐慌からアメリカ経済を救ったニューディール政策に思いを馳せれば新自由主義からの脱皮は全くおかしなことではない。ところでファースト・レディのヒラリーが「国民皆保険」を目指したのは日本経済を真似しようとしたからである。

 

当時のクリントン政権は表でジャパン・バッシングしながら、裏では日本の社会保障制度を真似しようとしていた。「日本に追いつき追い越せ」が意識されていたのである。ただし目標とする日本は、新自由主義に感染する以前の、社会保障に手厚かった時代の日本である。

 

しかし小泉改革以降、現在のアベノミクスに至るも過去の日本経済は否定され、いまや新自由主義の影響下にある。安倍総理は来月投票の参院選でまたまたアベノミクスを争点に掲げたが、柳の下に泥鰌が何匹いると思っているのだろうか。

 
アメリカで新自由主義からの脱却を争点に選挙が行われようとしているとき、日本の選挙が周回遅れのように見えて仕方がない。デフレから脱却するよりも新自由主義から脱却し、将来不安をなくす政治が求められているのではないか。
 

転載元転載元: 如月の指針

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