|
閑 話 休 題−103−
世の中男性と女性で成り立っていますが、それはやはり男性と女性で一組となる、というのが自然の摂理だからなのでしょう。どこの世界においても、小さい頃にはどちらも性などを意識しませんから、大人たちも気にもしません。しかし、性を意識し始めると、互いにぎこちなくなるもののようです。
タイでは、夕方日が暮れ、食事を終えると、若い女性は、母屋を出て忍び寄る他村の若者との話を楽しみますが、決して肌を触れ合うことはなく、手を握ることなどもっての他です。冗談でも男性が女性の身体に触れようものなら大騒ぎです。部屋の中から父親が飛び出してきて、若者は罵倒されるのみならず、打ち据えられ、娘を傷物にしたと如何なる仕打ちを受けるか知れません。
美人の誉れが広まったり、話し上手が広まると、女性のもとには連日のように男性が忍び寄ります。そんな中から女性は一人だけ選びますが,かといってすぐに両親に紹介などしません。それほど『ふしだら』ではなかったのです。気が合う相手を見つけると、村のお祭りを待ってその祭りの中でそれとなく手を触れたりしながら互いにより深く知り合います。昔のことですから、親に内緒で映画に行ったりなどできません。村のお祭りが唯一の場でした。
しかし、そこは男と女です。結婚するとそうした堅苦しい雰囲気も溶けてくるのですが、昔の人は、面白い話をそんな新婚夫婦を題材に作っています。
本来どれほどに長いものであるのか分かりませんが、今残されているのは非常に短い、日本の落語的に言えば、小話のようなもので、小話より短いかもしれません。
それでもそれらを繋げると面白い話になります。
男と女
新婚の夫婦を称して、タイでは『新しいご飯と脂ぎった魚』といいます。どちらがご飯でどちらが魚かは分かりませんが、新米の炊き上げたばかりの湯気立つご飯かとも思いますが、もしもそれがもち米であれば、ぴったりとくっついて、いわゆるタイ米のパサパサ感がありませんから、何となく新婚夫婦に似ているともいえます。又、脂の乗った魚を焼きボタボタ滴る脂を見ると、いかにも美味しそうです。
そんな新婚の夫婦がいました。
結婚したばかりです。二人の間に幸せそうな笑顔以外浮かびません。言葉よりも見詰め合っては微笑み、気配を感じては恥ずかしがる初心な新婚さんです。
朝起きて来ての食事の席ですが、いつもは一緒に賑やかに同席している筈の両親も、新婚さんに遠慮してその場にはいません。新婚夫婦二人だけの甘い朝食の席はどこかそこだけ甘い蜜の味がするようで、朝の光以上に輝いてさえ見えます。
男は、新妻が蒸しあげたばかりの温かいもち米を右手で掴み、指先で丸めながらチラッと新妻を見ればニコッとします。そんな夫の視線を感じて新妻は頬を染めます。頬を赤く染めながらも新妻もチラチラと夫を見てはクスッと笑うばかり。一言も言葉を交わさない二人ですが、そこには何萬語の言葉より多くのものが互いの心を繋いでいるようでした。いつまでたっても新婚夫婦の朝食は終わりません。
それでも何とか食事を終えた夫をまだチラチラ見てはクスクスと一人笑みを浮かべる新妻に、思わず聞いてしまいました。
「どうしたんだい。さっきから手が動いていないが・・・」
夫はそれでも嬉しそうです。
「だって・・・フフフ・・・」
「だって・・・なんだい・・・」
何を想像しているのか、男も満面の笑みを湛え、幸せ一杯です。
「だって・・・あんたの小さいんだもの・・・」
「・・・・」
夫がどう言い返したのかお話は伝えていませんが、どう解説すればいいのでしょうか・・・
初心に見える新婚さんですが、そこは女房の家とはいえ、新婚の夫も男、年頃になった女房の妹を見るとやはり気になります。しかも手を伸ばせば届く所にいるのです。同じ家に住む義妹は、新妻以上に新鮮に見えました。
夜になると、まだ電気などない時代、日が暮れて夜の闇が降りると、ランプの明かりだけが頼りです。それも食事が終わり、世間話が終わるとテレビもラジオもない時代、することとてありませんから、それぞれが床に就きます。しばらくして、ランプの明かりも消え、物音が消え、はるか遠くで犬の吼える声だけがします。
今のように密閉したアルミサッシの窓などありません、木の窓はたいていは大きく開けられたまま、鉄格子が嵌められて外からの泥棒の侵入を防いでいますが、家の中は自由に動けるようです。窓から差し込む淡い月の光を頼りにその家の次女の寝室に忍び込んだ黒い影が一つ。闇に解けて少女の眠る蚊屋に近づいていきます。
それからしばらくして、少女は、異様な気配に目を冷ましました、なんと自分の蚊屋の中に月明かりを浴びて姉の夫がいるのです。
「義兄さん・・・どうしてここにいるの」
しかし、少女の声は両親、姉に聞かれることを憚って微かなものでした。
「えっ・・・どこだ・・・ここは・・・」
驚いて問い詰める少女に、婿殿は驚く素振りも見せません。
「あたしの部屋よ、義兄さんの部屋は隣でしょ。・・・」
「どうしたっていうんだ・・・寝ぼけて来てしまったのか・・・」
「寝ぼけて・・・義兄さん・・・タバコ吸ってるのに・・・」
義兄は、ニヤつきながら、返事もせず無言で蚊屋を出て行きました。
しかし、このことは翌日の朝になっても誰にも知られませんでした。
女房の妹の部屋に入った後も何事もなかった日々が続き、相変わらず、新婚さんの甘いいちゃつきの日々は変わりません。
そんなある日のこと。
当時の人たちは、田仕事、畑仕事などのうち、力仕事は基本的に男性ですが、それ以外は男性というものは昼間からお酒を飲んでいたり、博打をしたり、適当に遊ぶようです。そんな男たちを女性は「しょうがないね、うちの宿六は・・・」などと愚痴をこぼすことなく、温かく見守り、どこまでも男性を立てます。
「何してるんだい・・・」
外から帰ってきた婿殿が、女房に言いました。
「機を織ってるのよ・・・あんたのパー・カ・マーをもう一枚と思って・・・」
ある人に言わせると、タイの民族衣装とは、男性はこのパー・カ・マー一枚である、といったそうですが、日本の手ぬぐい様のものですが、大きさはバスタオルよりも長い布地で、時には鉢巻に、時には腰に巻き、時にはバスタオルに、時には毛布に、時には布団にすらなる万能布です。昔は、そんな布を織るのもまた女性の仕事でした。男性の為に布を織るとき、女性は幸せを感じたそうです。
「ふうん・・・で、ちょっと金くれないか・・・」
そんな布より闘鶏に賭けるお金のほうが大切なようです。
「又闘鶏なの・・・」
女房が腰に挟んだ財布から幾枚かのコインを出します。闘鶏で勝ったためし等ありませんが、女房はこうしていつも金を出して断ったことがありません。
それから数日後、この日も、いつものように昼過ぎに婿殿が帰ってきました。
部屋の中からいつものようにカタカタと機を織る音が聞こえてきます。今日は闘鶏の賭場が開かれていません。遊び仲間も夫々家に帰りました。婿殿は、することがなく地面の餌をつつく鶏を見ていましたが、何を思ったのか、ニコッとすると、足音を忍ばせて階段を上がり、機織の部屋に近づきました。
木切れを打ち付けた部屋の壁には節穴が一つ開いています。やおら腰に巻いたパー・カ・マーをめくり、股間の一物を取り出すと、節穴にそっと差し入れました。
コンコン・・・
婿殿が女房の注意を引こうと薄い板壁を叩きました。
ところが、いつもそこで機を織っている筈の女房は、その時台所に出て不在でした。女房に代わって機を織っていたのは、女房の母親だったのです。
節穴から出ているものを見た義母は、
《うちの婿か・・・馬鹿にしをって・・・》
怒りを覚えると、近くにあったカマを手に掴み、エイッとばかり振り下ろしました。
夕方還ってきたその家の旦那が、床に落ちた肉片を見つけ、青白い顔で食卓に座る婿に聞きました。
「どこで鹿の肉を手に入れたんだい」
「なら、爺さんからも一切れ取ってやろうかいのお」
まだ怒り収まらない婆さんが沈黙の婿に代わって言いました。すると笑顔の爺さんが真顔になって言うには、
「婆さん・・・口が過ぎるぞ。わしの刀をその減らず口に食わしてやろうか」
この家族どうなりますことやら・・・他人の家の事です、これ以上の詮索は止めにして・・・
(了)
アッチャラー・ワンナエーク著「ラーンナーの民間伝承物語」に収蔵されている「新しいご飯と脂ぎった魚」「女房の母と婿」「姉婿と女房の妹」の三話より題材をお借りしました。
画像は、『カーウ・マン・カイ(KHAAW MAN KAI)』で、夫々に秘伝があるようです。何となく、ジョウジさんの記事(http://blogs.yahoo.co.jp/totoya32/27323091.html)
に触発されて画像を探してみました。
動画は、大変好きなチエンマイの歌手で、スントリーという人です。
「ピン川下り」とでも訳す「ローン・メー・ピン(LOONG MAE PING)」です。
|
全体表示
[ リスト ]



コロン さん
コメントありがとうございます。
この極は、チエンマイの南のラムプーンの人が作ったものですが、故郷の情景を歌にしていますが、特徴としては、地元の楽器を使い、地元伸びを自慢しています。勿論歌詞は地元の方言で、バンコクのタイ語とは少し違っていますが、これも完全なチエンマイの言葉ではないですね。
こうした、ゆっくりした流れるような感じがチエンマイの町であり、方言であり、人情ですね。こうした曲を聴いているとうっとりします。
2011/2/27(日) 午前 8:01 [ mana ]
男の安易な愚かさがでています。
やられてしかるべきです。
傑作
2011/2/27(日) 午前 8:05
株式会社セロリの管理人 さん
コメントありがとうございます。
タイ料理というと辛い・・・とばかり思う日本人が多いですが、華人が多くいますので、麺類も豊富ですし、こうした鶏飯、焼き鳥などもあり、食事に苦労することもないと思います。こうしたお店は、店構えをしていますが、オープンですから、余り衛星に拘ると利用し辛い化も知れません。
タイに旅行される友人がこうした料理を味わうようにしていればより楽しい旅行になると思います。
2011/2/27(日) 午前 8:08 [ mana ]
puyuma さん
コメントありがとうございます。
タイではむしろ女性が男性の世話をしているようですね。男性の役目はもっぱら力仕事と喧嘩、ばくちに酒でしょうか。
女性の件ですが、これは悲しい歴史がありましてね。
昔は大変貧しかった農家で口減らしを兼ねて少女を売りました。勿論大昔ではなく、そうした女衒(多くは華人ですが)が出てきてからの話ですが、そうして、学校にも行かず、幼い頃からそうした世界に染まっていますから、18歳くらいで年季が明けてもすることがない。これが現実ですね。ですから自然とそれで生きるしかないようです。
これとは別に、最近は、学生が遊興費ほしさ、高価なブラン品を買うお金ほしさでこの道に入ります。これは多くは男性に騙されて純潔を失った女性で、もうやけ半分。この種の女性は、多くが同じ学生が仲介業者となるようですが、仲間に引っ張り込むのでしょうね。そして、最近の風潮では、逆強姦といいますか、女性の猛者が男性にお酒を飲ませて・・・玉の輿狙いと征服数重ねの意味があるのでしょうね。
世の中変わりました。
それでもまだ純情な子はかなりいますが・・・。
2011/2/27(日) 午前 8:19 [ mana ]
ネコマロ さん
コメントありがとうございます。
世の中男と女ですから・・・
ただ女性の対処の仕方が日本よりも直接的ですが・・・
彼女の歌声は、何となく心が落ち着きますね。
2011/2/27(日) 午前 8:21 [ mana ]
道後 さん
コメントありがとうございます。
この婆さんは、まだ切り取っただけですから良いほうかも。
凄い人は切り取った後でアヒルに食べさせたりするそうですから・・・女性を本気で怒らせると怖いのでしょうね。
2011/2/27(日) 午前 8:23 [ mana ]
あゆみ さん
コメント&傑作ありがとうございます。
夫々の国に文化がありますから、男女の関係も違いますね。
こうしたことにならないように男性も浮気はいけないのでしょうね。
2011/2/27(日) 午前 8:25 [ mana ]
さくらの花びら さん
コメント&傑作ありがとうございます。
男性も正業を持たず、TPOを弁えず、日々無為に時を過ごしていると、こうした酷い目にも合うのでしょう。それにしても、婆さんも堪忍袋の緒が切れたのでしょうね。
2011/2/27(日) 午前 8:28 [ mana ]
男は安易なほうに流され易いです。
哀しいですが・・・
傑作
2011/2/27(日) 午後 0:18
こんにちは!
基本的には、南国の男たちは、だらしないイメージがありますね。沖縄の男にもあるし、高知でも男より女性の方が強いイメージがありますね。
2011/2/27(日) 午後 0:41 [ keiwaxx ]
カマちゃん さん
コメント&傑作ありがとうございます。
基本的に、男というのは人種を超えてどこか共通しているところがあるように思います。ただ、それに対する女性の対応が、力強いかやんわりと抵抗するかの違いかもしれません。
2011/2/27(日) 午後 9:03 [ mana ]
keiwaxx さん
コメントありがとうございます。
どちらかというと男性は外の世界に、女性は内の世界に、かもしれません。男性は、外敵に対して備えなければなりませんが、女性は家を守るという大切な仕事があります。ひとたび外敵がいなくなると、男性というのは案外好き勝手なことをしているのかもしれません。ですから、内側では案外女性上位かもしれませんが、これも外向きには男性の面目をつぶさないようにするのではないでしょうか。
2011/2/27(日) 午後 9:09 [ mana ]
そうなんですか。
根性ありますね^^
こちらこそ、ご来訪やランキング応援に感謝を申し上げます。
また伺います。
2011/2/28(月) 午前 11:00
すいません・・・笑えるかと思ったら・・・
怖い(−−;;;
痛そうですし・・・
傑作・・・です
2011/2/28(月) 午前 11:21 [ ATS ]
単純に笑えないですね・・・
最後の落ちなんか、ちょい怖いですP
2011/2/28(月) 午後 0:43
近野 さん
いつもご支援ありがとうございます。
かつてタクシン攻撃の大衆運動で常に壇上でニュースを伝え、参加者に事態の推移を教えていたのは実は女性です。直前にはロケット砲を打ち込まれて仲間が死に、それでもマイクを離さず、目立つ壇上で参加者に語り続けていましたが、本気になった女性は案外強いのかもしれませんね。
2011/2/28(月) 午後 6:20 [ mana ]
ATS さん
コメント&傑作ありがとうございます。
単純に笑えればいいのですが、南国の女性たちが激情家ですから、現実にもこうした事件が起こりますね。ただ、通常は大変男性に尽くすのがタイ人女性の性癖ですから、裏切りさえなければこうした話を笑って聞けますね。
2011/2/28(月) 午後 6:23 [ mana ]
株式会社セロリの管理人 さん
コメント&Pありがとうございます。
最近の日本もかなり殺伐としているようですが、よく聞くのは海外駐在から帰った男性が奥さんから逆三行半を出されるケースです。そうなると男性は身包み剥がされ無一文で放り出されますからまさに生き地獄ですね。そんな犠牲者を何人か知っていますが、身から出た錆かもしれません。
それにしても、タイ人女性の仕返しは、男性にとって死ぬより辛いかもしれませんね。日本人でタイ人女性に泣かされている人も多々いるようですが、気を付けて欲しいですね。
2011/2/28(月) 午後 6:29 [ mana ]
カオマンガイは大好きなんですけど、日本であんまりおいしいお店に出会えてませんね。タレがみそですよねぇ〜。
2011/2/28(月) 午後 7:28
yam*a*yuic*i さん
コメントありがとうございます。
さすがですね。
タレがなかなか難しく、店によって違いますが、中国味噌のようなものに、唐辛子、にんにく、生姜、などが入りますね。鶏も湯がくよりも湯通しに近いようですね。ご飯の炊き方味付けにも夫々工夫があるようです。簡単そうですが、いざ作るとなるとかなり難しいですね。
2011/2/28(月) 午後 9:21 [ mana ]