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うん、もう大丈夫。
と、思った。
このところ、原因不明の蕁麻疹が延々と続いて苦しく
アレルギー科にアレルギー検査なぞ行ってみた。
初めての病院は、何が嫌って
どれだけ注射がうまい人がいるかがわからないこと。
こちらの呼吸を伺ってすっと針を射し込んでくるのを、
注射嫌いな私は凝視していないと、どうもいけない。
始めての病院のはいじめての看護婦さんは、軽口をたたきながら
お喋りよりも軽やかに、速やかに済ませてくれて、
上手い人がいるいいところに来たと、
感謝したら、「あら」と、照れていてかわいらしかったが、
褒めたら動揺したのか、四角い注射跡抑えのバンドエイドが、上手く晴れずに
一枚を無駄にした。
大人しく刺されている患者でなくて申し訳ない。
「10分は抑えていてくださいね」
と、看護婦さんの声を背に真夏のような日差しをくぐって会社に帰る。
会社から1分の場所に病院があると、昼の間に色々済ませることができて嬉しい。
「10分ですね」と、
看護婦さんに手でOKサインを出し、昼食へ。
お昼が終わって、もういいだろうと剥がした途端、嫌な予感。
ふつっと、プクッと赤い小さな点が膨らみ、つつーっと行くところを指で押さえた。
どうしよう。
とりあえず、してはいけないのだろうけれど、少量だからと指で拭った。
目の前にあったコンビニに飛び込んだ。
軽く拭ってまだ血がこぼれぬうちにと、
バンドエイドの箱をもって慌ててレジへ。
「すみません、開けていいですか?」
バンドエイドをレジに置いた瞬間、
会計が、始まる前に、レジのおじさんにお願いをした。
左手のひじ裏の赤いしずくは、早くもまた零れ落ちそうで、
キョトンとしたおじさんは、
見るやいなや、「いいよ、いいよ、開けてあげよか?」
と、言って下さった。
「お願いします」地獄に仏の気分で私はおじさまの言葉に乗っかる。
会計も始める前に、おじさんは不器用そうに慌ててバンドエイドの箱を開けてくれる。
赤いしずくはわずかに丸の形を崩す。
おじさんに貼る準備ができたとき、
左腕の赤はかなり大きくなっており
「貼ってもらってもすぐダメになるだろう。対処頂いたら、あとでもう一度貼りなおそう」
と、思った折、
おじさんは私の状況を見て取って、
近くにあったティッシュでパパッと私の腕を拭き、バンドエイドをぴたりと貼って下さった。
おじさんが、私の腕を拭ったティッシュ、
ひどく鮮やかに白と赤のコントラストを見せていた。
「もう大丈夫」と、ニコニコ笑うおじさんに、
「ありがとうございます」と感謝して、会計し、もう一度お礼を言ってコンビニを出た。
正直な所、血を拭って下さるなんて思わなかった。
私が子供の頃、
大人たちは転ぶと怪我をよく拭ってくれた。
でも、大人になって、
ニュースなどを見るたびに、
注射の針は使い捨てに(もうあれからずいぶん経ちますね)、
血液からうつる病気が。。。なんて話題があったりして
今の自分が、まったく知らない大人がけがをしていて、ためらいもなく拭うことができっるだろうかと
自問する。
目の前にいたら、体が動くかもしれないけれど、
それでも、
こんな風に何も中書なく動くことが出来るだろうか?
なんて考える。
慌てたおじさんが、開けてくれたバンドエイドの箱。
慌てて少し歪んでいるこれ、見ているとなんだかほっこり嬉しくなる
これからしばらく、これがちょっとした
私のお守り。
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