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ツギハギ猫は眠りについてしまった。 細い眼はいっそう細く。 夜はどんどん深くなっていった。 変な鳥は時々虫の声に反応するように 『ギョッチ・ギョッチ・・』 と鳴いた。 「君が眠ろうとも僕は話を続けなければならない。 これは君との契りだから。」 変な鳥はツギハギ猫をしばし眺めて また話を始めた。 「遠い遠い森の奥。人里離れた深い森に野獣は住んでいた。 野獣はとても醜くそしてとても悲しい眼をしていた。 人間とは残酷な生き物だ。 彼はその醜さ故に人々に忌み嫌われ森の奥に追放されたのだ。」 「彼は一つだけ似つかわしくない物を持っていた。 胸からぶら下げた銀のスプーンだ。 それがいつからそこにあるのか、彼自身も知らない。 ある日いつものように醜く、いつものように悲しい顔で 泉のほとりを散歩していた。 そこは鬱蒼と木々が生い茂った深い森の中で 唯一光のあたる場所だった。 彼はふと空を見上げた。 空には何も無かったのだが 彼の中に空虚な感覚が訪れた。 彼は泉の水面を見下ろした。 相変わらず醜く悲しい顔がそこに映し出されていた。 来る日も来る日も水面を見つめて 絶望と落胆そしてため息で一日を終えるのが彼の日課であった。 だけど、このときばかりはいつもと違った。 何も感じないのだ。 彼は心を落としてしまったのだ。 しばらく泉に映った自分の顔を静かに眺めていた。 空気は息詰まることも無く ただただ静かであった。 すると水面が揺れ始め一匹の魚が現れた。」 「魚は野獣に訪ねた 『君が落としたのはこの銀のスプーンかい?』 そう言って銀のスプーンを空へ投げた。 野獣は胸元に手を持っていって胸をさすった。 宙を舞うその美しい光は紛れもなく野獣のスプーンだった。 眩い光を覆って煌びやかに宙を舞い やがてまた泉に引き寄せられる。 『いや。違うな。オレの心はもっと寂れて醜いものだ。』 野獣は心無い表情で答えた。 『そうか。』 魚がそう言ったと同時にスプーンは短い音をたてて水面下へと消えた。 魚も一瞬野獣の方を見て泉の底へと潜っていった。」 「自分の心が美しいことを知らなかったのか。」 ツギハギ猫は眼を開き宙を見つめたまま呟いた。 「次の話をはじめます。」 「それともあえてその道を選んだのか。
悲しいものだ。」 |
とりとめのない話
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深いですね・・。
悲しみに多い尽くされて苦しい想いばかりするのなら、心はないほうが平和に暮らせるのかもしれないけど、でもなんだか淋しいですよね。 いつかもう少し時間がたって、心が癒された頃、また心を取り戻すチャンスが訪れるといいのにな。。。
2007/6/26(火) 午後 2:24 [ mayuge ]
野獣君、フレーフレー もっと、迷え。。。なんちゃってね。
2007/6/26(火) 午後 8:36 [ ku-so ]
結局嘘つきは金のスプーンも銀のスプーンももらえないのかあ。。
でもなんだか野獣君はすごく哀れで悲しくて、だけど美しいお話ですね(*´∀`*)
2007/6/27(水) 午後 7:43 [ abi ]
ホントに綺麗なものを目の当たりにすると
自分を卑下したくなります。
だけど悲しみは必要なものですね。
2007/6/27(水) 午後 7:55
野獣のイラスト たまらなくかっこいいっす!
2007/7/2(月) 午前 6:49 [ rom*hu* ]