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遠くの方で列車の音が聞こえる。 相変わらず静かで月夜が美しい森の中。 池のほとりにカメレオンのような派手な色合いの鶏冠をした グルグル目玉の変な鳥と 体にツギハギのあるパンツを履いたネコがいる。 「演芸場の話をしよう。」 変な鳥はそう言ってプルッと首をひねった。 「リトルマーメーメイド。なんて演目は勘弁してくれよ。 見ているだけの魚なんて拷問みたいなもんだ。」 ツギハギネコの白いひげが言葉に合わせて揺れた。 「いつもは目に付かない街の小さな演芸場がふと目に留まった。 ずっと以前から決まっていたかのように演芸場に吸い寄せられた。」 「入り口にバニーガールでも見えたのか?」 「席に着くとやがて開演のブザーがなり 暗闇に薄っすらと赤い光が灯された。 海の音と枕木が軋む音が聞こえる。」 「陰鬱なオープニングだ。」 「やがて一筋のスポットライトが落ち 光はどんどん強くなる。 それにあわせて列車は加速し枕木の軋みは鼓動に変わる。」 「動悸息切れにご用心。」 「照明の眩しさに目を細めていると 大きな影がスクリーンに浮かぶ。 赤子の鳴き声が響き渡り、影は二人の男女となった。」 「なるほど。誕生か。男の方はお父さんと見せかけて医者なんだろ?」 「くるくると色鮮やかな照明が回り 遊園地の音やセミの声、運動会の音 めまぐるしくステージを駆け回る影たち。 子供の笑い声。大人の笑い声。」 「演劇ってどうしてもっとわかり易くしないのかねぇ。 どうせならレ・ミゼラルブをやれよ。ジャンバラジャンジャンをさ。」 「やがて静かになり優しい照明となる。 穏やかにフェードインするムード音楽。 一人の女性の影が手を振った。 また映像がめまぐるしく移り変わる。 電車、信号、顔、顔、顔」 「誰だっけあれ。懐かしいなぁ。」 「光と音がしずかに消え 雨の音が聞こえる。 次第に雨脚は強くなり 不意に照明がこちらを照らす。 雷鳴が轟く。」 「うわっと。へそを押さえろっ!あれ!?俺へそが無い・・。」 「照明は消え、あたりは暗闇と静けさだけ。 終演を迎えたようだ。 演目は・・」 「走馬灯だろ?」 「次の話をはじめます。」 「遣り残したことがある。新しいパンツを買わなきゃ。」 |
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2008年09月13日
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