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業界小説(GIFT)

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業界小説 GIFT

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 シオサイトの日テレ側を歩いていると、D社の3Fをかなり近くから見上げる事が出来る。
ちょっとした打ち合わせで日テレにいた俺は、帰り道をテレテレ歩いていた。

 D社の建築構造上最も裏側と言う感じのその界隈は、ガードマンも手薄で認証がなくともそのまま入れそうな気がする、
それに拍車をかけるのが、どうしても自然に目が上を向いてしまう。3Fの光景があるからだ。

 そこには、回りとそぐわない光の中で最新のウエイトトレーニングマシンを相手に汗を流す人々からほとばしるエネルギーが充満している。
企業内にジムを持っている所など珍しくもないが、あのD社の人間のキャラとスポーツジムがシンクロしないんだ。

 だって、この時間暇なやつはそのままコリドー街や2丁目あたりのクラブだろうし、忙しい奴は社内で会議か、外のスタジオに入っているだろう。
 広告代理店の社員が健康志向になるなんて考えられない。
 しかも社内ジム・・。
 D社あたりならもっと著明なブランドスポーツジムだろ、普通。

 でも、一応びっくりするほどのスタイリングの女性などいないかと
思ったが、窓から見える範囲では皆無だった。

 まあ、こんな立派なビルを建ててしまって、未来都市の様な空間で仕事する凄い事になっている業界だけれど、ここの所は、六本木ヒルズ系のサイバー代理店が気になってしかたがない。
このD社だってSB社と共同でCCI社を作ったし。
 対向するH社もその他の企業と共同でDAC社を立ち上げている。

 前にも建物の肖像権で揉めた事があるが、このITでの主導権争いは、著作権の整理や関係業界での仕切りあいになっている。

 音楽業界ではMacの大活躍ですでにネットから1曲150円くらいでDL出来る様になった。
 これで、山野楽器やその他のCDショップの店舗は来年にはなくなるだろう。
 配信の利権と技術だけが残る。映像も関東では遅れている地上波デジタルが 稼動しはじめ、同時に携帯用の1セグメントを使ったTV番組のサイマル放送を受信できる次世代FORMAが製品化されれば、それこそ35年前くらいの映画界とCM界と同じ図式がTV局とIT企業の間で起こる。

 それを象徴的にM&Aで掘り起こした、ホリオコシモンが正論を吐いていたが、それを受けていたCXのH氏も言語自信満々、実は全くの無知蒙昧だったわけだ。
でも、あの人が民放連の会長だったりするので、おのずとTV局の前近代性も判ろうと言うものだ。

 つまり、そんなこんなの状況の中で企業にこれからはこれですよ!と御注進するアイデアなど旧広告代理店に持ち合わせは無く、勢い社外への丸投げ仕事ばかりになってしまう俺のいる会社など何が起こっても不思議じゃないし、モラルの低下からもっと色んな事が起こるだろうと思える。

などと考えつつ、新橋駅に向かった俺は、例の件で松涛に行く事にした。

(9)

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俺は何かを考える時散歩をする・・。
まあ、他の事もするが、今は散歩の気分だった。

新しく出来たシャネルの黒いビルの前を横切る。
この横からの出入口には10階にあるベージュTOKYOレストランの黒服がいるけど、
これが結構レベルが高いのでついでに女性も集っている。
だから集っているこの女性たちもレベルが高い。

と、携帯が振動した。
紀藤沙織の名前とナンバーが表示されている。

「お久しぶり・・」
「どうかしら、そろそろ決めてくれたかしらぁ」

「いやあ、最初に思っていた金額より日を追ってプラスされそうだけど・・」

「あらぁ、判っていただけた?」

「最初のCDを買うだけなら、最近起きてる問題の説明が出来ない」

「そうよ、思ったより、かなーり高価かもね」

「こんな事はいつまで続くんだ?」

「ねえ、もっとワクワクしたい?」

「いや、今のところ一番最初に会った電車の中よりワクワクしたことはない」

「じゃあ、碑文谷にもう一度来てみてよ」

そうだ、あの後の出来事を説明してなかった・・。
説明したくなかった。
一度整理して考え直そう。
と考えていた・・。

携帯は突然切れた。
すぐコールバックした。
空虚な音が聞こえただけだった。

クリエイティブの部屋

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「ああー、ついてないわ・・」

ディレクターの安藤里香が思いっきり上体をそらして、ドーンと椅子の背に寄りかかった。
まあ、見方によってはヨガのリラックスのポーズだけれど、
何分、ブラウスのボタンが3つ外しだし、ローライズのスラックスだから、
まあ、見るなと言う方が無理な注文だ。

ついてない内容は、本人が喋れたければ喋るだろうし、
放っておく方がいい時もある、
が、目の保養サービスもあったことだし、優しいオジサンは訊いてみた。

「俺を嬉しがらせてくれるのか?」

「ああ、ごめんなさい」
「この前のインウッドのZIP03のポスターですけど」

「ああ、途中で女優からモデルに変ったヤツだな」
「あの背景に、湾岸に建ちはじめている高層マンションやその建築現場をモチーフにしました」
「ああ、聞いてるよ画質を荒らしてコントラストを強調したんだ」

「あの、背景に写っているアイランドアクアタワー側から、
ウチの建物を勝手に使うなと言ってきてるんです」

「そんなに大きく撮ってたか?」
「いえ、大きくは無いのですが、あの特徴のある楕円の上部がすぐわかると言うんですよ」
「ああ、日浦CD,ちょっと見て下さいよ」

安藤は椅子から降りて、ポスターの色校を床に並べ始めた。
今度はローライズのパンツの背中とオシリがすっぱり見えて、そう言えばLAで流行っていた
黒い紐だけのパンツが見える。
見たくないけど、見える。
俺には罪はない。
見たのは俺の目だ、見せたのは彼女のヒップだ。

確かに、広告の表現には建物と言えどもパブリシティー権と言うのがあって、所有者が
撮影を禁じている場合があるが、それがどうもグレーゾーンで、
弁護士によっても意見が食い違う。
まあ、それは弁護士の分だけ真実はあるわけだし、
そんな事はTV番組の『行列の・・』なんかを見てればよくある話。

それに、著作権のある建物もあり、撮影前にチェックするのが常識ではあるが・・。

「ふーん、なるほどねえ」
「でも何パターンかあるじゃない」

問題は、裁判なんかになると面倒だし、その間掲載中止でもなれば損をするのは客先だ。


「ロケハンチェックは?」
「もちろんサムネール送って、広報を通して口答でOKって言われてるんです、
それにこれは背景ですから・・」

「どうして、ダメがわかったんだ」
「先ほど、その広報の方から、この前の件ですけど、上司がダメだと言えと・・、
泣きそうな声で・・」

「なるほど、よくあるヤツだ」
「すいません、何とかします」
「一応、客先には3タイプ撮ってあるので良いのをお持ちしますと伝えてありますから」
「ただ、モデルの事務所とカメラの九鬼さんは、これが一番だねって」
「まあ、仕方ないね、今見る限り他の案も悪くは無いから至急製版して。
スタッフには俺からも謝っておくよ」

俺は、この前のCDと言い、今回の件と言い、
最近の身の回りに起こる出来事がどうも作為的で、何となくいやーな気分だった。

GIFT/7 碑文谷の家

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碑文谷の家。

立野芳子が調べてくれた真行寺の家は駒沢通りを少し入った碑文谷にあった。
そしてその家には、番地がない。
つまり1丁目分全部敷地だった。
俺はとりあえず一周走って見た。 勝手口がマンションの入り口ほどある。

俺は、玄関を通り過ぎその先の通りの手前に古いモスグリーンのワーゲン・ジェッタを停めてしばらく 眺める事にした。
丁度大きなカヤの木の枝が張り出して道路に日陰を作っている。
真昼間でも少しは存在感を消すのに役立ってくれそうだ。

  1時間ほど過ぎたころ、一人の女性が出てきた。
真っ赤なワンピースにサングラスをしている。
まるで、私を見てねと言いたげなスタイルだ。

俺は、そんなに単純じゃない。
これは「おとり」だ!
こんな手にひっかかちゃ素人だ・・・。
俺は動かなかった、
前方からシルバーのクラウンがやってきて女をピックアップしていった。

それから、15分は過ぎた、
さっきのを追うべきだったか?
若干弱気になる、腹もへった、小便もしたい、こんな事はいつもだが・・。

俺の勘はまだ錆びてない。
予想通りもう一人、出てきた、
今度は浅黄色の絽の着物に日傘をさしている。
と、言う事は、歩きか?
いや、そんな事はあるまい、でも今車を降りたら、見張られていたら終わりだ。
着物は角を左に曲がった!
日傘に隠れて顔が見えない。立野に言われている外見は正確ではない。
彼女が真行寺久美と言う証拠は何もない。

しかたない、俺はゆっくり車を出した。
そして、その角は曲がらないで、通り過ぎた。
その時一瞬左を見る。
絽の着物が日傘を閉じるところだ、
彼女は腰を折った、体の線は意外に若い。
瞬く間に白いSクラスにすいこまれた。

俺は思いっきり右足を踏み込んだ、次のコーナーを左へ、
古ぼけたジェッタは音がうるさい。
もしあのSクラスが右折していれば、俺の前を通り過ぎるはずだ、
 後10メートル、俺はスピードを落とす。鉢合わせでもしたら大間抜けだ。
後5メートル。
ダメだ出てこない。
停めて待つか。
いやそれでは、もし目の前を通った時に待ち伏せしたように見えてしまう。

俺はとりあえず一時停止をして左右を確認しそのまま直進した。

Sクラスは居た。行儀の良い象のようにその巨体を静かに横たえていた。
ボンネットだけが太陽の反射を受けてはいるが他の部分は日陰に奇麗に収まって、
おまけに前面のナンバープレートはつけていない。

頭の片隅でこれ以上絡むのは危険だと言っている。
確かにSクラスの前に俺の車の全部を晒した。
そして、向こうも用心のために直ぐに動こうとしなかった。
この緊張感の意味を理解しないほど俺は能無しではない。
ただ、残念なのは白のSクラスには俺のジェッタのナンバーも知られた。
それなりの組織なら2日もあれば俺の横浜の自宅を荒らすだろう。

 なら、いまハッキリしといた方が良いこともある。
いづれにしても、相手は俺より一枚上手だ。

 俺は左折を三度繰り返して、Sクラスの後ろについた。
なるべくゆっくり、まるで犬が自分で決めた順位づけの格上に従うように車を停めた。

こんな俺の捨て身の手に困る相手ではなかった。
Sクラスは動かない。ナンバーは見えた。
でも、この場合相手のことを知るのは俺をより不利にする事はわかっている。
俺はゆっくりジェッタの扉を開けた。
 まさか、いきなり撃ってはこないだろう。
右足を出した。

突然Sクラスは走り出した。
同時に右側からガンメタのシーマが俺の前に割り込んだ。
知った顔がでてきた。

GIFT/6

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火曜日のオフイス-1

「真行寺久美の経歴はほんとに面白いんですよ。」

営業の立野芳子は、俺のデスクに今日3杯目のラテのカップを置いた。

「彼女慶応の医学部出て、コピーライターしてるんです。 インターン研修までやってるみたいですよ。 もちろん医師国家試験にはパスしてる。 外科だったらしいんですが、理由があって付属病院やめてるんですよね。」

立野は真行寺の黒豹のようなまなざしを思い出し、 軽く尿意を感じていた。

その真行寺久美とは紀藤沙織の素姓を探っている時に出てきた名前だ、
真行寺久美と紀藤沙織は横浜のF女子学園での同窓で当時から何かとつるんで行動してきた様だが、
最近は何かのキッカケでその関係が普通ではないとの情報を得た。

そのきっかけは、我社のクリエイティブにいる立野芳子に何となく月曜日の一件の話をしてみると、
紀藤沙織と言うのが本名なら、何となくそれらしいのが彼女の良く行くクラブにいると言うので、
それなら当ってくれ、と幸せにも部下の言葉を信じていたらこれが嘘のように命中した。

 で、紀藤はともかく、その真行寺と言う女性が何やら興味を引くと言うので、立野芳子に追加で当たらせて見たら、興味深い調査結果を話し始めたわけだ。

 立野がふわりとお手洗いに消えると同時に、俺の携帯が鳴った。

 俺は椅子にかけた上着のポケットから携帯を探ると、何やら4つに折った 紙切れが引っかかって一緒に引き出され、ぽとりと床に落ちた。

「090-4526-XXXX」

携帯は直ぐに切れた。非通知だった。
そして、紙切れの番号はあの日紀藤沙織から受信した番号でもなかった。

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