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曠野の歌 伊東静雄
わが死せむ美しき日のために
連嶺の夢想よ! 汝(な)が白雪を
消さずあれ
息ぐるしい希薄のこれの曠野に
ひと知れぬ泉をすぎ
非時(ときじく)の木の実熟るる
隠れたる場しょを過ぎ
われの播種く花のしるし
近づく日わが屍骸(なきがら)を曳かむ馬を
この道標(しめ)はいざなひ還さむあゝかくてわが永久(とは)の帰郷を
高貴なる汝(な)が白き光見送り
木の実照り 泉わらひ・・・・・・
わが痛き夢よこの時ぞ墜に
休らはむもの!
小高根二郎は、この詩について、次のように書いている。伊東静雄は、この詩で、これは死者になって初めて故郷に帰る覚悟の表明である。正者としての帰郷は、歓迎されないことを静雄が予測しているからだ。つまり、日頃彼が故郷から超越した超絶したいと願わねばならなかったのか?それは末尾の痛き夢のためだったのだと。私も帰郷という言葉に心が痛む。帰郷とはアルプス画家セガンティー二から構想に見合う図柄を借りたといわれる。小高根はたまたま故郷諌早に帰って遭遇したセガンティー二の死者としての帰郷・・・・・。この事実が静雄の心情に生涯の決意か覚悟に結晶するほどの感銘を与えたとしても、別に不思議ではるまいと。
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詩
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