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かへる靈 川路柳虹
汽車はいつものやうに 小さな村の驛に人を吐き出し、 そつけなく煤と煙をのこして 山の向ふへ走り去った。 振り立つた五六人のひとびとは 白い布で包んだ木の箱を先頭に、 みんな低く頭を垂れて 無言で野路へと歩き出す。 かつての日の光栄は
かつての日の尊敬すべき英雄は、 いま骨となつて故里に還つたが、 祝福する人もなく、罪人のやうに わづかな家庭に護られて野路をゆく。 青い田と田のあひだに 大空をうつす小川 永遠の足どりのやうに 水の面に消えまた現れる緩い雲。 この自然のふところでは
すべてが、あまりに一やうで 歓びと悲しみも、さては昨日も今日も、 時の羽搏きすら聴えぬ間に生きている。 無言の人々に護られた英靈は、 燃える太陽の光のなかで、 白い蛾のやうな幻となつて 眩しくかがやき動いている |
詩
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