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宇宙から地球を俯瞰(ふかん)し、新たなビジネスを生み出す動きが世界で活発化してきた。主役は、人工衛星の画像データを利用するベンチャー企業だ。「宇宙の目」は産業や暮らしにどのような変革をもたらすのか。
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世界経済を左右する石油。その貯蔵量を宇宙から探り出し、公表前に先物取引の情報として販売しているのが、米ベンチャーのオービタルインサイトだ。
石油タンクの蓋は固定されておらず、液面に浮いている。このため、貯蔵量が増減すると、蓋も上下に動くことに着目した。人工衛星で撮影した世界中のタンクの画像を人工知能(AI)で分析し、蓋に映る影の大きさからタンクごとの貯蔵量を把握する。国や地域の備蓄量をはじき出し、需給予測につなげるのだ。
宇宙からの“のぞき見ビジネス”は大きな可能性を秘めている。電気自動車大手の米テスラ社の工場を継続的に監視し、駐車場に置かれた出荷待ちの台数から販売実績を類推することによって、同社の業績予測につなげたこともある。
国内代理店の伊藤忠商事関係者は「衛星データを解析する情報提供サービスは、今後も急速に広がっていく。まさにビジネスチャンスだ」と力を込める。
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衛星データの利用は日本でも始まっている。広大な小麦畑が続く北海道芽室(めむろ)町。7月下旬に一斉に収穫期を迎えるが、畑は約6千ヘクタールにも上り、JAめむろが貸し出す刈り取り用のコンバインは農家の間で取り合いになっていた。
そこで、衛星で撮影した畑の画像から生育状況を把握した。小麦に含まれる葉緑素を分析して畑ごとに最適な収穫日を予測し、順番に刈り取るようにした。
2003年に本格導入すると、高品質の小麦を収穫できるようになり、作業も効率化した。コンバインは50台から35台に減った。JAめむろの長濱修農業振興センター長は「広大な畑を確認するのは大変だが、衛星画像なら手軽で視覚的に判断できる。間違いなく役立っている」と話す。
愛媛県南部の愛南町。沿岸のいけすに、スマートフォンを使って遠隔地から餌をやる装置が取り付けられている。ベンチャー企業のウミトロン(東京)が開発したものだ。
水産養殖はコストの約3分の2を餌代が占める。「水温などのデータを組み合わせれば、適切な時期に適量の餌やりができる」と藤原謙社長。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星が観測した水温や赤潮のデータを適切な餌やりに活用すれば、水産養殖の競争力強化に役立つとみる。
衛星のビッグデータは国やJAXAが大半を保有しているが、民間の取り組みも始まった。ベンチャー企業のアクセルスペース(東京)は、22年までに小型衛星を数十基打ち上げ、画像やデータを提供する事業を5月に開始した。
例えば東京・浅草周辺の画像から大型観光バスの台数を割り出し、地上のカメラ画像と組み合わせると、観光客の数を推定できる。中村友哉社長は「衛星と地上のデータの組み合わせで、さまざまな事象の本質が見えてくる」と話す。
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宇宙開発は政府主導だったが、小型衛星の増加などを背景にベンチャーへのシフトが進んでいる。
圧倒的に先行するのは米国だ。テスラ社の最高経営責任者(CEO)を務めるイーロン・マスク氏が率いるスペースX社は、もはやベンチャーの域を越えており、年内にも民間として初めて有人宇宙船を国際宇宙ステーションに送り込む。観光旅行用の民間宇宙船の開発も進んでいる。
追い上げる中国は7月、民間ロケットが初めて衛星の軌道投入に成功した。ただ、ロケットと弾道ミサイルは技術的な共通点が多い。中国は軍と民間が技術開発で協力する「軍民融合」政策を推進しており、成功の背後には人民解放軍の後押しがあったようだ。
日本はどうか。ベンチャー企業のインターステラテクノロジズ(北海道)が5月、民間単独開発のロケットで初の宇宙空間到達に成功した。しかし7月には失敗、計4回の打ち上げで成功は1回だけだ。打ち上げビジネスにはほど遠い。
出遅れを挽回するため、安倍晋三首相は昨年、宇宙ベンチャーに5年間で計1千億円を支援すると表明。宇宙産業を30年代初めごろまでに約2兆4千億円に倍増させる方針を掲げる。
今年2月には主に政府系の衛星10基が得た地球観測データの無料公開も始めた。AIなどで活用し、新たなビジネスの創出につなげる狙いだが、世界のスピードについていけるか。楽観はできない。産経新聞
宇宙産業は民間と防衛省が連携すべきだと思う。防衛省は防衛機密は公開せず、民間が成長産業に活用できるものは無償で提供してイノベーションにつなげるべきであると考える。
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