真正保守を訴える

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安倍晋三首相が来秋の消費税率10%引き上げを表明した。経済への影響回避に「あらゆる施策を総動員する」と強調するが、2回先送りされた消費増税はやはり「特上の下策」である。このままでは前回と同様、消費も雇用も「失われた3年」の再来になるだけだ。(iRONNA)

初めに明言しておくが、筆者の立場は消費増税に反対である。なぜなら、日本経済は1990年代初め以降、約20年陥っていたデフレを伴う長期停滞から、ようやく脱出しかけている段階だからだ。この勢いをわざわざ止める政策を実行するのは「特上の下策」と言わざるを得ない。

そもそも消費増税は、せっかくの経済の好転を阻害するものであることは間違いない。そしてその停滞は無視できない社会的損失を短期的・長期的に招き、アベノミクスの中心であるリフレ政策(日本銀行のインフレ目標付き金融緩和)にも大きなマイナスの影響をもたらすことは疑いない。

◆停滞した消費と雇用、平成26年4月の8%への引き上げでは、表明が25年10月1日でちょうど半年前だった。そして、前回の駆け込み需要は年明けから本格化し、26年4月に急激な反動減が襲った。

23年の消費総合指数を100とすると、前回の消費増税の影響が顕在化する前の同指数は104・1であり、現在の消費総合指数もまた104・3(30年8月)である。26年4月の消費増税以降、消費は長く低迷し、29年3月にようやく現状並みに戻り今日に至っている。

別な視点から考えれば、ギリシャ危機、英国の欧州連合(EU)離脱、米大統領選の不透明感などで世界経済が動揺していた影響が消費を押し下げたかもしれない。だが、消費増税以降、その低迷は長く続き、26年4月から増税前の水準に回帰するまで3年もかかった。

また、雇用の面でも停滞をもたらした。安倍政権が発足した24年12月の完全失業率は4・3%で、それ以降、消費税率が8%に引き上げられた26年4月には3・6%と、0・7ポイント改善していた。だが、増税以降、失業率の低下は停滞する。0・7ポイント低下するまでに、消費回復と同じようにほぼ3年を要している。
前回の経験でいえることは、消費が一度落ち込むと、回復が長期間見られないことだ。これは現実の経済成長率の足を引っ張る。また、完全雇用の水準近くまで来た失業率の改善も、ここで再びストップするだろう。さらにはインフレ目標の達成が当面困難になるのは明白である。
◆「自省なき官僚集団」消費増税は恒久的な影響を持つため、一時的な財政対応ではその負の影響を打ち消すのは難しい。特に金融政策の効果がここでまた大きくそがれることになれば、アベノミクスの根幹を揺るがすに違いない。過度な悲観は禁物だが、過度の楽観はかなり皮相な見方だ。田中秀臣「上武大学教授」
日本経済を再生するには、リフレ政策と同時に、積極財政に舵を切るべきである。そのためには消費増税10%に反対。インフラ投資、教育・福祉・医療を充実させることである。
今年も「骨太の方針」の作成が佳境を迎えている(6月に政府が発表予定、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」)。方針を決める経済財政諮問会議では、2019年10月の消費増税が予定される中で、2014年の増税時のような景気の落ち込みを防ぐ対応策が議論されている。

「消費増税による悪影響」が、正しく認識されていない

この中には、消費増税前の駆け込みと反動減がもたらす「経済の振れ幅」を平準化する対応策がある。だがこれらは本質的な対応とは言えないだろう。なぜなら消費増税の悪影響とは、増税による家計所得の目減りによって個人消費が落ち込むことだからである。
「増税による恒久的な家計所得の目減りを、家計への所得補填政策でどの程度カバーするか」が、増税のインパクトを決する。2%の消費増税分から軽減税率分を引いた4.6兆円程度が、2019年10月から恒久的に家計所得の押し下げに作用する。
一方、予定されている消費増税分のうち、約2兆円については幼児教育や大学授業料無償化などの対策に使われるというのが安倍政権の公約となっている。実際には、増税ショックを和らげる恒久的な家計への所得補填がどの程度の規模になるかは、制度設計によって変わると筆者は考えている。
消費増税とともに実現する、家計に対する所得補填の規模がほぼ明らかになっている政策では、幼児教育無償化に約0.7兆円、低所得年金生活者(対象800万人)に対する支援金などに約0.5兆円が充てられる、と筆者は見積もっている。
以上は増税開始と同時期に始まる見通しだが、この恩恵を受けるのは、子育て世帯、低所得高齢世帯であり、消費性向が高い一部世帯への所得補填は、増税ショックを多少和らげるだろう。
もう一つの所得補填の目玉は、大学など高等教育の授業料無償化、支援金支給などの政策である。だが、これを通じた所得補填については、規模や対象範囲は依然明確になっていない。なお、この制度は2020年4月から始まるので、2019年10月の消費増税には間に合わない。
家計が支払う大学などの授業料の総額は年間3.7兆円と試算され、個人消費の1.5%の割合となる。この対象世帯の範囲によって、授業料無償化による家計への所得補填は数千億円レベルで異なってくる。

結局、家計所得への補填は1兆円程度?

2017年の自民党部会における資料によれば、低年収世帯には「授業料無償化」+「年収300〜500万円世帯へ半額無償化など」で、0.7兆円の財源(=家計への所得補填)が必要と試算されている。この対象となるのは、大学授業料を負担する世帯の2割程度とみられる。
一方、最近の報道によれば、大学などの授業料無償化について、授業料全額無償化は世帯年収約200万円以下に限り、世帯年収380万円まで、年収ごとに段階的に授業料の一部を補填する案が検討されている模様である。
この案だと、大学無償化による所得補填をうけるのは対象世帯の1割以下になるとみられ、上記の自民党案で示された0.7兆円の半分以下の規模に増税時の家計所得補填が抑えられる可能性がある。
これは授業料無償化に限る話で、別途、学生への生活支援の枠組みも検討されていると報じられていることから、ある程度の上積みはあるかもしれない。最終的には、今後固まる制度設計次第ではあるが、霞が関から漏れ伝わる報道を踏まえると、2兆円分とされる消費増税の使い道のうち、家計所得補填にまわる規模は1兆円程度にとどまる可能性がある。
そうなると、消費増税による家計負担は3兆円を超える可能性があり、家計所得の1%超に相当する可能性がでてくる。2014年の消費増税時の8兆円の家計負担と比べると小さいものの、2019年の賃金上昇率がどの程度高まるかで、個人消費に及ぶ影響は異なってくる。
もし賃金が1%前後の伸びの状況で3兆円を超える増税負担となれば、可処分所得の伸びはほぼゼロまで抑制される。2014年ほどではないが、個人消費に相当なブレーキがかかるリスクがある。

1〜2兆円規模の追加国債発行は、ほとんど問題がない

2%インフレの実現が難しい2019年度半ばの時点で、家計所得と個人消費にブレーキをかける緊縮財政政策の妥当性をどう考えるか。教育無償化には人的資産を底上げする性質があり、この恒久的制度の財源を国債発行によって調達する合理性はある。
また、すでに国債発行残高GDP比率は低下しており、1〜2兆円規模の追加国債発行はほとんど問題にならない規模である。そして、日本銀行による現行の金融緩和の枠組みでは、日銀による国債購入が減少していることが金融緩和の効果を弱めている可能性がある。国債発行の拡大は、金融緩和の効果を高め総需要安定化政策の強化となり、遅れている脱デフレを後押しする。
国税・地方税をあわせて、税収規模はすでに100兆円に達しているが、早期に名目GDPが3%程度伸びる経済状況を実現することは、3兆円規模の税収増が確保されることを意味する。であれば、長期的に財政収支を安定させるためには、道半ばにある脱デフレと正常化完遂を最優先することが最も確実なプロセスになる。
1990年代半ばからの不十分な金融緩和政策、緊縮財政政策の帰結としてデフレ不況が長期化してきたことが、公的債務拡大の最大の要因だと筆者は考えている。
そう考えると、総需要安定化政策を徹底する堅実な政策運営が、最終的に将来世代の税負担を減らすことになる可能性がある。政治的な事情が優先され、インフレ率が極めて低い中で再び個人消費に大きなブレーキをかける緊縮政策に踏み出す可能性が高まっているように見えるが、そうであれば脱デフレ完遂を前に日本経済に暗雲が漂ってもおかしくはない。

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