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憲法を 守って国は 滅ぶなり 篤人
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2018年11月23日
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さて、今週ご紹介するエンターテインメントは、最近、欧米などのコンピューターに使われるハードディスクへの監視チップ埋め込み疑惑や、産業スパイ問題などで物議を醸すあの国のお話でございます。
昨2017年11月30日付の本コラム「中国14億人「完全管理」ディストピア実現へ 街なかAI監視カメラ+顔認証+ネット履歴+犯罪歴…」
でご紹介したように、中国では2014年6月から、当局が、全人民約13億8600万人の社会・経済的な信用度を評価する「ソーシャル・クレジット・システム(社会的信用システム)」の構築を始めており、2020年までに、全人民の全個人情報をデータベースで管理し、人民を番号で管理するシステムを構築しようとしているといいます。
そして、今年も終盤に差し掛かり、そのシステムの構築まで1年あまりとなるなか、どのように管理するかという具体的な動きが次々明らかになっているのです。
というわけで、今回の本コラムでは、2020年をメドに、AI(人工知能)を使って人民の一挙手一投足を監視しようとする中国当局の状況についてご説明いたします。
■スマホ熱中すると格付けダウン、接続速度も遅くなる…
今年10月29日付の米経済系ニュースサイト、ビジネスインサイダーや同月31日付の米公共ラジオ局(NPR)などが驚きを持って伝えているのですが、中国当局は、全人民を「ソーシャル・クレジット・システム」に基づくポイント獲得数によってランク付けしようとしており、ポイントの多い少ないに応じて、様々な特典を受けたり、処罰されたりするといいます。
サイトによると、個人のポイントは、金融資産の状況などに応じて決められる「プライベート・フィナンシャル・クレジット・スコア(個人金融信用スコア)」と同様、普段の行動に応じて増えたり減ったりします。それに応じて自分のランクが変わるというのです。
現時点では、このシステムの運用状況は小規模で、一部は各都市の市議会が運用していますが、既に数百万人がポイント数によってランク付され、恩恵を受けたり、逆に不利益を被ったりする事例が多発しているというのです。
ちなみに、各個人にどれくらいのポイントを与えるかを決める作業は、前述した昨2017年11月30日付の本コラムでご紹介したように、中国のインターネット通販最大手、アリババ・グループと、その傘下の金融機関「セサミ・クレジット」といった、多くの個人情報を扱う民間企業が担っています。こうした国内の大手企業が当局に個人データを提供しているわけですね。
では、現時点で、どんなことになっているのか。
サイトなどによると、まずは、ポイント数が少ない低ランクの人は満足に旅行することも許されません。今年3月、シンガポールの有料テレビチャンネル、チャンネルニュースアジアが伝えたのですが、ポイント数が低い約900万人の人々が国内線の旅客機のチケットの購入を拒否され、約300万人がビジネスクラスの列車の切符を買えなかったといいます。
そして、前述した“人民ランク付け&AI監視システム”は無賃乗車はもちろん、空港などの搭乗ゲートの周辺でまごついていたり、禁煙エリアで喫煙している人を直ちに特定し、罰するようになるそうです。
また、ポイント数が少ない人はネットの接続速度が落ちています。平たく言えば、ネットにつながり難くなるといいます。
さらに、テロ攻撃や空港でのセキュリティに関するフェイクニュースをネット上で拡散した人物は法を犯したとみなされ処罰されるほか、長時間、ビデオゲームに熱中したり、些末(さまつ)な買い物で無駄遣いしたり、ソーシャルメディアへの投稿も法律違反とみなされる可能性があるとのこと…。
■借金を返さないと子供が退学、ペットしつけ失敗すると飼えなくなる
また、今年7月、北京のとある大学では、借金の返済に失敗したためポイント数が減ってランクが下がり、ブラックリストに載った父親のせいで、息子である学生が事実上、退学になったケースもあるといいます。
さらに中国のタブロイド紙、新京報によると、中国の高校生と大学生のうち、入学時に受けねばならない「軍事訓練」への参加を拒否した17人が、進学できなくなったり、勉強を続けられなくなったといいます。
兵役を拒否すれば、休暇が与えられずホテルにも宿泊できません。逆にポイント数(ランク)が高い人は、欧州のような人気の海外への旅行許可が普通の人よりスムーズに下るといいます。
北京在住の匿名の女性は2015年、英BBC放送の取材に、自分はポイント数が高いので、ホテルを予約する際、デポジット(手付け金)を現金で支払わなくても予約できたと明かしています。既に2015年時点でこんなことになっていたのですね。
逆にポイント数が低く、信頼を失った人は国営企業や大手銀行で管理職になれません…。
また、こんな事例もあります。中国東部、済南市(さいなんし)では2017年1月から、犬をペットとして飼っている人々に対し、12ポイントを付与。犬が暴れたり吠えたりして公共の秩序を乱したり、フンを路上に放置したり、首輪やリードなしで散歩させたりした場合、このポイントを減点。逆に、近所の避難所でのボランティア活動に参加するといった善行ではポイントが増えます。
犬の首輪には、飼い犬の種類や年齢、飼い主の個人情報、ポイント数といった情報が分かるQRコード付きのタグを埋め込んでいます。警察などが持ち主をすぐに特定できる訳ですね。
そして、悪行を重ね、このポイントがゼロになると、犬は当局に没収され、飼い主は研修を受け、犬を飼うために必要な決まりやモラルなどを問うテストに合格すれば、犬を返してもらえるのだそうです。
中国メディアのシックス・トーンによると、当局は今年8月、犬の飼い主の80%がリードを使っていると発表。また中国の英字新聞、チャイナデイリー(電子版)も8月、犬に噛まれたり、吠えられたといった苦情が65%減ったと報じました。
とにかく、監視&ポイント減点&罰則という監視社会がどんどん進んでいることが分かりますが、当然ながら、スコアが低い人々の“ブラックリスト”が作られており、2016年、当局は、企業に対し、人を雇う場合、こうしたブラックリストを事前にチェックすることを奨励したといいます。
実際、世界的な米人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、2015年にブラックリストに掲載された弁護士は、仕事での出張のための旅客機のチケットが買えず、クレジットカードも作れませんでした。
ロンドン在住のフリージャーナリスト、ジェームズ・オマリー氏は今年の10月29日、北京から上海に向かう新幹線に乗った際の模様をツイッターに投稿したのですが、その車内では、女性の声による英語の放送が流れ、チケットを持たずに旅行する人や公共の場所での喫煙といった“無秩序な振る舞い”は“規則によって罰せられ、そうした行動は個人の信用情報システムに記録されます”といった注意喚起がなされていました。
米誌フォーリン・ポリシーは今年の4月3日付の電子版で、中国の東部、山東省栄成市では、74万人の成人男性にまず1000ポイントを割り当て、そのポイント数によって彼らをA+++からDにランク付けしている状況などを詳細に報道。
交通違反では5ポイント引かれ、市レベルの表彰を受けるような善行では30ポイントもらえるといい、飲酒運転が発覚すればA+++からいきなりCにランクダウン。ポイントが多い高ランクの人は毎冬、50ドル(約5600円)の暖房費割引が受けられるほか、デポジット(手付け金)がなくても賃貸物件を借りることができ、銀行の預金金利も他のランクの人より高かったと報じました。
チェンと名乗る32歳の起業家は、前述のフォーリン・ポリシー誌に「過去6カ月で、人々の振るまいはどんどん良くなっている。例えばドライブしている時、今ではみんな必ず、横断歩道の前で停車する。もしも止まらなかったらポイントを引かれるからね」と答えました。
AI搭載型の街頭防犯カメラで人民の行動を逐一、監視し、ポイント制で人民をランク付けするという究極の監視社会が現実になっているのでしょうか。ポイントが減り、ランクが下がると日々の生活にどんどん不都合が生じる気がします。このシステムが全土に構築されるとすれば、2020年の中国は一体、どんな国になっているのでしょう…。 (岡田敏一)産経新聞
中国の全人民監視社会は、ジョージ・オーウェンの描いた「1984年」にそっくりである。人民の思考まで管理されている。共産党の一党独裁を維持するディストピアという全体主義である。中国共産党が人民の全てを監視する社会には、言論の自由も、信仰の自由も、人権も、法の支配も存在しないのである。
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