先日、図書館で月刊中央公論四月号で、東京工業大学の橋爪大三郎教授が「吉本隆明VSマルクス」とを書いている。
吉本さんは、戦後最大の思想家であり左右どちらからの知識人からも高く評価されている。私は吉本さんが、戦前は愛国少年だったと自分から認めている。そのころ、日本浪漫派を知ったようだ。だから、戦前の思想・転向の事実も多くの本で著している。
橋爪さんは、吉本さんのことを、この短い文章で簡潔に記している。
①マチウム書試論
マタイ福音書の読解。パリサイ人のユダヤ教徒がイエスを攻撃し、最後は殺害してしまう。教義の解釈のわずかな違いが
イデオロギー対立となり人々の共存を難しくする。党派の論理と戦う個としの思考の柔軟さ、吉本さんの資質をよく示していると。橋爪教授は書いている。
②言語にとって美とは何か
上部構造・下部構造を区別するマルクス主義は言語をそのどちらにするかあいまいだ。文学者吉本隆明は時枝誠記、ソシュール、記紀・万葉・古代・歌謡の世界。・王朝文学から中世、近代へとくだる作品群の変容。西洋の言語は数百年前したばかりだ。
③共同幻想論
国家は共同的幻想である。有名な書物はレーニンの「国家と革命」などマルクス主義の標準的な図式を覆するもの。そして、アンダーソン「想像の共同体」を先取りする内容である。人間の精神世界は、固体幻想、対幻想、共同に類別すされる。そして、固体幻想と共同幻想は逆立ちする。
吉本さんの最も重大な命題は人間の精神世界全体をいうイデオロギーのように現実政界と緩やかな対象をもっていてしかもその内部に構造がある。個の精神世界(固体幻想)国家・共同幻想とはメビウスの帯のようで連続だが逆立ちするというのだ。これが、成功すれば、それを吉本は私的所有のなかった原初的共同体のレベルから古代天皇制発達した制度・国家にいたるまでを「遠野物語」や、記紀神話、民族誌、などのデーターを採用して完結いく。
これが成功すれば、マルクス主義の上部構造・下部構造の図式が覆されることになる。Mフーコの「知の考古学」
トマス・クーンの科学的パラタイムの議論に先行する先駆的独創的な業績だ。
④「心的現象論」瞰瞰
幻想とひとくぐりにしていた人間の精神世界を「原生的疎外」によって立ち上げられた独自の現象領域として記述分析する。精神医学や人類学、心理学、などの知見を根拠に、そこに法則性成立せんとする。物質世界と心的領域を連続的で一元的な視野のもとに収めたという試み「試行」誌上での最長の連載となり。
⑤作家論
高村光太郎、宮沢賢治、中野重治、村上春樹、それぞれに先鋭的な作品と対決する。批評のだ一線から吉本さんは終生退くことはなかった。
⑥「マスイメージ論」
ハイ・マスイメージ論など高度消費社会の文化現象を俯瞰する論考中産階級、消費文化の熟するなどマルクスができない現象に確固とした測量線をめぐらす。それはマルクス主義の岩盤に雨だれで孔を穿つような仕事だった。
橋爪さんは、吉本隆明さんを一般の人にもわかりやすく書いてくれた。それにしても、「知の巨人」である。吉本さんの思想を学ぶことは、世界を知ることになる。そして、吉本さんは、マルクス主義にも、日本共産党にも妥協せず、左右のいかなる権力にも屈せず生きてこられた吉本さんに知識人としてのプライドを感じた。
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