真正保守を訴える

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文芸評論家 磯田光一

「磯田光一」とは - 文芸評論家。英文学・国文学研究者。 三島由紀夫、永井荷風などを 中心に批評を展開した。 著作 『比較転向論序説』 『邪悪なる精神』 『萩原朔太郎』 『戦後 史の空間』 『思想としての東京』 『.悪意の文学』『昭和作家論集成』等の著作がある。
谷崎潤一郎がのちに三番目の妻となる根津松子に宛てた、恋文ですか。渡辺淳一が喝破したように「不倫の愛こそ」本当の愛だと。渡辺淳一は「愛とは異性に対する一種の緊張状態」でなかろうかと。谷崎潤一郎と松子の愛はまことに許されぬ不倫の愛なかにこそ、男と女の純粋の愛があったのではないのか?
梶原一騎の本を読んでいる。「男って、たかが女のやったことぐらいに、そんなムキになるのではないと、私は思うの。男の人がムキになり、必死になる対象は、男同士の友情とか、一生をかけた理想じゃないかしら?そういう女なんか眼中にない男性の姿に、女は少なくても…私は憧れるな」《朝日の恋人》
 読書とは高邁な理想や天下国家を論じることを書いた本を読むことだけではない。人生を燃焼して生きた人の本も面白い。(幻冬舎の「若山富三郎・勝新太郎 無頼控」おこりんぼ さびしんぼ 著者 山城新伍】最近読んだ本で猛烈に笑ってしまった。 山城は若山富三郎のことを次のように書いている。「荒くれと純情。豪気と細心。一人の人間の中のギャップというものは、人をひきつけるものなのだろう。男も女も、おやっさんのそこにはまっていくのかもしれない、とふと思った。」山城は若山のことを「おやっさん」とよんだ。
 また山城新伍が書いた本で、枡屋勝東冶。本名・奥村実。明治34年生まれ。長唄の師匠で、三味線の名人。それが、富三郎、勝新の父親である。粋で鯔背ないい男だと山城は書いてる。その父親が亡くなった時に、骨壺を墓に納める時、勝が父親の骨をガリリと噛み、それ玉緒さんが軽くいさめるようなことが起こった。
 「勝新、乱心」「勝新、狂ったか」山城新伍は「勝さんの御父ちゃんへの愛の表現だとしている。お母ちゃんとの別れの時、勝さんは、もう冷たくなりつつあるお母ちゃんの股間に、突然、顔を埋めたのだ。「なんてことを」山城は一瞬、悲しみのあまり勝さんが狂ったのかと、思ったと書いている。みんながやめさせようとするのを制して、勝さんは黙って目を閉じ、股間にキスを続けた。
 そしておもむろに顔を上げて、真面目に言ったのだった。「オレはここから生まれたんだから、お母ちゃんに感謝しなくちゃ」山城新伍はそれを聞いた瞬間、ぼくは胸の奥から熱くこみあげるものを感じた。これは、芸であって、なおかつ愛なのだ。この家族は、こうやって愛を表現してきたのだ。そして、その家族は永遠に結ばれているのに、永遠には続かないのだと。・・・
 渡辺淳一について、文藝評論家の川西政明が、「性の力をえがくものは、作家としての渡辺淳一の一種の宿命だろう。それがこれからどのような歩みを見せ、変容してゆくのか私には予測つかない。ただ彼がこれまでの道の上をさらにどこまで歩きつづけるだろうことはわかる」と書いている。そんな渡辺淳一が逝った・・・。

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