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庄野潤三について

 母片の伯父は若い生涯文学青年であった、伯父に聞いたことがある。伯父さんの好きな作家は誰ですかと質したら、彼は庄野潤三と言ったのである。庄野は裏木戸こそ人生であり、人生の悲惨、不安、危機といったものとの関係を重視していると。
 庄野は言う人間が生きているということはこれ即ち不安なんだ。そんなことは言わなくてたってあたりまえだ。生まれてきた途端に、いつか死ぬわけで、死ぬ瞬間がいつくるかはわからない。ライフ・イズ・インセキュリティ―という言葉があるが、生きているということはそれが直に不安定ということなのだ。生きているということは、いつでも安定していないということだ。常住坐臥(じゅうじゅさが)という言葉がある。愛語とも。
 武蔵は武蔵を慕う女性を振り捨て、敵を切って行く。小林秀雄が言う武蔵のやった「心が追うことのできぬ程の器用さの追求」は心を忘れ、戦中戦後をひたすら経済と技術に生き抜いてきた日本人の姿そのものではないのか」と。それは、それなりの必然性があり見事ではなかったのではないのか。

佐藤佐太郎の歌論

「眼に見えるものを見て、輝と響をとらへ、酸醎の外の味ひを求めて、思を積み、詞をやるに語気迫り、声調徹り、しかしておもむくままにおもむく。」佐藤佐太郎の歌論
 折口信夫は教育とは「写瓶」だと心得ていた。写瓶 とは後白河院の梁塵秘抄「口伝抄」に違ひたるをば習ひ直して、遺る事無く写瓶し緒畢はりにき」とあり、「瓶の水を他の瓶へすっかり瀉(そそ)ぎ入れることで、師から弟子に漏れなく伝授を受けること」を言う。知識を授けるだけでなく、知識をとおしてむしろ「たましひ」を授けるのである。
野口武彦は「三島由紀夫の世界」で「お前は人間ではないのだ。お前は人交はりのならない身だ。お前は人間ならぬ何か奇妙に悲しい生物(いきもの)だ。」ドイツロマン派における死への魅惑に照らして、野口氏はロマン主義的人間とする。離脱者にとって、その虚無は暗黒でなく青空である。そして、死は墜落による自己破壊ではなくエクスタシーという飛翔をもってする自己救済であるだろう。としている。三島由紀夫文学の基底には、これだと思って読んでいる。

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