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「沈黙の音楽」という撞着語は、しかし、音楽の本質を一言で言い当ててはいないか。 私たちは音楽の饒舌に感嘆し、衝動せられ、そして憧憬を抱くが、その音楽の本質はむしろ、 私たちに沈黙の意義を知らせることであるのなら、私たちはその逆説に驚くだろうか。 いや、私たちはすでにそのことを知っているはずだ。 音楽が、私たちにとって豊饒の恵であればあるほど、それは、沈黙の上にのみ成り立つ。 私たちは、沈黙の上に生きる存在。 音楽は、私たちにとって賜物だ。 フェデリコ・モンポウの「沈黙の音楽」。 演奏者の高橋悠治自身によるCDの解説によると、原題の Musica Callada は、 「スペイン語以外の言語に訳したり、そのほんとうの意味を伝えるのはかなりむつかしい」のだそう。 そして、次のように書いている。 「偉大な神秘詩人サン・フアン・デ・ラ・クルスは沈黙の声そのものであるような音楽という 考えを表現しようとして、ある美しい詩のなかで "La Musica Callda, la Soledad Sonora" と うたった。音楽が沈黙を守り、語らないでいると、孤独そのものが音楽に変わる。」 音楽は固より私たちの中に在り、私たちは、沈黙の中で、私たち自身の孤独の音楽を聴く。 私は、どうして死を怖れようか。 私の中に、響き続ける音楽があるというのに。 |

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