いくおのブログ

ようこそ!キチガイの世界へ(笑)

阿波の民話

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全10ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]

[ 次のページ ]

一億年の光

前から気になっていたブログ小説を紹介します

徳島県人としてはちょっと気になる存在です(笑)
残念なことに続きを書かれていないようですね

最近のゲームソフトには驚かされていました
普通に神話の神や悪魔が登場してるんですものね(笑)
ですが、この小説にはゲームにはない面白さを感じてしまいます
こんな小説に面白さを感じるなんてお前は異常だ
と言われそうですが・・・

だって僕は「既知外」なので(笑)

この手の話なら本領発揮できるかも?

書庫を「阿波の民話」にしたんですが(適当な書庫がない)この内容なら「勇者物語」にしてもええか?
いや、いかんいかん、これは他人様が書いた小説だ(笑)

第11章の「さ蠅なす高天原」なんていう見出しは圧巻です(笑)
高天原にベルゼブブの象徴の一つである蠅が群れをなして襲ってくるという発想もなかなかのもの

この上に、アバドンの象徴である蝗の大群まで出て来たら思わず噴出してしまうでしょう(笑)
えっ!マジか!?
この作者は何者?ってなるでしょう

ええ?なんのこっちゃ?

分かる人には分かる話ですた!(笑)

業務連絡 業務連絡!(誰に?)
のらねこさんが新たな記事を更新されました




御祈祷師と盗人

 とんと昔(むかし)、あったと。

 一人(ひとり)の男(おとこ)が旅(たび)をしよった。日(ひ)が暮(く)れてしもうたが泊(と)まるとこがない。「弱(よわ)った、弱(よわ)った」ともいながら歩(ある)っきょると、一軒(いっけん)の大(おお)けな家(いえ)があった。なんやら、がやがや人(ひと)が出(で)たり入(はい)ったりしとる。

 男(おとこ)が、門(もん)の前(まえ)にいたもんに、

 「なんぞ、あったんで」

 って聞(き)いたそうな。

 「重(おも)い病人(びょうにん)がいて困(こま)っとる」

 ちゅうたそうな。

 「こりゃええことを聞(き)いたわい。いっちょ祈祷師(きとうし)になって泊(と)めてもらおう」

 ともて、家(いえ)へ入(はい)ったそうな。

 「わしは御祈祷師(ごきとうし)じゃ。諸国(しょこく)を回(まわ)っとるが、日(ひ)が暮(く)れて弱(よわ)っとる。一晩(ひとばん)泊(と)めてつかはらんか」

 ちゅうて頼(たの)んだら、家(いえ)のもんは喜(よろこ)んで

 「実(じつ)は病人(びょうにん)がいて困(こま)っとる。拝(おが)んでつかはれ」

 ちゅうたそうな。

◆注釈

【泊(と)めてつかはらんか】泊(と)めてくださいませんか
【つかはれ】ください
 
 家(いえ)のもんは、ええあんばいに御祈祷師(ごきとうし)が来(き)てくれたちゅうんで、すぐ座敷(ざしき)へ上(あ)げてくれ、夕飯(ゆうめし)もよばれた。

 病人(びょうにん)の部屋(へや)へ案内(あんない)されて「早(はよ)う拝(おが)んでつかはれ」ちわれたそうな。

 男(おとこ)はただの旅(たび)のもんなんで、困(こま)ったわいともとったら、部屋(へや)の隅(すみ)からねずみがちょろちょろ出(で)たり入(はい)ったりしだした。男(おとこ)はお経(きょう)を唱(とな)えるまねして、

 「仏(ほとけ)さんのねずみが、ちょこちょこ出(で)たり入(はい)ったりしよる、ねずみが出(で)たり入(はい)ったりしよる」

 節(ふし)をつけて何(なん)べんもいよったら、ねずみが見(み)えんようになった。ほんで今度(こんど)は、

 「裏(うら)へ回(まわ)った、裏(うら)へ回(まわ)った」

 ちゅうて、唱(とな)えだしたそうな。

 ちょうどほのとき、盗人(ぬすっと)が家(いえ)へ入(はい)ろうとしよった。

 ほこへ、家(いえ)ん中(なか)から

 「裏(うら)へ回(まわ)った、裏(うら)へ回(まわ)った」

 ちゅうたんで、盗人(ぬすっと)はおぶけてしもうた。

◆注釈

【ええあんばい】いいころ合(あ)い
【おぶけて】びっくりして
 
 盗人(ぬすっと)は、

 「こりゃ、知(し)られてしもうた、しもたことをした」

 ちゅうて、今度(こんど)は裏(うら)の方(ほう)へ回(まわ)んりょったら、

 「裏(うら)へ回(まわ)った、ほら裏(うら)へ回(まわ)った」

 ちゅうお経(きょう)みたいんが、聞(き)こえてきたんで、

 「今夜(こんや)はもうあかん」

 ちゅうて、何(なに)もとらんと逃(に)げだしてしもうたそうな。

 旅(たび)の男(おとこ)は、ほれからも病人(びょうにん)の枕元(まくらもと)で、

 「ねずみが出(で)たり入(はい)ったりしよる。今度(こんど)は裏(うら)へ回(まわ)った」

 ちゅうて、繰(く)り返(かえ)したそうな。

 なんのひょうしでか、男(おとこ)のお経(きょう)みたいな御祈祷(ごきとう)が効(き)いてきたんか、病人(びょうにん)も家(いえ)のもんも、眠(ねむ)ってしもうたそうな。

 朝(あさ)起(お)きて盗人(ぬすっと)の足跡(あしあと)を見(み)つけた主人(しゅじん)が、

 「こりゃ、病人(びょうにん)はようなったし、盗人(ぬすっと)は盗(ぬす)まんといんでくれた。みょうなお経(きょう)じゃったが、おかげで助(たす)かった」

 ちゅうて、男(おとこ)にようけお礼(れい)をしたそうな。おーしまい。

◆注釈

【しもたこと】しまったこと
【回(まわ)んりょったら】回(まわ)っていたら
【ようけ】たくさん

魔法使いの源内さん

 とんと昔(むかし)、あったと。

 祖谷(いや)に喜多(きた)源内(げんない)ちゅうえらい人(ひと)がおったそうな。喜多家(きたけ)は代々(だいだい)祖谷(いや)の政所(まんどころ)をつとめる旧家(きゅうか)じゃ。

 源内(げんない)さんは、飯綱法(いづなほう)使(づか)いの名人(めいじん)ちゅうことでも知(し)られとった。

 ある日(ひ)、一人(ひとり)の侍(さむらい)がたんねてきた。諸国(しょこく)武者修行中(むしゃしゅぎょうちゅう)のもんで、源内(げんない)さんと手合(てあ)わせをしたいちゅうこっちゃ。源内(げんない)さんも退屈(たいくつ)しとったとこなんで、「よかろう」ちゅうて、相手(あいて)することになった。

 侍(さむらい)が刀(かたな)で勝負(しょうぶ)したいちゅうんで、源内(げんない)さんは、木刀(ぼくとう)を二本(にほん)取(と)り出(だ)して庭(にわ)へ出(で)たそうな。

 源内(げんない)さんが「ご免(めん)」ちゅうて、お面(めん)を一本(いっぽん)取(と)ったそうな。侍(さむらい)はもう一本(いっぽん)ちゅうんで、試合(しあい)を始(はじ)めたそうな。侍(さむらい)は源内(げんない)さんを池(いけ)のそばまで追(お)い詰(つ)めたが、源内(げんない)さんは、ちっとも動(うご)かなんだ。侍(さむらい)が木刀(ぼくとう)を振(ふ)り下(お)ろそうとしたが、けったいなことに、源内(げんない)さんの姿(すがた)が剣先(けんさき)に隠(かく)れてしもうた。

◆注釈

【飯綱法(いづなほう)】魔法(まほう)
【たんねてきた】訪(たず)ねてきた
【けったいなことに】不思議(ふしぎ)なことに
 
 源内(げんない)さんの姿(すがた)が見(み)えんようになったんで、侍(さむらい)はあわててしもうた。ほないしよると、またお面(めん)一本(いっぽん)取(と)られてしもうた。

 ほしたら侍(さむらい)が、

 「わしは刀(かたな)は不得手(ふえて)じゃけん、槍(やり)でお願(ねが)いしたい」ちゅうんで、長(なが)いんと短(みじか)いタンポ槍(やり)を二本(にほん)出(だ)してやった。

 侍(さむらい)は長(なが)い方(ほう)を取(と)って勢(いきお)いよう突(つ)き出(だ)してきたそうな。侍(さむらい)は槍(やり)には自信(じしん)があるもんとみえ、源内(げんない)さんは生(い)け垣(がき)まで追(お)い詰(つ)められてしもうた。侍(さむらい)は「やった」ともて、思(おも)い切(き)り槍(やり)を突(つ)き出(だ)した。ほしたら、みょうなことに源内(げんない)さんの姿(すがた)が見(み)えんようになった。侍(さむらい)がキョロキョロあたりを見回(みまわ)しよったら、源内(げんない)さんがにこにこしながら門(もん)からもんてきたそうな。

 侍(さむらい)は、もう一本(いっぽん)ちゅうて突(つ)っ掛(か)けたんで、源内(げんない)さんは庭(にわ)の隅(すみ)まで追(お)い込(こ)まれた。侍(さむらい)は今度(こんど)はやった、ともて突(つ)いたが、突(つ)いたんは手洗(てあら)い鉢(ばち)じゃった。キョロキョロあたりを見渡(みわた)すと、源内(げんない)さんは屋根(やね)の上(うえ)へ上(あ)がってにこにこしよったそうな。

◆注釈

【タンポ槍(やり)】綿(わた)を丸(まる)めて先(さき)につけたけいこ用(よう)の槍(やり)
【もんてきた】帰(かえ)ってきた
 
 やっと試合(しあい)がすんだんで、源内(げんない)さんは侍(さむらい)に夕飯(ゆうはん)を出(だ)したそうな。やがて、酒(さけ)の酔(よ)いも回(まわ)ってきたようなんで、

 「今晩(こんばん)は泊(と)まりなはれ」

 ちゅうて、すすめたが、侍(さむらい)は

 「わしは武者修行(むしゃしゅぎょう)の身(み)じゃけん、これで失礼(しつれい)する」

 ちゅうたんで、源内(げんない)さんが、ほんなら、馬(うま)でも駕籠(かご)でも舟(ふね)でもお好(す)きなもんで送(おく)らせましょう、ちゅうたそうな。

 侍(さむらい)が、馬(うま)をお願(ねが)いしたいが、馬(うま)じゃったら返(かえ)すことがでけん、ちゅうんで、

 「うちの馬(うま)はちゃんともんてくる。下(お)りたとこで手綱(たづな)を鞍(くら)にくくりつけてくれたらええ」

 ほこで、侍(さむらい)は馬(うま)を借(か)ったそうな。酒(さけ)の酔(よ)いも回(まわ)ってきとるし、疲(つか)れとんで、ウトウトして眠(ねむ)ってしもうた。気(き)がついたら、東(ひがし)の空(そら)が明(あか)るうなってきとった。あたりを見(み)ると、なんと一晩中(ひとばんじゅう)、生(い)け垣(がき)にまたがっとったちゅうこっちゃ。侍(さむらい)は、あいさつもせんと、こそこそいんでしもうたそうな。おーしまい。

◆注釈

【泊(と)まりなはれ】泊(と)まりなさい
【もんてくる】帰(かえ)ってくる
【いんで】帰(かえ)って

明谷の供養塔

 とんと昔(むかし)、あったと。

 長生町(ながいけちょう)の明谷(あかだに)に通称(つうしょう)・塔(とう)の坂(さか)ちゅうとこがある。この塔(とう)の坂(さか)はゆるやかな道(みち)で、坂(さか)を越(こ)えると桑野町大地(くわのちょうおおじ)になる。

 塔(とう)の坂(さか)の左側(ひだりがわ)に桑野川(くわのがわ)が流(なが)れとって、坂(さか)の道路際(どうろぎわ)のこんまい岩(いわ)の上(うえ)に、いわくありげな供養塔(くようとう)が建(た)っておる。これが東条関之兵衛(とうじょうせきのひょうえ)夫人(ふじん)の霊(れい)を慰(なぐさ)めるために建(た)てられた宝篋印塔(ほうきょういんとう)だそうだ。

 関之兵衛(せきのひょうえ)は桑野城主(くわのじょうしゅ)で、このあたりを治(おさ)める大将(たいしょう)だった。天正(てんしょう)三年(さんねん)、土佐(とさ)の長(ちょう)宗我部(そかべ)元親(もとちか)が阿波(あわ)へ攻(せ)め込(こ)んできたとき、早々(はやばや)と降参(こうさん)して地位(ちい)を守(まも)った。天正(てんしょう)十三年(じゅうさんねん)、羽柴(はしば)秀長(ひでなが)が鳴門(なると)の土佐泊(とさどまり)へ上陸(じょうりく)したとき、木津(きづ)城(じょう)を守(まも)っとったが、あんまり戦(たたか)わんうちに土佐(とさ)へ逃(に)げたそうな。

 ほんで、元親(もとちか)が怒(おこ)って「切(き)り殺(ころ)せ」ちゅうて、家来(けらい)に命(めい)じたそうな。元親(もとちか)の家来(けらい)が、関之兵衛(せきのひょうえ)の今(いま)までの長宗我部家(ちょうそかべけ)への手柄(てがら)を申(もう)し上(あ)げたが、こらえてくれなんだ。

◆注釈

【こんまい】小(ちい)さい
【こらえて】許(ゆる)して
 
 ほしたら、元親(もとちか)が「関之兵衛(せきのひょうえ)は木津城(きづじょう)で戦(たたか)わんと、逃(に)げてもんたやつじゃ。いつ、わしを裏切(うらぎ)って羽柴軍(はしばぐん)に寝返(ねがえ)るかもわからん」

 ちゅうて、こらえてくれんで、とうとう切(き)られたそうな。

 ほういえば、一宮城主(いちのみやじょうしゅ)の一宮長門守成助(いちのみやながとのかみなりすけ)は徳島(とくしま)の夷山城(えびすやまじょう)で、牛岐城主(うしきじょうしゅ)の新開遠江守道善(しんがいとおとおみのかみどうぜん)も徳島(とくしま)の丈六寺(じょうろくじ)で殺(ころ)されてしもうた。

 元親(もとちか)はえらい大将(たいしょう)じゃが、自分(じぶん)が土佐(とさ)で、今(いま)までに仲(なか)ようしよった城主(じょうしゅ)たちを次々(つぎつぎ)に滅(ほろ)ぼして、土佐(とさ)一国(いっこく)を手(て)に入(い)れた人(ひと)じゃ。ほんなこともあって、人(ひと)を信用(しんよう)でけなんだ。阿波(あわ)の武将(ぶしょう)たちも、自分(じぶん)が強(つよ)いうちはついてくるが、いつ歯向(はむ)かうかわからんともとったんじゃ。

 長宗我部軍(ちょうそかべぐん)は、土佐(とさ)で関之兵衛(せきのひょうえ)を殺(ころ)したが、桑野城(くわのじょう)をほのままおいとけんちゅうて、家来(けらい)に攻(せ)めさせたそうな。関之兵衛(せきのひょうえ)の奥方(おくがた)はやっとのことで城(しろ)を抜(ぬ)け出(だ)したが、明谷(あかだに)まで来(き)て自害(じがい)してしもうたそうな。

 ほんで、関之兵衛(せきのひょうえ)の家来(けらい)たちが、奥方(おくがた)の霊(れい)を慰(なぐさ)めるために建(た)てたんが、この塔(とう)ちゅうこっちゃ。おーしまい。

◆注釈

【逃(に)げてもんた】逃(に)げて帰(かえ)った
【こらえてくれんで】許(ゆる)してもらえず
【牛岐(うしき)】富岡(とみおか)
 

河童の傷薬

昔(むかし)、あったと。 とんと

 富岡(とみおか)の北側(きたがわ)を流(なが)れとる琴江川(ことえがわ)の、深(ふか)くよどんだところを多聞ガ渕(たもんがぶち)という。

 この渕(ふち)にわりことしいの河童(かっぱ)が住(す)んどって、泳(およ)ぎにくる子供(こども)を水(みず)ん中(なか)へ引(ひ)きずり込(こ)んで喜(よろこ)んどったそうな。

 ほのころ、富岡(とみおか)の町(まち)に賀島(かしま)友井(ともい)ちゅうお医者(いしゃ)はんがおった。友井(ともい)先生(せんせい)は目(め)が不(ふ)自由(じゆう)だったが、釣(つ)りが好(す)きで、ひまがあると多聞ガ渕(たもんがぶち)へ出(で)かけとったそうな。

 きょうも、先生(せんせい)は渕(ふち)でのんびりと糸(いと)を垂(た)れとったそうな。ほしたら、水(みず)の上(うえ)にぽっかり頭(あたま)を出(だ)したんは、いつもの河童(かっぱ)じゃった。

 「ふん、先生(せんせい)がまたやっとんな。きょうはひとつ、じゃましておこらしたろ」

 河童(かっぱ)は気(き)づかれんようにして水(みず)から上(あ)がると、こっそり先生(せんせい)の隣(となり)に座(すわ)ったそうな。

 ほのうち、うきがぐいぐい水(みず)の中(なか)へ引(ひ)っこまれた。

◆注釈

【わりことしいの】いたずら好(ず)きの
 
 うきが引(ひ)いたんで、先生(せんせい)は竿(さお)を引(ひ)き寄(よ)せ、手(て)さぐりで魚(さかな)をつかまえようとした。ほのとき、河童(かっぱ)がひょいと手(て)を出(だ)して横取(よこど)りしてしもうた。

 「はてな」

 先生(せんせい)はひとりごとを言(い)いながら、すぐに新(あたら)しい餌(えさ)をつけて投(な)げ込(こ)んだ。

 しばらくすると、大(おお)けな鯉(こい)が食(く)いついた。これも河童(かっぱ)に取(と)られてしもうた。

 先生(せんせい)も、やっと気(き)づいて、

 「ははあ、河童(かっぱ)めのしわざじゃな。よっしゃ、今(いま)にみとれ」

 と何(なに)くわん顔(かお)してまた釣(つ)りだしたそうな。

 ほのうち、強(つよ)い手(て)ごたえがあった。竿(さお)を引(ひ)き上(あ)げると、大(おお)けな鯉(こい)がはね上(あ)がった。ほのとき、河童(かっぱ)が手(て)を出(だ)した。先生(せんせい)は脇差(わきざ)しを抜(ぬ)いて、やっ、とばかりに切(き)りつけた。ギャアちゅう泣(な)き声(ごえ)と、続(つづ)いてドボンちゅう大(おお)けな水音(みずおと)がした。

 河童(かっぱ)は片腕(かたうで)を切(き)り落(お)とされ、片腕(かたうで)を残(のこ)したまま、水(みず)ん中(なか)へ落(お)ち込(こ)んでしもうた。
 
 先生(せんせい)は、河童(かっぱ)の片腕(かたうで)をびくに入(い)れて持(も)っていんだ。

 ほの晩(ばん)のこっちゃ。

 先生(せんせい)が昼(ひる)の疲(つか)れでぐっすり眠(ねむ)りこけとると、

 「先生(せんせい)、先生(せんせい)」

 ちゅうて、だれやら枕元(まくらもと)で呼(よ)ぶ者(もの)がおったそうな。

 「だれぞい、おまはんは」

 先生(せんせい)が寝(ね)ぼけた声(こえ)を出(だ)すと、

 「へい、多聞(たもん)さんの河太郎(かわたろう)です。悪(わる)さは謝(あやま)るけん、わいの片腕(かたうで)をもどしてつかはれ」

 ああ、昼間(ひるま)の河童(かっぱ)がやってきたんかと、ほれから先生(せんせい)は長々(ながなが)とお説教(せっきょう)をしたそうな。

 すると、河童(かっぱ)はべそをかいて泣(な)きだした。ほんで、先生(せんせい)もかわいそうになって、こらえてやることにしたそうな。

 「ほない手(て)が欲(ほ)しいんなら、ほこの箱(はこ)に入(い)れてあるから、持(も)っていね」

 ちゅうたそうな。河童(かっぱ)は喜(よろこ)んで箱(はこ)ん中(なか)の片腕(かたうで)を取(と)り出(だ)したそうな。

◆注釈

【びく】魚(さかな)を入(い)れるかご
【つかはれ】ください
【ほない】そんなに
【持(も)っていね】持(も)って帰(かえ)れ
 先生(せんせい)が河童(かっぱ)に、

 「切(き)られた腕(うで)を持(も)っていんでどないするんなら」

 ちゅうて聞(き)くと、

 「手(て)さえあったら、すぐ元(もと)どおりになるんですわ」

 ちゅうたそうな。

 「わしらに傷(きず)によう効(き)く薬(くすり)があるんですわ。先生(せんせい)には腕(うで)をもどしてもろうたんで、河童(かっぱ)の傷薬(きずぐすり)のつくり方(かた)をお教(おし)えしまひょう」

 ちゅうて、河童(かっぱ)は傷薬(きずぐすり)のつくり方(かた)をおっせて、片腕(かたうで)を大事(だいじ)そうに抱(かか)えて、すーっと姿(すがた)を消(け)したそうな。

 「これ河太郎(かわたろう)、河太郎(かわたろう)や」

 先生(せんせい)はあわてて大声(おおごえ)を出(だ)したとたん、ハッとしたそうな。夢(ゆめ)を見(み)よったんじゃと。

 けったいなことじゃなあ、ともいながら箱(はこ)を開(あ)けてみると、河童(かっぱ)の片腕(かたうで)が消(き)えとった。

 ほれから、先生(せんせい)は河童(かっぱ)のおっせてくれたことを思(おも)い出(だ)し思(おも)い出(だ)ししながら、薬(くすり)をこっさえたそうな。ほの薬(くすり)がよう効(き)いて、友井(ともい)先生(せんせい)は有名(ゆうめい)になったそうな。ほれから、多聞(たもん)さんの河童(かっぱ)のいたずらもぴったりと止(や)んだそうな。おーしまい。

◆注釈

【持(も)っていんで】持(も)って帰(かえ)って
【おっせて】教(おし)えて
【けったいなこと】不思議(ふしぎ)なこと
【こっさえた】こしらえた
 

全10ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]

[ 次のページ ]


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事