|
胸が詰まって苦しくなり本を閉じる。歳のせいか、涙もろい。再度読み始めるがページをめくる手が止まる。30数年前に出版された本ですが、無知ゆえ読んでいませんでした。家でも出かける時も手元に置きながら怖くて開くことができない。1ヶ月かけてようやくこの文庫本を読むことができました。読むのにこれほど辛く悲しく勇気のいる本は初めてでした。
先週末、今年2月10日に90歳で亡くなられた石牟礼道子さんの「苦海浄土」を読み終えることができた。新日本窒素水俣工場排水の水銀が引き起こした公害・水俣病を世に知らしめた本です。水俣で育った作者が患者とその家族の苦しみを自らのものとして壮絶かつ清冽に綴った記録が「苦海浄土」です。
わたしは日向灘に面した宮崎の一漁村で漁師の息子として生まれ育ちました。美しく豊潤な海に鍛えられて、わたしの身体と魂は成長したと思っています。わたしの故郷から九州山脈を超えて西へ約120キロのところに水俣湾があります。水俣の美しい海、そこに住む漁村の子供や妊婦、頑健な漁師達が水俣病を発病します。わたしの生まれ育った漁村の情景と重なり合い、人ごとではない感慨に読むのを度々中断しました。石牟礼道子さんは各患者さんや家族と接しながら、水俣病を発病しても尊厳を失わない人間のすごさを見事に描ききっています。奇病に侵された絶望状態でも、ユーモアさえ忘れず前向きに生きようとする姿は鬼気迫ります。
石牟礼道子さんの秀麗で的確な美しい文章ゆえに読み終えることができたのかもしれません。読んでいない方はぜひ読んでみてはどうでしょうか、時間をかけても最後まで。
|

- >
- 芸術と人文
- >
- 文学
- >
- ノンフィクション、エッセイ







私も 苦海浄土全三部を読み終えましたが なかなか進みませんでしたよ
2018/7/9(月) 午後 3:01 [ Mr.天才バブッコ様+カエチャン ]