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地下鉄青山1丁目で下車して地上に出て交差点を渡るとHONDA本社ビルがある。さらに青山通りを外苑方面に歩いていくと、ベントレーやフェラーリーなどの高級外車を展示販売しているビルがある。貧乏人は中に入るのも気後れするが、外からショーウィンドーを覗くくらいはできる。
そのビルの前で40歳前後と思われる二人の男がタバコを吸っていた。頭は禿げているが派手なサングラスにブランドもののTシャツに柄もの短パン、素足に白いローファーをはいた小太り男はヤンキー座りでタバコを吸っている。ノーネクタイ白スーツの子分風の男は脇に立って、やはりタバコを吸っていた。するとビル内から契約書らしき書類を持った男性販売員が出て来て、おまたせしましたと言って店内に誘導している。短パン男はタバコを地面の玉砂利でもみ消すと、金のネックレスを一振りして店内に入り、白スーツ男もそれに続いた。わたしは黒く輝くベントレーを観ながら、そういうことかと考えていた。
駿馬は毎(つね)に痴漢を駄(の)せて走り
巧妻(こうさい)は常に拙夫(せっぷ)を伴いて眠る
明の中頃の芸術家、唐寅(とういん)の詩の句で、痴漢は現代では「性犯罪者」ですが、唐の時代は「阿呆の男」を意味したそうです。概略すると…
すばらしい名馬は、たいていあまり利口ではない人間をのせている。
いい女にかぎっていつも、まずいろくでなし亭主と寝ている。
現代風に訳せば、ものすごい高級外車はだいたいが金持ちの阿呆エッチぐうたら息子か、ヤクザのスケベアンちゃんが乗っている。才色兼備のグラマー美女にかぎってろくでなしの金持ち男といっしょに寝ている。ということになります。
2人組を見て、やっかみ半分に想像をふくらませているだけのことかも知れませんが、あんなチャラいアンちゃんが高級外車だけならまだしも、高級美女も乗り回しているのかと…資本主義社会の悲哀とも快楽ともいえる現実を見せられたのです。
なんだか楽しくなり、わたしは声をださずに笑いながら青山通りを歩きはじめました。林立するビルのミラーガラスに映った自分は半透明に色あせて、まさに存在の不確かな実在でありました。
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