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電化区間に入った。
多少の遅れを出したり、定時に戻したり。
首都圏の強烈な日差しに慣れた身には、優しく感じる北国の太陽。
その下をいつも通り、通い慣れた道を走る「北斗星」。
ただ、俺にとってはあと1時間程で思い出に変わる場所。
そろそろ、気持ちの落とし所を決めなくてはいけない時間が来たようだ。
最後に「思い出をありがとう」なんて書きたくないけど、それに変わるカッコつけた言葉がある訳でなし‥‥
昔、「北斗星1号」の出発式を見送ってから幾星霜。
今までにあった事を、色々思い出して見るのも悪くない。
見渡せば、修復だらけのほころびた車内。
「何故廃止なんだ」って言うより、「よく今まで走ってくれたな」って考えが変わり始めた。
サヨナラは寂しいけど、名優の引退にエキストラとして参加出来た事を感謝して。
さて、あと1時間。
最後の1時間。
俺だけの1時間‥‥
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北斗星最後の乗車記録
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朝、函館で懐かしい風景に出会う。
4号車、幕が壊れた?
短い時間で修正してる車掌さんには申し訳ないけど、撮影タイム。
ただ、壊れたなら良いけどイタズラでやられたかも知れないから、真相分からないと喜べないね。
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B寝台、通路に名残りの花。
沿線の人々に手を振ったり、メッセージや写真貼ったり。
それぞれの方が、それぞれの方法で「北斗星」に惜別の気持ちを表している。
だけど、花を飾るってどんな感性の方なんだろう‥‥
純白のトルコキキョウと、鮮やかな深青のリンドウ。
どことなく清楚で、気高い雰囲気が漂う花だ。
凄いな、まさに今の「北斗星」にふさわしいと思った。
そういえば、リンドウの青はブルトレの青に酷似している。
そこに寄り添う、純白のトルコキキョウに込められたメッセージは何だろう。
幸せの始まりを意味するウエディングドレスか、それとも弔いの仏花か‥‥
どちらにしても、深い意味を探ってしまう心憎い演出。
やっぱり、乗っている方々の数だけ思い出と、その感性があるんだなぁ。
俺もタブレットいじってないで、写真撮って表現しようかな‥‥
ビール6本飲んじゃったから、無理か。
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もう、シャワールームはあきらめた。
パブタイムもあきらめた‥‥
最後の北斗星、何時間も行列するために乗ってるんじゃない。
自席でビールと崎陽軒のシウマイで車窓を眺める。
これがずっと続く俺のパターン。
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若干暑さは和らいだ気もするが、熱気のこもった上野駅13番ホーム。
発車間際、平日なのに結構な人数。 これも「北斗星」、ブルートレインっていう時代の終わりを感じ取っての事。 明日、目が覚めるとそこは北海道。 でも、「北斗星」にとって渡道機会があと一回となったって事実。 来週、目が覚めるとこの世界に「北斗星」はいない。 「北斗星」に憧れて、バイトを頑張れた頃。 「北斗星」のチケットを眺めながら、指折り数えた時間。 「北斗星」で出会えた多くの思い出。 思えばこの30年近い時間、様々な場面に「北斗星」があって、様々な節目に「北斗星」があった。 特別で豪華な時間だったけど、日常にいつも存在していた時間。 思い立ったら、いつでも入り込めた大切な空間。 来週、目が覚めるとこの世界に「北斗星」はいない。 これから、何を励みに生きて行こう。 「北斗星」っていう思い出の欠片を携えて、残りの人生を歩いて行くのだろうか。 それとも、「北斗星」っていう思い出の欠片を携えて、次の居場所を探しに行こうか・・・ 札幌までの19時間、そんな事を考えるのも悪くないかもしれない。 |




