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#sakujo
ネットオークションに潜んでいる魔物、張り巡らされている罠。
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そのなかでも近ごろ、悲鳴に近い叫びが渦巻いているオークションサイトがある。
それは、ステーショナリーグッズ(文具)を出品しているサイト、
他と比べてバラエティな品揃え、しかもかなり安いので人気だが。
ある日を境に理由(わけ)もなくいきなり、
落札者のことごとくを『落札者都合による削除』にしはじめたのである。
規定により、ステータス欄に『非常に悪い』評価が付けられることになる。
落札者たちが何度抗議を試みても梨の礫(なしのつぶて)、まったく反応がない。
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こんな状態がもう1年以上も続いていて、オークションユーザーの間では、
いつしか彼女のことを『削女』(さくじょ)と呼ぶようになった。
Twitterではいま、この話題で持ちきりである。
数ヶ月前、IDネーム『削女班』(さくじょはん)が起ちあげられて、
ハッシュタグ「#sakujo」を付けて共通の悩みを持つ人たちへ発信を始めた。
現在もRetweetがRetweetを生み、
一日数千件の怒号と罵声とあきらめのTweetが行き交っている。
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6年前ミッション系女子ハイスクールを卒業して、事務系の職を得た彼女。
もともとは大人しくきまじめな性格で、会社でも目立たない存在だった。
そんな彼女のただ一つの趣味が文具コレクション。
オシャレな商品を見つけては「普段使い」「予備」「保存」にと使い途を決めて、
いつも3個いっしょに購入する程の文具好き、文具フェチであった。
部屋の壁には、特別に設(しつら)えた棚一面に文具が整然と並べられ、
さながらショップのようだったという。
やがて、
収納しきれなくなった文具をオークションに出品するようになった訳だ。
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彼女はまた、ある女性が運営するファッション小物のオークションサイトで、
頻繁(ひんぱん)に入落札を繰り返していた。
さらに、取引ナビで連絡事項のやりとりを重ねているうちに、
会話をするように・・・。
取引ナビは言ってみればメールのようなもので、
やりとりを重ねるうちにプライベートなことまで語り始めていた。
運営者に感情移入していったのだが、かなり辟易(へきえき)してきたこの女性、
ある日突如として彼女が落札した商品を『落札者都合による削除』扱いに。
しかも取引ナビには『二度と出入りしないで下さい』と書き込まれてあった。
この時の彼女のショック、落胆は喩えようもないほど大きく、
いつしかそれは怒りを超えて憎悪に、さらには呪いへと変わっていった。
丁度その時期と一致するのだ、彼女が「削除」を始めたのは。
いまTwitter/#sakujoで
際限もなく呟かれている『削女』(さくじょ)への恨み節に混じって、
もうすぐオークションサイトを閉じるという噂が飛び交っている。
しかし新しいIDを取得して再開するのであろう、きっと。
そしてまた、おぞましい呪いの連鎖が始まるのだ。 #twnovel short
再・推敲 #twnovel=Twitter Novel=(≒140字物語)=#ツイノベ
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