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東トルキスタン備忘録
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待つのは厳罰、中国で「犯人」になってはいけない

JBpress 3月15日(火)6時15分配信


 中国におけるビジネス上のリスクについての6回目は、治安問題を取り上げたい。

 中国における2014年の刑事事件の立件数(中国国家統計局)は、全国で約654万件(前年比0.9%減)となった。一番多い窃盗事件は約444万件(前年比約2%減)で、一般的には、すり・置き引き等の軽犯罪が多い。殺人事件は約1万件(前年比約5%減)、傷害事件約14万件(前年比約13%減)、強盗事件約11.1万件(前年比約24%減)、誘拐事件約1.6万件(前年比約21%減)となっている。

 特筆すべきは詐欺事件が約78.5万件に達し、前年比16%増となっていることだ。北京市公安局によれば、携帯電話、ネットを通じた「振り込め詐欺」の被害が多く、ネットショップ・銀行等のサービスの詐称、フィッシングサイトへの誘導、裁判所・警察を語り個人情報の提供を強要する等、手口も多様化しているという。

 近年では、都市部等を中心に凶悪犯罪が増える傾向にある。日本人が被害に遭うケースとしては、繁華街、空港、レストラン、タクシー、長距離バス、列車の車内等において、スリ・置き引き被害に遭遇するケースが多い。また、タクシー、カラオケ店等におけるぼったくり等も数多く報告されている。さらに、上海では早朝・夜間に路上で複数の男性に囲まれて金品を強奪されたり、就寝中のホテルの部屋に忍び込まれ、体を縛られた上で金品を強奪されたりするケースも発生している。

 地域別では、治安状況が相対的に悪い地域として華南地方が挙げられる。特に、在留邦人も多い広東省の東莞市、広州市、深セン市の治安状況には留意が必要である。これらの地域では、スリ・引ったくり、売春、詐欺等の犯罪が相対的に多いとされている。
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■ 大規模なテロが増加

 中国のテロリズム指数(2014年)のランキングは162カ国中22位とテロ脅威が非常に高い状況である。特に近年は新疆ウイグル自治区内において多くのテロ事件が頻発している。中国で2013年以降に発生した大規模なテロ事件の例を挙げると以下のとおりである。

 ・2013年10月28日:北京天安門自動車突入テロ事件(車内にいた3人を含む5人が死亡、日本人を含む38人が負傷)

 ・2014年3月1日:雲南省昆明駅襲撃テロ事件(襲撃犯8人が無差別に一般市民を襲撃し、その内4人が射殺され、警察官5人が死亡、一般市民25人の計34人が死亡)

 ・2014年5月22日:新疆ウイグル自治区ウルムチ市自爆テロ事件(同市の朝市で車両2台が自爆。自爆犯4人を含む43人が死亡、94人が負傷)

 ・2014年9月21日:新疆ウイグル自治区バインゴリン・モンゴル自治州連続爆破テロ事件(同自治州内のバザール、派出所、商店等で連続爆破テロ事件が発生し10人が死亡、54人が負傷)

 ・2014年10月12日:新疆ウイグル自治区カシュガル地区襲撃テロ事件(襲撃犯4人が青果市場を無差別に襲撃し、襲撃犯4人と警察官を含む一般市民等18人の計22人が死亡、数十人以上が負傷)

 ・2015年9月18日:新疆ウイグル自治区アクス地区炭鉱襲撃テロ事件(武装グループが炭鉱を襲撃し、警官5人を含む50人が死亡)

■ 暴徒と化す一般市民

 近年、中国では各地でデモや暴動が頻発している。特に一般市民等による暴動は年間20万件以上に上るとも言われている。

 その原因としては、都市と農村との格差の拡大に伴う不満、政府(特に地方政府)の共産党幹部等による汚職や腐敗、公権力による横暴な行動、土地の強制収用、不公平な規制の放置、大気汚染や水質汚染といった各種環境問題など、枚挙に暇がない。

 また、2005年、2010年、2012年には尖閣諸島問題などを契機に大規模で過激な対日抗議活動も発生した。さらに、一般市民によるバス放火、食品等への異物・毒物混入、学校等の襲撃、無差別的な通り魔事件、爆発物を用いた事件なども頻発する状況となっている。

■ 3つの民族主義運動

 中国の小数民族のうち、独立・自治権拡大などの民族主義運動が展開されているのは、3つあると言われている。上記の新疆ウイグル自治区、チベット自治区、内モンゴル自治区である。

 ・新疆ウイグル自治区

 中国には新疆ウイグル自治区を中心に約1000万人のトルコ系ウイグル人が古くから居住している。この地域のウイグル人は1933年と1944年に国家の独立を宣言したが、最終的に1949年に中国に武力占拠され、1955年に新疆ウイグル自治区が設立された。

 その後、1990年代初頭に旧ソ連が崩壊し、イスラム教徒が多数派を占める国々が中央アジアで独立すると、新疆ウイグル自治区でも政治的な独立を求めてナショナリズムが高揚することとなった。

 これに触発されるように、ウイグル民族の独立を求める組織が世界各国で組織され、1992年12月にはトルコのイスタンブールで「東トルキスタン民族会議」(East Turkestan National Congress)が設立される。また、1996年10月には世界ウイグル青年会議(World Uyghur Youth Congress)がドイツ・ミュンヘンで設立された。こうした世界的なウイグル民族の独立運動の高まりに呼応するように、新疆ウイグル自治区でのテロ事件も頻繁に発生した。

 一時期、中国政府の取締り強化などにより下火となったものの、東トルキスタンイスラム運動(ETIM:East Turkestan Islamic Movement)、東トルキスタン解放組織(ETLO:East Turkestan Liberation Organization)などによるテロ活動が活発化し、現在に至っている。

 ・チベット自治区、内モンゴル自治区

 チベット自治区では、亡命政権の指導者でチベット仏教(ゲルク派)の最高権威者であるダライ・ラマ(Dalai Lama)14が「高度な自治」を求めている。これまでも中国国内でデモは頻発しているが、テロなどの過激な事件はほとんどない。

 モンゴル族が約17%を占める内モンゴル自治区では、南モンゴル民主連盟(SMDA:South Mongle Democratic Alliance)、内モンゴル人民党(Inner Mongolian People's Party)の活動が報告されている。ただし非常に限定的であり、現状ではほとんど活動が行われていない状況である。

■ 厳罰が待っている加害行為

 日本人として注意すべきなのは、スリや置き引き、ぼったくりなどの被害に遭わないよう対策を講じることはもちろんだが、加害行為(日本人が違法な行為をしたとして逮捕・拘束・国外退去・懲役刑等を命じられる行為)についても留意する必要がある。

 なお、中国は世界で最も死刑施行数が多いとされている。中国の刑法で死刑となり得る犯罪は、殺人・放火等の重大犯罪、インフラ・社会基盤等への破壊行為、汚職行為、金融詐欺・通貨偽造、人身売買、武器・薬物等の窃盗の他、売春・性犯罪、麻薬所持・取引、文化財(骨董品)の取引・国外持ち出し、スパイ行為などである。

 ・買春行為

 中国では対価を払い性的サービスを得る行為は買春行為となる。売春の斡旋等の行為に対しては刑罰が重くなり、場合によっては国外退去、懲役刑の可能性もある。

 2003年9月に広東省珠海市で発生した日本人旅行客による集団買春事件では、組織的な買春行為をしたとして、日本人3人が国際指名手配されている(中国刑法では死刑となる可能性もある)。いかがわしいカラオケ店でのサービスも、売春行為の範疇に入るので、留意する必要がある。

 ・麻薬所持・取引

 麻薬の所持・取引の罪は重く最高刑は死刑となる。これまで、日本人が中国国内で死刑を執行されたのは6人とされているが、全員が麻薬の所持・取引に絡んでいる。また、現在でも40人以上が麻薬に絡み、中国で拘束または懲役刑に服しているとされている。

 麻薬所持・取引には決して決して関わらないことは当然ながら、それを疑われるような行為も厳に慎む必要がある。


 ・骨董品の国外持ち出し

 中国においては貴重文物(文化財:古美術・骨董品類)等は原則国外への持ち出しは禁止されている。これら貴重文物を無許可で国外に持ち出した場合、最高刑は死刑の可能性もある。

 ちなみに、貴重文物の基準は1911年の辛亥革命以前の文物とされていることから、該当範囲は非常に広い。そのため、中国で古美術・ 骨董品等の文物を購入する場合には、海外への持ち出しが可能であることを証明する文書等を購入先から受け取っておく必要がある。

 ・スパイ行為

 2010年10月1日に施行された中華人民共和国保守国家秘密法では、秘密の対象を「国家の安全と利益に関わる事項で、漏洩されると国家の政治、経済、国防、外交等の領域の安全と利益を損なう可能性のあるもの」としており、極めて範囲が広いことに留意する必要がある。

 また、2014年3月に施行された中華人民共和国保守国家秘密法実施条例では、実際に国家秘密が漏洩した場合、また、その疑いのある事態が発生した場合、24時間以内の報告を義務付けている。国家秘密の保持は徹底しており、日本人を含む外国人が同法違反となる可能性が高まっている。

 事実、昨年(2015年)から今年にかけて、日本人4人が当局に拘束・逮捕されている。また、日本人以外でも米国人、カナダ人等も拘束・逮捕されており、今後このような拘束・逮捕者が増加することが懸念されている。

 日本人としては、決して軍事関係施設等へ近づいたり、立ち入ったり、そのような場所の近くで写真撮影等をしてはならない。また、そのような疑念を持たれるような言動も厳に慎むことが肝要である。

 (本文中の意見に関する事項については筆者の私見であり、筆者の属する法人等の公式な見解ではありません)
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茂木 寿

転載元アドレス

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160315-00046325-jbpressz-int


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