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あけましておめでとうございます。
この一年を振り返ると、加齢のための体力低下に加え、身内に不幸があっ たり、また 合唱団に入団したことなどで、ブログの時間とエネルギーが かなり制約された年でした。
一年を振り返り、読んだ本などを思い出してもかなり読書量が落ちたのは 慙愧に耐えないことでした。
今年はもう少し読書の「質」を大切にして量は多くなくても、よい本を見 つけていきたいと考えています。そんなこんなで、2011年は以下のものが 印象に残りました。
① 「弦と響」小池昌代著 (光文社)
解散コンサートの弦楽四重奏団、時間、老い、喪うこと、そして愛。
表現することの不確かさ、「今」という瞬間だけでなりたつ音楽を通して、人の営みの不思議が香り立つ。
② 「短編集」−柴田元幸著 (ヴレッジ・ブックス)
「箱」という概念をモチーフとして、若手、書き盛りの作者を集めた実験的な短編集。
小川洋子さんも名を連ねた作品群の中でいちばん光っていたのは、小池昌代さんの作品だった。
③ 「紅梅」 津村節子 (文芸春秋社)
「紅梅」は小説家の吉村昭さんが舌癌に冒され亡くなるまでを、妻の津
村節子さんが夫の死後約5年経って書き上げた作品で、今年の純文学を 代表する作品である。
息もつかせぬ緊迫した描写、癌という異界のものと闘う人間と、強い個性をそれぞれ持ち合わせた夫婦の繋がり、すれ違い、周りの人々との関係などが綯い交ぜになって迫る。カテーテルを引きちぎり背を向ける姿に、妻は取り返せない悲しみを感じたようだが、それはぶっきらぼうな夫の最後の愛情表現であることが読む者に伝わる。人に甘えることを良しとしなかった吉村昭という人を妻は愛情をこめて書き残した。
④ 村上春樹「雑文集」 (新潮社)
⑤ 「おおきなかぶとむずかしいアボガド村上ラヂオ2」(マガジンハウス)
「1Q84」第3巻を書き上げた村上氏は、少しほっとして肩の力が抜けたらしい。
あえて、原発への独自のコミットメントが示されるなど、今までにないフットワークを感じさせた。
2011年はそんな村上氏のエッセイ集などがファンを拡大していった年だったと思う。
とくに後者のエッセイ集は、大橋歩さんの美しい挿画の魅力も寄与して、作品を貫く「ゆるさ」みたいな部分が的確に効果を出しているのが印象に残り、だけどいざという場面になると、心に深く届く表現に圧倒される、いわば円熟の仕事と思わされた。
⑥ 「小澤征爾さんと、音楽について話をする」 小澤征爾×村上春樹 (新潮社)
小澤さんと村上春樹さんのクラシック音楽に関する対談集。
小澤さんの娘の征良さんが、村上春樹氏の夫人の陽子さんと大の友達(あとがきより)
だったことで、二人の交友関係が生まれる。
小澤さんの京都の音楽塾に村上氏が訪ねたりして交友を深め、雑談の中で村上氏のクラシック音楽での理解の深さに小澤さんがおどろき、こういう一冊が実現して行ったようだ。カラヤン、バーンシュタインなどの指揮者のことや、作曲家のマーラーがどのように世界に受け入れられて行ったかなど、興奮に満ちた稀有な対談集に結実した幸福な一冊である。
⑦ 「アゲハ蝶の白地図」(五十嵐 邁著、世界文化社2008年)
NHKTVで11月に、ブータンの奥地に棲息する「ブータンシボリアゲハ」という
まぼろしの蝶を追跡する番組があった。
蝶に関する学術的研究に関心を覚えたところ、偶然図書館で見つけた一冊です、
ブータンシボリアゲハに限らず世界の蝶の魅力について、アジアを中心としてフィールド調査をかさねた、建設会社重役兼日本鱗翅学会理事の著者が著した魅力満載の
一冊で、掛け値なしで面白かった。
新種の最初の捕獲をいつも同行の奥さんに先んじられた著者は、実は遠征のときは新婚で、新婚旅行を兼ね奥さんを伴って意気揚々と現地に乗り込んだものの、新妻にいつもしてやられたというオチが、悔しさとものろ気とも受け取れるなど、まったく人間的で爽快な読書を楽しめる。
⑧ 「持ち重りする薔薇の花」 丸谷才一 (新潮社)
申すまでもなく、昨年文化勲章を受章された丸谷さんの最新作。
カルテットとは4人で薔薇の花を持つようなもの、もちにくいぞ・・・ 大変だぞ!
「『持ち重りする薔薇』とは芸術のことでもあり、人生そのものでもあ る」らしい。夫婦をはじめ家庭の関係も、職場をはじめ社会的な人間関 係も、すべてが持ち重りするようなもの・・・。丸谷さんらしく全体小 説を目指された、音楽界、政財界、海外にわたる、一個人の愛憎から、 それぞれ世界をまたぐ意欲作。魅力なのは音楽とその世界での葛藤。
大人のための大人による、逸品のワインを賞味しているような深い味わ い。
評価は分かれることだろうけれど、こういう味わいの小説は嫌いではな いなあ。
*今年は、現代詩にも少しこだわりたいと思います、どうか宜しくお願い します。
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