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いよいよ最終日となりました。
民宿にお願いして、朝食抜き朝5時半に出発ということにしました。
民宿の女主人はいやな顔も見せずに見送りをしていただきました。
彫りの深い顔立ちのエキゾチックな美人の方で、ロシアに遠い親戚でもありそうな印象です。
見送りのとき、どういう訳か黒のドレスを着用して出てこられたのにびっくり。
妖艶で謎めいた印象が強まり、なぜかカルメンを連想しました。
宗谷岬のカルメンにちょっぴり心を残しながら出発です。
岬の記念碑を過ぎたところに、間宮林蔵の渡樺地の記念碑がありました。
この場所の自然の海岸から採取した宗谷岬の石ころたちです。
知床と異なり古い堆積岩のようで、知床の石のように磨耗して丸くはなく、またほとんど小さな石ころばかりでした。
暗く寒い海に静かに眠っている石たちという印象。もしかすると、護岸整備のとき入れられた石かもしれませんが、付近一帯は自然のままの海岸が残っている場所でしたので、この場所本来の石ではないかと思いました。
そこを過ぎると風力発電の相当大きな風車が山の頂のほうに並んでいます。
冷気が霧を引き起こし、風車の上のほうが霧に隠れて、いかにも地の果てという雰囲気が漂ってきます。
さて、この日の最終日に、目的地がひとつありました。
それはJR宗谷本線の「かぶと沼」という駅からほど近い場所のはず。
前日と打って変わって雲が垂れ込めた北の道路を走ります。
快晴でなく残念ですが、暑くないのは助かります。
約1時間で目的地に到着。
写真で見ていただいているこの木が今日の目的。
「日本全国の巨樹・巨木674本」(渡辺典博、山と渓谷社)
で、一番北の地の銘木として紹介されています。
名づけて、「言問いの松」。
イチイの木で、樹齢1200〜1300年。今も見事な枝ぶりと幹の迫力です。
かつて切り倒そうとしたものは皆病気になったり怪我をしたそうで、長い年月のことを聞けばなんでも教えてくれると信じられているそうです。
かぶと沼の駅で散歩中の方に詳しい場所を教えていただきました。
沼の近くにぽつんと立っており、今は防風のための植樹がされて、周囲には工事用の足場が設けられ、この神聖な木を守っています。
周囲は果てしない牧草地で民家もほとんどありません、遠くにかぶと沼の水面が見え、時々地元の方がお参りしお供えをして大事にされているそうです。
その圧倒的な存在感に感銘を受けました。
家族の健康と旅の安全をお祈りして、お賽銭を差し上げ手を合わせます。
これでこの旅に思い残すことはありません、後は無事に家までたどり着くだけ。
帰路は北海道の西海岸を留萌まで延々と走る予定です、時間があればどこか原生花園のひとつでも立ち寄れれば・・・というくらい。
気をつけて帰りましょう。
と、言問いの松に別れを告げてからどうも3日間の疲れをどっと感じ始めました。
気を紛らし、元気を出すため音楽CDを次々聴きながら走ります。
道は相変わらずほとんど真っ直ぐ、空は鉛色、強い風の中、休憩を前日までより頻繁に取りながらの帰り道。
この日もかかってくる職場からの電話が、今日はなぜか懐かしくほっとさせてくれます。
海岸沿いの主要道路は、海にスモッグがかかり風景が見られず、ただ真っ直ぐに運転を続けます。
しかし100kmほど行ったところで、大休止。緑の多い山間部の道を通りたくなり、
ナビの設定を変更しましたが、道路事情が変わっていて、ルートがありません。
やむなく再び海岸の道を・・・。
高低差があるダイナミックな区間や、留萌への断崖絶壁のそばの道路をひやひやしながらの走行。
疲れていないときにぜひもう一度走りたい道でしたが、やっとこさで鰊の番屋を通過して、留萌まで来ました、やれやれ。
高速道路に乗り、札幌周辺の渋滞も夕立もクリアして、とうとう千歳インターを出ます。
飛行機の時間にはちょうど1時間余裕がありほっとした途端、なぜかナビが急に動かなくなりました。
手持ちの地図では営業所の場所がわからず、電話をしたのですが説明が要領を得ず、時間だけが過ぎていきます・・・
万事休すか・・・と思った瞬間、不思議なことにナビがなにもしないのに復旧!
約700m先、左ですと案内し始めました。助かった!
というわけで、離陸の30分前なんとか無事に空港に到着、奇跡の生還?となりました。
飛行機に乗ってから、無事に戻れることは日ごろの行いのよさ!・・・のためでなく、きっとあの、「言問いの松」が助けてくれたのではないかとしみじみ思ったことでした。
様々の思い出と、感動と、最後にスリルもありまして、旅は終わりました。
全行程の走行距離を計算すると、概算で1400kmあまりでした。
(名神・東名の往復距離くらいか?)
なんとか行けた北海道一周の旅は、体力的に同じ条件ではもう無理でしょう。
チャンスがあれば、ゆとりを持った計画で、しみじみとした旅をまたしてみたいなと感じたことでした。
つたない記事を読んでくださった方々に深く御礼申し上げます。 謝々。
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