田中栞日記

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唐沢なをき著『怪奇版画男』小学館、1998年4月刊、定価 : 本体1050円+税、A5判函入(函に帯つき)、本文114ページ

よろず版画の専門家であるI先生から教えてもらったこの本、4月23日に仙台へ行った折り、萬葉堂書店泉店で見つけて買った(古本価525円)。

本書、中身はもちろん、表紙、函や帯文字、目次や奥付、初出一覧に至るまで、すべて木版画で彫られている。ネタとして出てくる「プリントゴッコ」「魚拓」「領収証」などのほかは、タイトルもコマもすべて版画製だ(唯一の例外部分が、函ウラのバーコードと定価表示部分……さすがにここは、木版ではできなかったようだ)。
最初はモノクロ1色だったのが、途中、2色刷、3色刷となり、ついに4色刷に……この手間、想像するだにおそろし〜。そしてまた、版画体験者なら笑えるネタが満載。おかしすぎて、電車の中では読むことができない。版画にのめり込んでいるアナタなら、絶対ウケる1冊だ。
仙台で木版画教室の後、講師を務めた千田佐知子先生にお見せすると、千田先生、すぐにハマってしまう。「私、旧姓唐澤だったのよぉ〜」と言いながら、酒盛りの席で読みふける先生、「私、この本探してゼッタイ買う!」
この主人公である「版画男」、年賀状を木版で出さなかった「悪者」にインクをつけ、紙をかぶせてバレンで「す〜りす〜り」とやるのだが、これがよほどインパクト強かったと見えて、千田先生、ブログの書き込みにも「す〜りす〜り」……アブナイアブナイ。


さて、大変に凝った造りの出版物であるこの本。一つだけ、出版業界人として残念なことがある。
写真をごらんあれ。この出版物は、画像の向きで中身の本が出てくる。本来なら、こうして出てくる面が「オモテ表紙」でなくてはならない。そうでなければ、本を開いた時、裏側からめくることになってしまうからだ。
ところがこの本は、右開き(縦書き本)である。したがって、この向きで出てくると、本を奥付側から開いてしまうことになる。
右開き本なら、本の表紙を手前に置けば背は右側に来る。つまり、函は左側からかぶせるように作らなくてはならないのだ。
これ、出版社の社員でも意外とよく間違えることだが、本と函は向き合わせに合体するわけで、だから函のひらは、本とは逆の面がオモテになる。
本書の函のつくりは、向きが誤っているのだ。

天下の小学館ともあろう版元から出した出版物が、なにゆえこんなミスを犯したのか。
これはおそらく、ブックデザインの段になって、編集者が著者の唐沢なをき氏に外装用の版画作品を依頼した際、「函」に使う絵であることを説明しなかったのではないか(ジャケット(いわゆる「カバー」)装であれば、この向きで良い)。その理由にも、次の2通りの経緯を想像することができる。

1.初めから函入本にする予定であったが、「函はジャケットとは逆向きになる」ということを編集者が知らなかったために、著者に適切な指示出しができず、こういう事故が起きた。
2.当初はジャケット装のつもりで進めていたのが、途中で函入本にすることに変更になってしまった。

この函の版画絵は、明らかにこの向きで使われることを意識して制作されている。反転すれば逆向きの函のデザインとして使える理屈だが、この絵は中に文字が入っているから、まさか反転して使うわけにもいかない。しかたなく「逆向きの函」のまま作って発売してしまったものと思われる。

……と、なんだか出版学会研究発表みたいになってしまったが、出版物や印刷物も、所詮は人間が作るのだから、ミスはつきもの。実は全然珍しいことではない。
それにこの本、なんたって「怪奇」本なのである。造本構造上、怪奇現象があっても不自然ではないかなと思ったり。まさか、編集者がすべて承知の上で、わざとこうしたなんてことはいくらなんでも、……ナイだろうなあ。

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木版画を愛好している(旧姓)からさわです。 うふふふふ、今日、「怪奇版画男」が我が家に到着。 最初に探したのは、「す〜りす〜り」のコマです。再会できました! 函が逆向きなのは、わざとした「怪奇」だと信じたいところですが、どうでしょう。電車男、電波男等々のネーミングがはやる昨今、6年も前に「版画男」が登場していたとは、おそるべし、版画男。原画みたいものです、ぜひ!そして、いつか私もこういう版画本を出版したいです(うそうそ)

2006/5/2(火) 午後 7:25 [ ちださちこ ]

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田中栞です。千田先生こんばんは。 買いましたか、ついに! 笑ってくださいませ。 私は「紙版画」を売っている少女が好きです。 千田先生の版画本だったら、さぞかしファンシ〜なものになることでしょうねえ。 ご出版を決意されましたら、ぜひ私に編集やらせて下さい。函の向き間違えたりしませんから。 (なんじゃ、この「顔アイコン」が変えられないっ……まだ使いこなせなくて、スミマセン)

2006/5/3(水) 午前 2:56 [ 田中栞 ]

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ふ〜む、なるほど、この本は去年友達に貸して貰って読みましたが、その時になんか違和感があったのは、逆だったせいなのか! ちなみに、我々もこのインパクトに影響されて「サクサク」が、かなり長い間メール間を飛んでいました。

2006/5/3(水) 午後 1:20 [ ジージョ ]

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ジージョ先生、いらっしゃいませ。先生に教えていただいたこの本、なにか流行らせてしまいました(笑)。先生の木版蔵書票集『みのとーろましー』には負けますが、笑えます。私はまだ、なかなかこの域に達することはできません。修行します(笑)。

2006/5/3(水) 午後 3:14 [ 田中栞 ]

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