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25日に訪れた研究社印刷(工場所在地は新座市)で、
いまだ残されている活字である。
木枠だけになっているスペースにも、もとはぎっしりと
活字が詰まっていた。空いているのは、震災で
崩れてしまった部分だという。
私の手元にある『新英和大辞典』第5版第6刷の
本文がこれ。第5版まで活版組版だったというから、
この原版は活字で組んだものである。
今回、原稿と校正刷りもチラッと見せてもらったが、
実際の活字組版はもう少し大きくて、組み上がったもので
きれいに刷って(清刷〈きよずり〉)から、それを
縮小してオフセット印刷したそうだ。
パソコンが普及した現在では想像することも難しい
だろうが、「book」という単語一つをとっても、
「b」「o」「o」「k」という4本の活字をそれぞれ
拾い集めてきて、組み合わせることでようやく版ができる。
そして、文字が何もない空間(語間や行間、文末のアキなど)にも、
活字より背の低い金属の物体をすべて敷き詰めて組付けを行い、
凸状態になっている版の部分にインキを付けて刷る。
活字は鉛・すず・アンチモンの合金なので、
金属で作った版画と言える。
原則として文字1つ1つが全部別の物体なので、
高さをぴったり揃えないと、刷ったときにきれいな
印刷面にならない。出っ張っているところは強い圧力が
かかって濃く太くなり、引っ込んでいるところは薄く
かすれてしまうからである。そこで、活字の高さを揃える
「ムラ取り」という地味な作業を行うのである。
もっとも、こうして作成した活字の版そのもので、
本番の印刷を行うことは稀れである。
実際は組み上がった活字版の表面に特殊な紙素材を押し当て、
「紙型〈しけい〉」という雌型の複製版を作り、これに
金属を流し込んで「鉛版〈えんばん〉」という一枚板の金属版を
作成、本番の印刷は、この鉛版にインキを付けて刷ることで行う。
「活版」というと、活字で作った版そのもので刷ると
思っている人が多いが、活字は使い回しができることが
その特性なので、紙型を取った後、また活字棚に戻して
再利用に供するのが本来である。
〜〜〜〜〜・・ご・・案・・内・・〜〜〜〜〜〜
…豆本を6冊作ります
2013年7月13日(土)朝〜夕、豆本三昧!
放課後講座*消しゴムはんこワークショップ
…本かがり上製本・和本など4冊作ります 2013年7月14日(日)朝〜晩、製本三昧!
放課後講座*『泉孝次蔵書票作品集』の折本ワークショップ
…憧れの丸背豆本とリボン付きの貼函を作ります
2013年11月23日(土)朝〜晩、豆本三昧!
…和本2種(麻の葉綴じ・綴葉装)と帙を作ります
2013年11月24日(日)朝〜晩、和本三昧!
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朝日カルチャーセンター湘南〈神奈川・藤沢〉
2013年7月7日(日)消しゴム版画で手ぬぐい作り(大小2本作成)
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*田中栞の「豆本・製本ワークショップ」予定表
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本
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そうでしたか、学生時代に活版の授業で活字を拾い、タブロイド判に組んで、直にインクを付けて印刷したことがあったのですが、紙型を使うのは新聞などの大量印刷だけかと思っていました。
確かに、活字は意外と柔らかくて、専用のバネの効いたピンセットで拾うのですが、ちょっと手元が狂うと活字に傷がついてしまいました。職人さんはそんなことはないでしょうが、やはり摩耗は激しそうです。当然と言えばその通りですね。
2013/5/27(月) 午後 9:06 [ ジージョ ]
もちろん、原版刷りも、絶対ないというわけではありません。
私が気がついたところでは、次のようなケースがあります。
〈1〉絶対に増刷しないとわかっている印刷物。私家版、限定版の
本など。
昨今の個人印刷家(プライベート・プレスとも言えますが)も、
当然、原版印刷になりますね。
〈2〉明治時代のごく初期、まだ紙型の技術が普及する前の時代の
活版印刷物。
〈3〉精興社のように、「活字の使い回しはしない」と、
こだわって組版印刷している場合。
……原版刷りするケースは、「部数が少ない」「きれいな刷りを
実現したい」「紙型製作ができない」という理由が考えられると
思います。
2013/5/27(月) 午後 11:57 [ 田中栞 ]
通常出版物で、ある程度の部数を製作する際は
紙型取りの後に鉛版印刷、だと思いますが、
原版刷りができない場合として、
次のようなケースもあると思います(私が
経験した限り、ですが)。
〈1〉縮小印刷など、オフセット印刷することが
前提で製作進行しているもの(製作技術的な理由)。
原版で清刷を取ってから、これを版下として
フィルム撮りを行い、オフセット印刷します。
〈2〉組版している印刷所と、本番の刷りをする印刷所とが、
距離的に離れている場合(物理的経費面からの理由)。
たとえば、中国や台湾で組版すると、原版は日本へとても
運べないので、紙型取りをして、紙型のみを日本へ
輸送して使用。あるいは清刷を作成してオフセット印刷。
かつて活版印刷で組版進行していた時代、
あまりに製作に時間がかかりすぎて、本が
できあがる前に、印刷会社が活版をやめることに
なってしまいました。
それで、途中段階の組版でしかたなく
清刷を取っておき、以降は写植で修正を行って
オフセット印刷したことがありました。
2013/5/28(火) 午前 9:47 [ 田中栞 ]
組版ののち紙型をとり、そのあと活字を再使用するとありましたが、紙型をつくる際、熱をくわえることとメス部を凹ますために、まんべんなくたたきますので、活字はダメージが大きく再使用はできません。
2013/5/28(火) 午後 0:55 [ ghfhfh ]
この前、1988年主婦の友出版(凸版印刷所)の若桑みどりの本を読んでいたら、始めの方が刷り圧が強くて鉛筆で擦ってフロッタージュが出来そうでしたが、鉛版印刷だったんですね。
そういえば、大昔、映画の「次郎物語」に活字を拾う場面がありましたが、到底ペイできる仕事ではありませんね。
2013/5/29(水) 午後 3:10 [ ジージョ ]
ghfhfh様、ご教示ありがとうございます。
研究社印刷さんに確認しましたところ、
「社内に活字を鋳造する設備を持っている印刷会社は、
原版刷した場合も、また紙型取りした場合も、1回使った活字は
ケースに戻すことはせず、溶かして鋳込み直す方法を
とっていました。
一度に大量の活字を使用するため、いちいち活字を戻す手間を
かけるより、溶かして鋳込み直す方が効率が良いからでしょう」
ということでした。 〜このコメント、続く
2013/6/3(月) 午後 6:47 [ 田中栞 ]
「社内で鋳造できない見出し用の大きな活字などは、解版作業で、
インテルなどとともにより分けて、ケースに戻していました
(使う本数も少ないうえ、買うと高価だったため)。
社内に鋳造設備のない、名刺などを刷る端物印刷の会社では、
活字が傷つかない限り、刷り終わった後は、活字をケースに戻すのが
一般的だと思います。
大きな印刷会社でも、鋳造設備が普及する前は、高価な活字を
活字会社から購入していたわけでしょうから、おそらく
使った活字でも、元のケースに戻していたのではないかと思います」
ということでした。 〜このコメント、続く
2013/6/3(月) 午後 6:49 [ 田中栞 ]
紙型取りした後の組版活字の再使用については、
物理的には、 ghfhfhさんのおっしゃるとおり
「できない」のが正解なのでしょう。
ただし、「鋳造設備が普及する前」のような昔の時代や、
どのような印刷所なのかによって、別の状況になることも
皆無ではないと思いました。
2013/6/3(月) 午後 7:00 [ 田中栞 ]
ジージョ先生、いつもありがとうございます。
活版印刷は、職人さんたちが技術を研鑽して
「美しい印刷」を実現しようとしていた時代は、
「でこぼこが感じられるような印刷はダメ」と
話していたのを聞きました(共立社印刷所の親父さんから)。
活字の極細のラインが均一に紙の上に展開され、
印圧は感じられないので(うら面に凸感はほとんどない)、
オフセット印刷かと見間違えるくらいです。
しかし時代は移り変わり、活版が印刷のスタンダードでは
なくなった今、現代人(世代の若い方々、または往年の活版印刷を
懐かしむ読書人)が活版印刷に求めるのは、
細くて繊細な印刷面というよりも、
「凸版でつくる版画と同様の印圧、力強さ、味わい」
だと私は感じています。
「フロッタージュが出来そうな印刷面」は、発行当時は
おそらく、印刷に携わる人たちからは低い評価で
見られていたのではないかと想像しますが、
今は、かえってそういう印刷物のほうが、好まれる傾向に
あるような気がします。
2013/6/5(水) 午後 1:56 [ 田中栞 ]