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武井武雄刊本作品は、できあがると、都内の著名なホテルなどで
一席設けて、購入会員へ手渡しするという会が行われた。
その際、有志の会員が事前に用意した菓子を饗するのが恒例であった。
この菓子には条件があり、美味しいことはもちろんだが、
武井先生のお話を聞く場でもあるので、食べる際に大きな音の
出るようなものは好ましくないとされ、そうした条件をクリアする
ものでなければならなかった。
当日、菓子は武井武雄がこの菓子のために作った
多色木版画の「敷紙」の上に置かれた。
菓子の代金を負担して用意した会員は、この敷紙の
板木をもらうことができたという。
版画作品を初めとして、著作物や刊本作品など、当初から
販売を前提としている作品は、年月が経った後、古書店などで
入手できる可能性が高いが、こうした「販売されたものではなく、
会に出席することで入手できる無償の摺り物」は、後日の入手が難しい。
このたび運良く、この菓子敷紙20点が収められた
スクラップブックを入手することができた。持ち主情報などはないが、
特別誂えと思われる丸背のスクラップブックに丁寧に挟み込まれている。
刊本作品は必ずしも作品番号順にはできあがっていないので、
この会の開催日の順とも一致していないが、会の開催時期としては、
1971年3月から1977年4月までの6年間のもので、
『Π(エリ)子の船出』(刊本作品No.79、1969年刊)から
『京之介と千草』(刊本作品110、1977年刊)までということになる。
木版の文字から、開催日や菓子の情報を書き出してみた。
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武井武雄刊本作品・菓子敷紙リスト
No.79『Π(エリ)子の船出』1969年11月3日刊、限定500部
1971年3月13日開催/浅草橋寿々木・栗もなか、ぜんざい最中
No.86『天とは何か』1971年6月25日刊、限定300部
1971年7月24日開催/長崎屋・フォンドケーキ
No.88『瓢箪作家』1972年3月10日刊、限定500部
1972年5月21日開催/旅まくら
No.84『平和白書』1970年8月15日刊、限定500部
1972年7月15日開催/京都・淡かさね
No.89『面倒無用党』1972年8月15日刊、限定300部
1972年10月21日開催/弘前・茶屋の餅
No.90『現代の神々』1972年11月3日刊、限定300部
1973年1月13日開催/東京青野・尾上
No.92『小萩抄』1973年5月5日刊、限定300部
1973年6月9日開催/人形町・丑紅の牛
No.91『虹を作る男』1973年3月3日刊、限500部
1973年8月25日開催/OGAWAKEN・RAISIN WICH
No.94『高杉晋作』1973年10月10日刊、限定500部
1974年1月19日開催/虎屋・御代の春
No.97『RomとRam』1974年5月30日刊、限定300部
1974年7月 20日開催/長門の和菓子
No.98『金色の森』1974年11月10日刊、限定500部
1974年11月 10日開催/森のめるへん
No.99『どん・きほうて』1974年11月25日刊、限定300部
1974年12月 7日開催/柿山のあられ
No.102『狗猴考』1975年6月25日刊、限定300部
1975年8月2日開催/うさぎやの半生
No.103『洗脳奉行』1975年7月15日刊、限定500部
1975年9月20日開催/東京カド…のマドレーヌ
No.101『小さな雪女』1975年5月5日刊、限定300部
1976年1月15日開催/諏訪初霜
No.105『珍和名抄』1976年1月20日刊、限定300部
1976年3月21日開催/横浜十番館ビスカウト
No.104『天狗天八郎』1975年10月10日刊、限定300部
1976年5月8日開催/深川清水のきんつば
No.107『アイウエ王物語』1976年10月10日刊、限定530部
1976年10月10日開催/オークラ・フランス風小菓子
No.106『半介の神様』1976年9月10日刊、限定300部
1977年1月22日開催/草月の黒松
No.110『京之介と千草』1977年3月10日刊、限定300部
1977年4月16日開催/高砂屋の果心
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いずれも、刊本作品と菓子の雰囲気に合った珠玉の多色木版画が
敷紙に配されていて美しい。なかでも鳥のモチーフは
「連作」を思わせる完成度の高さである。
菓子の名前は、読み間違いがあるかもしれないが、
小川軒の「RAISIN WICH」などは私でも知っている。
20点の中で『小さな雪女』だけは金箔押しがなされており、
特別感がある。「諏訪初霜」という菓子も、なんだかいわくありげ
なので調べてみたところ、大正15年創業の信州諏訪の和菓子店
「甲子堂」の銘菓で、厳冬期に重湯を氷結させて作る氷餅に
更に手をかけた特産品だという。
*甲子堂/諏訪銘菓「初霜」
『小さな雪女』に合わせて会も1月に行い、したがって
菓子も季節にちなんだ「初霜」と決めた趣向であろう。
武井先生の故郷である諏訪の菓子、というところにも
思い入れが感じられる。
7月6日(日)には岡谷で「生誕120年記念シンポジウム」が
行われるので赴くが、この日はイルフ童画館で夜遅くまで
作品を堪能できるようなので(それも、初山滋作品との展示!)、
大変楽しみである。
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武井武雄生誕120年記念シンポジウム
日 時: 2014年7月6日(日) 14:00〜17:30(13:30開場) ※入場無料
会 場: 岡谷市文化会館カノラホール(小ホール)
岡谷市幸町8-1 TEL 0266-24-1300 JR中央本線「岡谷」駅下車、市内循環バスに
乗車して5分「岡谷市役所正面口」下車
内 容: 基調講演/松居直(児童文学研究家)「武井武雄と私」〈14:10〜14:50〉
研究発表/武井武雄について(イルフ童画館学芸員)〈15:00〜15:30〉
紹介/映像で見る武井武雄〈15:30〜15:40〉
シンポジウム/「武井武雄とは?」〈仮題〉〈15:40〜17:10〉
司会・山岸吉郎(イルフ童画館館長)
西山純子(千葉市美術館学芸員)・田中栞・
小野明(絵本編集者)・仙仁司(元「コドモノクニ」編集者)
*記念シンポジウム懇親会
日 時: 2014年7月6日(日) 18:00〜20:00
会 場: 岡谷市内(イルフ童画館?)
*ナイトミュージアム「武井武雄と初山滋展」
日 時: 2014年7月6日(日) 〜21:00
会 場: イルフ童画館
岡谷市中央町2-2-1 TEL 0266-24-3319
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十番館のビスカウト、大好きです♪ 横浜に行くと、つい買ってしまいます。草月の黒松は、確か前々回の東武の際に差し入れでいただいて、みんなでわけましたよね。ああ、この軌跡を辿ってお茶会したいです(笑)(食べ物の話の時だけ食いついてすみません
2014/6/18(水) 午後 7:16 [ よしのちほ ]
横浜市民なので、馬車道十番館はもちろん知っていますが、ビスカウトは買ったことがありませんでした(恥)。横浜のレトロ洋菓子の定番というと、かをりのレーズンサンドでしょうか。類似商品も多いですけれどね。
2014/6/19(木) 午前 7:04 [ 田中栞 ]