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画像の本、表紙が違うが、本文に書かれている文字は全部同じである。
書名も奥付の年月日も同じ(画像2枚目(右本の奥付)と3枚目(左本の奥付))なので、図書館では普通、どちらかを「複本」として、目録にも載せないことが多い。
ここのところ、私は書肆ユリイカの出版物について書誌学的な調査をしている。奥付が同じであっても増刷本であることがあり、そういうことが判明するとつまり、その本はよく売れて何度も印刷発行した本だということがわかるのである。
そこで、複本も全部見て、どこかに違う部分がないかどうかと、矯めつ眇めつチェックしていくわけである。
収蔵機関の中でも神奈川近代文学期間は、詩人からの寄贈本が多いこともあって、複本が大変多い。
ここは公共図書館と違って文学書のコレクションが充実しているため、複本も目録に載せてあることが多くて助かるのだが、それでも、通常の検索データでは出てこない本があるようだ。
一昨日の閲覧の際、最初に「複本も全部見たい」と言ってあったので、請求票にしたがって館員さんがいちいちチェックして、複本もすべて出してくれた。2冊、3冊は当たり前(どこかの安売りCMみたいだが)、中には同じタイトルのものが4冊あるものまであるから、さすがである。
この詩集と同じシリーズの『吉岡實詩集』は2冊あって、表紙も中の文字も奥付の年月日も同じだったが、実は印刷時期が違う別版であった。
図書館も文学館も、複写は「著作権の範囲内で」という条件付きなので、閲覧者1人ができる複写は、同じ本の1頁につき1枚だけと決まっている。
つまり複本が同じ本と見なされてしまうと、同じ箇所の複写ができないことになってしまうのだ。
『吉岡實詩集』も、複写希望箇所として、奥付のほか本文部分の数か所を記入していたのだが、「同じ箇所はコピーできません」と言われてしまったのには困った。
「これは版が違うんです。ほら、比べてみると版の大きさが違うでしょう」(後で版を作り直して印刷したほうが、版面の寸法が小さくなっている)と示して見せ、書誌学的調査であることを説明したのだが、怪訝な顔をされるだけで理解してもらえなかった。結局、奥付以外では印刷された文字が違う箇所だけしかコピーしてもらえなかった。
私は別に中の文章を読みたいわけではなく、印刷状態の調査のためにコピーしているので、著作権うんぬんは本来あたらないのだが、こうした機関の複写条件がそもそも、書誌学的調査に供される場合を想定していないので仕方がない。
さて、この『吉本隆明詩集』は神奈川近代文学館に所蔵されていたのは1冊だけで、右側の海辺の絵の表紙のほうであった。
この本については、右側の、海辺の絵の青い表紙のほうが先に作られた版である。本文の印刷状況を調べるとこっちのほうが版面寸法が大きく、さらに奥付裏にこのシリーズの広告があって(画像4枚目)、ラインナップはまだ半分までしか書かれていない。
つまりこの本が発行された時に、5冊目以降はまだ出版されていなかったのだ。左側のほうは8冊まで全部載っているので、8冊ずつ全部の発行がかなり確実になってから作られた版である。したがって、後で作られた増刷本だということになる。
この2冊は、内容だけを見ると「同じ本」であるが、書誌学的に見ると「違う本」なのである。
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