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境田稔信(さかいだ としのぶ)さんは、出版物の校閲を
生業とする人物だが、同時に比類ない辞書研究家であり、
その蔵書は辞書だけで5000冊を超えるという恐るべき所蔵量を誇る。
日本エディタースクールで実施している校正技能検定試験に
合格すると入会資格ができる「日本校正者クラブ」という団体があり、
私も一員なのだが、境田さんはここの機関誌「いんてる」の編集長でもある。
ともかく、辞書のことなら境田さんに聞けばわかる、という特異な存在だ。
さて、私は「そうてい」という用語の表記が色々あることに
ついて調査し続けてきているが(たとえば装丁、装幀、装釘、装訂)、
日本の辞書の中でもっともスタンダードといえる『広辞苑』において、
これがどう表記されているのかを調べたところ、見出し語が
版によって異なることに気がついた。
境田さんに確認してもらったところ、版による違いというよりも、
『広辞苑』第1版において、見出し語が最初の方の刷では
「装幀・装釘」だったのが、同じ第1版でも後の方の刷では
「装丁・装幀・装釘」になっていることが判明した。
辞書というのは内容が永遠不変のもの、という先入観を
持つ人がいるが、そんなことはまったくなく、むしろ
増刷のたびに手が加えられる……つまり、内容は時代につれて
刷新されていくものなのだ。更に、「版」が改まれば内容が
改まると知っている人であっても、実は「刷」の違いでさえ、
こまめに改訂の手が加わっていることを知る人は少ない。
そこで問題は、この見出し語が「装幀・装釘」から
「装丁・装幀・装釘」へと変更されたのは第1版のうちの、
昭和何年発行の第何刷からだったのか?ということである。
「「そうてい」用字用語考」を雑誌『ユリイカ』2003年9月号と
「東京製本倶楽部会報」に発表したのは、今から
5年ほど前のことになる。
その発表の際、『広辞苑』第1版で、第何刷から変更になったのかを
境田さんに確認してもらったところ、昭和34年発行の第7刷では
「装幀・装釘」だったのが、同じ第1版でも昭和40年発行の
第15刷では「装丁・装幀・装釘」であることまでは判明したものの、
いつ発行の第何刷から変更されたのか、ということまでは
わからなかった。
今回、東京製本倶楽部が発行する『本をめぐる話』の第4冊目に、
この「「そうてい」用字用語考」が再録されることになり、
情報を新たにしようと境田さんに改めてメールで質問したところ、
次のような答えが返ってきた。
……以下、原文のまま……
田中 栞 様
こんなこともあろうかと、あれから5年かけて『広辞苑』を
第1刷から第29刷まで揃えました。
「装幀・装釘」は、第一版第十二刷(昭和39年1月15日)まで。
第一版第十三刷(昭和39年8月1日)から「装丁・装幀・装釘」です。
なお、『岩波国語辞典』も第一版第一刷(昭和38年4月10日)で
「装釘・装幀」だったのですが、後の刷では「装丁・装釘・装幀」に
なっていましたので、同時期に変更されたのかもしれません。
以上、お役に立つと幸いです。
境田稔信
…………
たった数行にしかならない記述にもかかわらず、
境田さんは5年の歳月を費して当該辞書の探求と購入を行い、
なおかつ数十キロの蔵書量増加を負ってくれたのである。
記しておくが、当初、この文章が再使用される予定など一切なく、
その後の継続調査を依頼したわけでもない。当然のことながら私は
境田さんに一銭も提供していない。
それでも刷違いの『広辞苑』を根気よく探し出して購入し
(繰り返して言うが、「版違い」ではなく、「刷違い」
である!)所蔵してくれた。
書誌学的な調査というのは、実にこうしたものである。
この回答を受けて、私は本文と注の記述をありがたく
修正させてもらった。
ちなみに今、境田さんの家に『広辞苑』は、第1版から
現行の第6版まで、刷違いを含めると全部で40冊あるそうだ。
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