田中栞日記

「かわいい豆本づくり」ヴォーグ学園東京校/横浜校・途中受講できます

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 現在、日本出版学会の歴史部会を率いる部会長が、浅岡邦雄さんである。
 浅岡さんは、今は中京大学言語表現学科で教鞭をとっているが、
中京へ移る前は長年、白百合女子大学図書館で図書館員として
仕事をしていて、出版学会では近代出版史の視点から、
特に博文館の出版について丹念に研究を重ねてきた方である。

 江戸期の書物については、出版研究は多くの人が行い、
書誌学の方法もある程度確立されているが、明治期以降の出版物に
ついては、きちんとした研究が格段に減る。
 これはひとつには、洋装本の外観が基本的には現在の出版物と
同じであるために、その中身も出版事情も現在とたいして
変わりはないだろう、だからあれこれ調べるまでもないという、
まったく根拠のない極めて安易な油断から来ている。

 実際は、江戸時代も明治時代も、出版事情の真実を
読み解く難しさということでは同じである。
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 浅岡さんは先頃、『〈著者〉の出版史』(森話社、平成21年)
という著作を出した。
「出版史」というタイトルに惑わされて、出版の歴史について
編年体で記されたテキスト本のように思われると
気の毒なので言っておくが、本書は明治期の出版について、
いくつかの本や著者を取り上げ、それぞれの本において原稿は買取だったのか、
あるいは印税方式で報酬が支払われたのか、奥付に記された言葉や
印の主が意味するものは何か、そしてその時の出版に関する
法律がどうなっていたか、著作権についての扱いがどうだった
のかということなどについて、具体的に明らかにした論文を
収録した本である。

 こうしたことを調べるためには、現在出版されている書籍だけでは
足りない。明治期に出版された本や雑誌の実物(本書で取り上げられて
いるのは、たとえば『西国立志編』『一年有半』など)を古書店で
何冊も買いまくり、全国各地の図書館に所蔵されている本を
チェックしまくり、契約書などの特殊な資料も図書館所蔵のものを
見たり古書店で探して買ったりするなどして集めていく。
 作業としては、実際の本の奥付や扉など、出版事項の記されている
部分の具体的な状況をつぶさに調べ、そこに出版契約書・印税領収書や
作家の日記などの証拠資料を加えることによって、当時の出版はどういう
状況の元に行われていたのかということが、少しずつ判明するのである。

 必要な資料を的確に釣り上げて料理するテクニックは、一流の図書館人
として長年経験を積んできた浅岡さんならではの特殊技能であり、
これは勉強したからできるとかいうものではない。ことに執念とセンスが
必要だ。古本買いの面では私も決して負けないと思うが、明治期出版事情に
ついての解析技能は、浅岡さんが日本一(ということは必然的に世界一)
だろうと思う。

 浅岡さんの仕事や研究発表を見ていると、「本も、見る人が見ると、
ここまでわかるんだなあ」と感動を覚えずにはいられない。
『〈著者〉の出版史』は、「論文」とは書いたが、意味不明の専門用語が
並ぶ「いわゆる論文」とは違って、証拠の提示によって事実が明らかに
なる過程がたいそう面白く書かれており、その内容は書物を題材にした
推理小説のような展開である。
 私のブログを愛読して下さるような、本好きな人であれば面白く
読めるはずである(浅岡先生、ここで否定しないこと)。
 
 そんな浅岡さん、実は日常は「メールはやらないしケータイも
持たない」と宣言するような、時代に背を向けて生きる孤高の
存在であった(パソコンは、白百合時代から調査ツールとして
活用していた模様)。
 ところが中京大学に行ってからは、まあ結局のところ、
メールと携帯が×だと、本人はよくても周囲の人たちが面倒くさいの
だろう、側近の人びとがメール送信代行をしたりブログを
新設したりして、ようやくネットでもちらほらと近況が
出てくるようになってきた。
 こういう人の困るところは、自分ではブログを更新できない
くせに、「せっかく作ったのに、見てくれる人が少ない」と
嘆くことで、「紹介しろ」というご命令なので、はい、
見てやって下さいませ。

 *出版法制史研究会(中京大学・浅岡邦雄研究室)

 浅岡さんが東京にいた頃は、浅岡さん企画の研究会が
東京で頻繁にあったのだが、今、そういうわけで名古屋にいるので、
名古屋を拠点に面白いことをやっているらしい。研究会は、
中京大学の関係者でなくても参加できるようで、開催地も次は
東京に設定されるようなので、次回は私も出たいと思っている。
 先日、千代田図書館で行われた戦前の出版検閲についての
大変面白い展示については、今も図書館内にミニコーナーがあり、
パンフレットも買うことが出来るが、そのあたりの報告記事も
このブログに載っている(ただし、リンクはないので、自分でググるべし)。
 
 それで、ここ数日、浅岡さんとやり取りして(今はご自宅にも
パソコンがあるらしい)、私の『地上の祭』の研究発表の会場と
場所が決まったので記しておこう。
 詳細はこちら↓
 ……………………
日本出版学会・歴史部会例会
「武井武雄・銅版絵本『地上の祭』はいつ刊行されたか」
イメージ 2

日時 20111014日(金)18:3021:00
参加費 無料(日本出版学会の会員でなくても参加できます)
発表者 田中栞
会場 八木書店6階会議室
 東京都千代田区神田小川町3-18
 電話03-3291-3969
 アクセス「会社案内」→「会社地図」をクリック
 ※出版部のある「本社」のほうです。「古書部」ではありません。
 また、エレベーターが5階までしかありませんので、5階までお越しいただき、
 その先は階段をお使い下さるようにお願いいたします。
 
 田中が、森井書店で購入した『地上の祭』(購入者名簿つき)の
実物をお見せして、わかりやすく解説します。
 貴重な図版を盛り込んだ楽しいレジュメつき。
 当日、「もう一冊」の『地上の祭』も登場するかもしれません。
 この驚愕本を見るだけでも興奮ものです。お楽しみに!
 ……………………
 皆様のお越しをお待ちしています。
 
〜〜〜〜〜・・ご・・案・・内・・〜〜〜〜〜〜
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吉祥寺産経学園〈東京・吉祥寺〉豆本教室
2011年10月8日(土)布表紙のハードカバー豆本  
      *オマケ講座 1枚の紙で作る豆本3種
新百合ヶ丘産経学園〈東京・新百合ヶ丘〉豆本教室
2011年10月30日(日)布表紙のハードカバー豆本  
      *オマケ講座 1枚の紙で作る豆本3種
蒲田産経学園〈東京・蒲田〉豆本教室
2011年10月23日(日)和綴じ豆本2種(亀甲綴じ・麻の葉綴じ)
      *オマケ講座 豆折本
2012年2月11日(土)ハードカバー豆本(リンクステッチ綴じ・6)と、
           リボン付き貼函
………………………………………………
2011年9月10日(土)布表紙のハードカバー豆本  
      *オマケ講座 1枚の紙で作る豆本3種
2011年10月1日(土)布表紙の豆和本
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