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何度か話題にしているので、この特殊な製本方法の
出版物を知っている方は多いと思う。
本書は、ジャケット(いわゆる「カバー」)がかぶっている
状態ではわからないが、はずしてみると背表紙がなく、
折山がむき出しになっている。
これは著者である林望氏の要望から、意図的に
採用された形態で、本文最終頁の次頁に、次のような
注記がある。
本書は「コデックス装」という新しい造本法を採用しました。
背表紙のある通常の製本形態とことなり、どのページもきれいに
開いて読みやすく、平安朝から中世にかけて日本の貴族の写本に
用いられた「綴葉装」という古式床しい装訂法を彷彿とさせる
糸綴じの製本です。
※「コデックス装」という名称がよくないことは
以前話題にしたので、ここでは触れない。
背表紙がないことはもちろん、背を補強するための
背貼材まで一切ない。
背にくっついている物体がまるでないのだから、
開きやすいのは当然だが、保護するものがないということは
同時に、強度が低いということでもある。
本書第1巻の発行から少し経った頃に、製本を行っている
ナショナル製本に電話で確認したところ、通常の製本作業と
同じ工程を行い、背貼部分については省く、という方法を
採用しているということであった。
補強材がない分、接着剤の量を増やすとか成分を替えるとか、
何らかの調整を行っているかと思ったが、そういうことはせず、
接着剤も通常の、背貼のある製本と同じものを使っている
という。
更に言えば、通常は背貼材を取り除くと、折山の背に
背丁(書名と、折丁の順番を示す数字や模様)が印刷されているのが
出てくるのだが、本書にはそれらがない。
背の部分を見せる構造である都合上、ここにそうした
バックヤード的な印刷があると体裁が悪いからだろう。
しかしこれでは、本文折丁の順番はもちろん天地の向きさえ
確認できないのだから、製本所は神経をすり減らすことだろう。
書名については、「背丁の印刷がないこと」が『謹訳源氏物語』の
折丁であることの証といえるが、万が一、このシリーズの別の巻の
増刷作業が同時進行で入ったりしたら、22もある折丁が2種、
同じ場所に置かれることになり、ミスの起こる恐れを想像した
だけで胃が痛くなる。
……と心配していたところ、元製本会社にお勤めのTさんが
「地の袋のところにつけている」と教えて下さった。
地には袋が2つ来るので、「背標あり」「背標なし」が交互に
並ぶのだという。この方法であれば、化粧裁ちでこの部分が切り落とされて
なくなるので、仕上がりもきれいである
(作業工程を見てみたいものだ)。
さて、今回、実際に壊してみた。
折の内側にあるかがり糸(3箇所、各2本)をカッターで切り、
折丁をひとつずつ本文ブロックからはずしていく。本文用紙が
薄いせいか、折と折の間の接着剤を剥がす際に紙が剥ける。
このシリーズでは、16頁折だけで完結する頁構成で
ないといけない。
通常のかがりであれば2頁や4頁などの半端は、接着剤で
ラストまたはラストの一つ手前に取り付けるが、『謹訳源氏物語』は
折丁の背がむき出しになるため、16頁でない折が混じると
背の折山の姿が美しくなくなる。
それで、最終の第22折は16頁のうち10頁もが白紙に
なっている。昨今の出版物でこんなに白頁が続く本は珍しい。
通常なら、奥付裏広告を入れるとか、前付け部分にも白紙葉を
入れるとかして調整するはずである。
これは綴葉装の本文で、書写すべきことがらが最終折の
ここで終わり、後半が白紙のままになってしまった本の様子を
想起させる。現代の出版物のような調整をしなかったというよりも、
平安朝の写本のイメージを表現する一手法として、あえて
この白紙頁を作成したのではないかと思う。
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日本出版学会 2013年度・第2回出版技術・デジタル研究部会/出版史研究部会
報告者: 田中栞(日本出版学会理事、東京製本倶楽部会員)
日 時: 2013年7月12日(金)18:30〜20:30
※人数把握のため、事前申込みをお願いします。
会 場: 日本大学法学部校舎内
参加費: 日本出版学会の学会員500円、非会員1000円(配付資料の作成費用込み)
申込み・問合せ先: 日本出版学会事務局
※「7月12日研究会(田中)」として、「氏名・電話番号・
所属・学会員か非会員か」を明記の上、お申込み下さい。
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〜〜〜〜〜・・ご・・案・・内・・〜〜〜〜〜〜
…豆本を6冊作ります
2013年7月13日(土)朝〜夕、豆本三昧!
放課後講座*消しゴムはんこワークショップ
…本かがり上製本・和本など4冊作ります 2013年6月8日(土)朝〜夕、豆本三昧!
2013年7月14日(日)朝〜晩、製本三昧!
※各日、同内容です。ご都合の良い日をお選び下さい。
放課後講座*『泉孝次蔵書票作品集』の折本ワークショップ
…憧れの丸背豆本とリボン付きの貼函を作ります
2013年11月23日(土)朝〜晩、豆本三昧!
…和本2種(麻の葉綴じ・綴葉装)と帙を作ります
2013年11月24日(日)朝〜晩、和本三昧!
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朝日カルチャーセンター湘南〈神奈川・藤沢〉
2013年7月7日(日)消しゴム版画で手ぬぐい作り(大小2本作成)
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*田中栞の「豆本・製本ワークショップ」予定表
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