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日本語では、英語のように、名詞が複数の場合に s を付加することないので、名詞が1つでも2つ以上でも、名詞の形は変わることはありません。厳密に言うと、「たくさんの人々」のような複数の表現はありますが、これも「多くの人」と言っても問題がないわけですから、やはり日本語における名詞の複数と単数の区別は、英語のように義務的・強制的ではないはずです。
英語では名詞を「1つのもの・人」⇒単数形、「2つ以上のもの・人」⇒複数形と扱います。そして複数形とは名詞の語尾ににsを付加することです。
もちろん、複数形は box⇒boxes, knife⇒knives, tooth⇒teeth, child⇒childrenのように s を付加するだけではありませんが、代表的な用法として「 s を付加する」と挙げました。
しかし、どうも「複数を表す s が付く」と「2つの以上のもの・人」を表すだけではないようです。
それ以外の意味の違いがあるようです。
考えてみると、「複数を表す s が付く」は「数えられる名詞」に適用され、「数えられない名詞」には「複数の s 」は付きません。
確かに、pencil⇒pecils, house⇒houses, book⇒books のように「数えられる名詞」には「複数の s」 が付きます。この名詞に共通しているのは「具体的に形のあるもの」ということです。
一方、water, air, beauty, happiness のような「数えられない名詞」には「複数の s」がつきません。この名詞に共通しているのは「形が定まっていない・抽象的なもの」ということです。
つまり、「複数の s 」を名詞に付けると、「2つの以上のもの・人」の他に、「具体的に形のあるもの」という意味を表すことになるのです。一方、「複数の s 」を付けない単数形は「1つのもの・人」の他に「形が定まらない・抽象的なもの」を意味することになります。
次の例を見てみましょう。
(1)
a. I have no idea what he is talking about.
(私にはさっぱりわからない = I don't know)
b. I want to write a book on Japan,but I have no ideas.
(私にはアイディアが一つもない)
ideaは「何かを知っている状態」という抽象的な意味になりますが、ideas は「具体的な何かいいアイディア(案)」という意味になります。
(2)
a. I saw no lights there.
(そこの灯りが見えなかった)
b. I saw no light there.
(そこは真っ暗だった)
lights は「照明・街灯・電灯」などの具体的な明るさを表すのに対し、light は一般的な「光」を表しています。
(3)
a. I have no memory of that night.
(何一つ覚えていない)
b. I have many pleasant memories about our trip to Japan.
(多くの楽しい思い出ができた)
memory は「記憶」と解釈し、memories になると「思い出」と解釈できます。ここでも、複数形になると「記憶」が「思い出」となり具体性を帯びてきます。
(4)次の例では「複数の s 」が「具体的」に加え「種類」を意味しています。
a. There are tension in the Middle East.
(中東は緊迫した状態にある)
b. There are tensions in the Middle East.
(中東は様々な緊張関係に満ちている)
tension では「一つの概念としての緊張」を表していますが、tensions では「様々な種類の緊張関係」を表していて、そこには具体的な「宗教的緊張・政治的緊張・民族的緊張」が含まれているのです。
ここまでの解釈ができると英語を読むのも楽しくなってくるかもしれないですね。
(5)同様に「種類」を表していますが、次の違いを考えつくのは少々難しい・・・。
a. Everyday jets are flying in the Tokyo skies.
(東京の空)
b. Everyday jets are flying in the Tokyo sky.
(東京の空)
両方とも「東京の空」と解釈されますが、Tokyo skies は「新宿の空・池袋の空・渋谷の空・銀座の空」のように複数の空がイメージされています。よって、a.の意味は、正確に言うと「ジェット機は毎日、東京の空を色々な方向に飛びかっている」となります。
つまり、「複数の s 」は「具体的なもの」そして「種類」を表すということがわかります。
次の例ではどうでしょうか。
(6) She shed many tears.
ア. (彼女は多くの涙を流した)
イ. (彼女は何度も涙を流した)
のように2通りの解釈が可能です。つまり、イ.のように「複数の s 」は「回数」を表すこともあるのです。
(7) He took cold showers after waking up in the morining.
(彼は朝起きると、冷たいシャワーを浴びるのが日課だった)
では 「複数の s 」が「習慣」を表しています。
では最後に、次の「複数の s 」と「単数形」にはどのような意味の違いがあるでしょうか。いっしょに考えてみましょう。
(8)
a.I have no feeling.
b.He has no feelings.
a.は「私には感情がない」b.は「彼には気持ちがない」と解釈してしまったら不正解のようです。
もし、2つの意味をはっきりと分けるなら・・・
実は、a.の I have no feeling には in my foot.という続きがあるそうです。それを付け加えて、
a. I have no feeling in my foot.にすると「私の足はしびれてしまった」という意味になり、
feeling は「感覚」を表すようになります。一方、b.の He has no feelings. は、「彼は鈍い人・冷たい人」という意味が相応しく、feelings は「相手をいたわる気持ち」を表し、単数形の feeling のときよりは具体性を表します。
他にも feelings を「意見」と考えて、「彼には意見がない」とも考えられますし、a.の場合も I have no feeling.のみであれば、「私には(何かの)適性がない」とか「思いやりがない」となります。すると複数形の feelings の場合と意味が似てきますね。これがコトバの分析の難しいところです。
複数形とは「2つ以上のもの・人」を表しますが、それに伴って、「具体性」「種類」「回数」「習慣」までを表します。これからは「複数形」に出会ったらいつもより注意して読んでみたいです。
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