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伊藤 さとり
映画パーソナリティ
「コミュニケーション」と戦っている、毎日。
だって、人と接する際には言葉が必要で、自分の思いを伝える為の役割を言葉が果たすと考えれば、正しく自分の思いを伝える為には、言葉は慎重に取り扱わなければならない。
日本語が通じるから、言葉のウラに隠された余計な詮索や勝手な思い込みが働いて、場合によっては相手を疑ったりもしてしまう。
そう。言葉こそ、銃やナイフよりも恐ろしくって、壊すことができない最強の武器。
だから「言葉」は大切。
そして、そんな日本語が大嫌いで、大好きだ。
言葉だけでコミュニケーションが取れるなんてウソ。
「私はコミュニケーション上手だ」
なんて言う人間は、どこかで人間を軽んじてるんだと思う。
週に3回は、一方的にスクリーンで知っている映画俳優や監督と、映画の舞台挨拶や記者会見の司会で顔を合わせる日々の中で、「言葉」と「コミュニケーション」の重さに私は気づかされ、時々、痛い目にあう。
正直なことを言ってしまうと、海外のスターであるほうが楽。
だって「言葉」が上手く通じないとわかれば、大げさな「ジェスチャー」と知っている「ワード」とオーバーな「表情」で、通訳さんを返して、自分の伝えたいことを表現しようとするし、相手も理解してあげようと心を開いてくれることもあるから。
日本語が通じる人達ほど、実のところコミュニケーションは難しい。
例えばこんなことが言える。
「最後に映画をご覧になる方にメッセージを」
私も舞台上で俳優さん達についしてしまう質問。
だけど「メッセージを」なんて、随分と投げやりな問いで、結婚式のビデオレターで頼まれたって、正直困る話しじゃない?
「映画に出演して、改めてこの映画はどんなことを伝えていると思いましたか?」
「新郎(新婦)から結婚すると話しを聞かされた時、新郎(新婦)はその時、どんな様子でしたか?」
述べてほしいことを考えて、目をそらさずに優しげな表情と温かな言葉で質問をする。
そう、「アナタの話しが聞きたいんです」という態度を全身で見せて。
それが私の映画の司会者(インタビュアー)としての努め。
その人が伝えたいこと、また、その俳優や監督、そしてその映画が素晴らしいと思えるコメントを引き出すためには、心を通わせようとするオープンマインドで接し、心と言葉で「会話」をすることなんだと思う。
だけどこれは生涯、勉強し続ける課題なんだ。
だって人は皆違うし、考え方はもちろん、心の開き具合だって違うのだから。
だから自分は少しでも心を開いておこうと思う。
生きている限り「コミュニケーション」はついて回る。
そして、目と耳と口と体と空気で、人とのコミュニケーションを図る術を探す旅を、今も、昔も、これからも、私は続けていくんだもの。
【映画バベルについて】
生活の為にライフルを普通に扱っていた少年達が遊び半分に放った一発の銃弾が巻き起こす悲劇は、あまりにいたずらめいてて残酷だった。そして言葉が通じないことに苦しみ、それでも自分の思いを伝えようと必死にもがく人々の姿が胸に突き刺さった。「言葉」が通じようが伝わらない思いがある。そして「言葉」が通じない時に初めて「言葉」が必要なことを知る。人は多くのことを学び、言葉を操り、賢くなっていったけれど、普通に言葉が通じる生活を続けていると、「言葉」に頼りすぎて、本当の想いを伝えられているか、考えて喋る事を忘れてしまうのかもしれない。人と人との関係は難しく、それは家族であろうとも夫婦であろうとも最後まで全部を理解し合えないのかもしれない。だけれども、理解したいという気持ちがあれば、コミュニケーションを取ろうとする気持ちさえあれば、人と人との距離は近づき、絆が強まるのではないだろうか?そんな「繋がり」に気づかせてくれる映画を見つけた。
【プロフィール】
東京都出身。邦画洋画問わず、様々な映画のイベントや記者会見のMCを努める司会者&映画コメンテーター。「バベル」の記者会見司会も担当。小さい頃から映画館にひとりで通い、来日スターのチェックまでしていた映画好きが功を奏して今の仕事に。
現在はTSUTAYAの店内放送WAVE-C3で新作DVD&ビデオ紹介のDJ、スポーツ新聞「スポーツニッポン」で「さとりのオススメッ!DVD」のコラムなどラジオ、TV、雑誌、WEBなどで映画紹介のレギュラーを持つ。また講談社より著作の小説「返信 -TAMA.瞳の中の記憶-」が発売中。
公式ウェブサイト:
http://www.itosatori.com/
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