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「纏足の足の匂い」について書いているとき、思い出したことがある。
7月末のことだが、天津で日本語を教えていたYさんがやってきた。
日本に帰国する前に、一度青島を見たい、というわけである。
おしゃべりしているうちに、足裏マッサージに行った話になった。
Yさんは女性マッサージ師に、
「日本人の足はいい匂いがするわね、どうしてなの?」
と聞かれたそうだ。
Yさんは特別足の手入れをしているわけではないので、返事ができなかった。
「どうしてかしらね。日本人は毎日お風呂に入っているからかしら」
と、不思議がっていた。
日本人女性の足が、どんないい匂いがするのか、一度嗅いでみたいものだ。
対照的に思い出したのが、強烈に臭かった学生の足である。
天津のN大学にいたときだ。
学生が自由に出入りできるように、外国人教師専用のアパートは断り、中国人教師や一般職員が入る部屋を選んだ。
学生たちがよく遊びに来た。
私が旅行に行くときは鍵を学生に預け、自由に使えるようにした。
ルールは、
《カーペットが敷いてある部屋は、靴を脱いでスリッパに履き替えて入ること。》
最初に遊びに来た男子学生が靴を脱いで入ってきた。
「うっ」
くらくらっと目まいがしそうな匂いだ。
決してオーバーな表現ではなく、ほんとに失神するかと思ったくらいだ。
幸い、日本人の友人が置いて行ってくれた、「靴の匂いを消す」スプレーがあった。
それをシュッ、シュッとかけて難を逃れた。
当時の学生たちは、夏でも足首まである深い運動靴を一日中履いていた。
靴の中が蒸れて蒸れて、悪臭が足に染みついてしまうのだ。
女子学生も例外ではなかった。
学生たちは自主的に足にスプレーをかけてから、部屋に入るようになった。
その頃と比べると、今の学生はおしゃれになった。
何足も靴を持ち、用途に合わせて履き替えているから、失神する恐れはなくなった。
話は変わるが、天津に来てまだ間もない頃、と言っても10年以上前だが。
日本人留学生の若い女性が風邪を引いたというので、見舞いに行ったことがある。
日本人留学生たちはベッドの生活を嫌い、
床材のようなカーペットを部屋一面に敷き詰め、畳に模して暮らすのが流行っていた。
そんな留学生寮の一室に彼女は布団を敷いて寝ていた。
彼女の足元のあたりに胡坐をかいて座った。
暑いのか、足の先の掛け布団がちょっとめくれていた。
目の前に可愛らしい生足があった。
ドキッとした。
同僚の女性がすぐ気を利かして布団をかけてしまった。
ゆっくり観賞することはできなかったが、その一瞬の残像はいつまでも艶めかしかった。
最近、「素足」という上品な言葉に代わって、「生足」という生々しい言葉が使われるようになった。
「生足」の「なま」は、艶めかしいの「なま」に通じるから、なかなかうまい新語だなあと思う。
(2005年12月)
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