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日本語学習者には二つのタイプがある。
文法にとことんこだわるタイプと、
文法はそこそこにして、まずはおしゃべりしてみようという、
おしゃべりタイプある。
もちろん、両方の才能を兼ね備えた俊才も数多くいる。
文法こだわりタイプは、例えばこんな質問をする。
「先生、『くれる』の命令形は『くれろ』じゃないのですか?
どうして『くれ』というのですか」
まことに肝を冷やす質問である。
冷静な(ふりをして)私は考える。
小学生の頃、二年ばかり群馬の田舎に住んでいたことがある。
そこでは、子供が親に小遣いをせびるとき、
「おっかあ、ゼニくんろ」
と言う。
『くんろ』を丁寧に言うと『くれろ』である。
そこで推論する。
「『くれる』の命令形はもともと『くれろ』だったのです。
『やる』の命令形が『やれ』ですから、
『やれ』に対応して、『くれる』を『くれ』と言うようになったのでしょう」
こう説明して難関を切り抜ける。
おしゃべりタイプはこんな難しい質問はしない。
その代わり、
「先生、今晩は何を『食べりますか』?」
とか、
「何時に『寝りますか』?」
などと、へんな動詞が飛び出してくる。
日本語の動詞の活用形を覚えこむまでは大変だ。
考えてみれば、『食べる』『寝る』も、『帰る』『しゃべる』も、
語尾が『eru』になる動詞だから、同じ活用にすれば覚えやすい。
日本語は「ら抜きことば」のように進化の最中だから、
将来、『食べます』が『食べります』になっても不思議はない。
それはともかく、おしゃべりタイプは、一つ単語を覚えると、すぐ使ってみる。
例えば『週末』という単語を覚えると、
「先生、週末は何をしましたか?」
などと、聞いてくる。
確かに、文法こだわりタイプよりは会話の上達は早い。
日本語の会話は、文法が多少間違っていても、たいてい通じるものだ。
「文法が間違っているよ」
などと、いちいち注意しないで、どんどんしゃべらせたほうがいい。
文法が苦手な日本人としては、
おしゃべりタイプのほうが助かるし、楽しいのは言うまでもない。
(2006年4月6日)
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