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※写真は本文と関係ありません。
徳華高等学堂跡(旧ドイツ1907年〜1912年建築。貴州路)
『ので』と『から』の使い分け
私が使っている日本語中級教科書の練習問題に、
(寮の管理人さんに頼む)
「シャワーのお湯が出ないので、調べて欲しいんですが」
「エアコンが壊れているので、修理して欲しいんですが」
という例文があります。
生徒から早速、質問が出ました。
「この例文の『ので』は、
全部、『から』を使うほうが正しいんじゃないですか」
中国の大学や学校では、
『ので』と『から』の使い分けを詳しく教えているということがわかりました。
簡単に言うと、
『から』は主観的判断、
『ので』は客観的判断。
ということだそうです。
私の意見はこうです。
「今の日本人は、
『ので』と『から』を、あまり厳しく使い分けはしていません。
『ので』のほうが語感が柔らかいせいか、
『ので』を使うほうが多くなっています。
ですから、あまり使い分けを気にする必要はありません」
森田良行著「基礎日本語辞典」には、
『から』と『ので』の使い分けを詳しく述べています。
いろいろ分析していますが、
『から』を『ので』に置き換えられない例として、
「すぐ来るでしょうから、しばらくお待ちになってはいかがです」
「私もすぐ行くから、あっちで待っていてください」
という例文を挙げ、
<条件または結果の句に、
このような、まだ確定していない事柄や、話し手の推量や、
意志、願望、依頼など、主観的判断による叙述が来る場合は、
『から』を用いなければならない。>
と書いてあります。
残念ながらこの本の初版は平成元年とありますから、
おそらく、20年ぐらい前に書かれたものでしょう。
この20年の間に日本語はずいぶん変化しました。
この使い分けの基準は、現在の日本語には当てはまらなくなりました。
この例文を『ので』に置き換えてみます。
「すぐ来ると思いますので、しばらくお待ちになってはいかがです」
「私もすぐ行きますので、あちらで待っていてください」
このように、推量、願望、依頼のような場合でも、
今は、『ので』に置き換えても全然おかしくありません。
「田中稔子の日本語文法」によりますと、
<江戸時代に上方では
『さかい、さかいによって、によって、ので』
を使い、江戸では
『から』
を使っていました。
明治以降、東京でも『ので』が盛んに使われるようになり、
『ので』も『から』も併用されるようになりました。>
つまり、
『ので』は関西、
『から』は江戸の言葉だったのです。
そして、
「疲れたので眠ってしまった。」
という例文は、『ので』を使っても『から』を使ってもよいのですが、
<『ので』を使ったほうが伝統ある京都の言葉なので、
丁寧な印象を与えます。>
<『ので』と『から』を強いて区別しようとすれば、
『ので』の方が自然の成り行きを示し、
『から』の方が原因・理由を強く押し出す意が強いと言えましょう。>
と書いてあります。
自然な例文として、
「もう遅いから寝なさい。」 (『ので』は×)
「そんなことをしたから、君が悪いのだ。」 (『ので』は×)
などを挙げています。
いずれにしても、現在の日本人は、
『ので』が客観的判断で、『から』が主観的な判断などと、
意識して使い分けをしていません。
中国の日本語の先生方も、
この点を理解されて、
『ので』と『から』の使い分けの基準を、
詳しく教える必要はなくなった、と考えてよいでしょう。
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