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生ぬるいビールはおいしいか 私が中国の天津に来たのが1993年。 食べ物の話題として最初に聞かされたことは、 「中国人は生野菜は食べません」 という「伝説」でした。 大学のお偉い先生が断固としてそうおっしゃるのですから、 ついうっかり、 「私はトマトの丸かじりが大好きです」 なんて言おうものなら忽ち軽蔑されてしまいそうです。 私としてはただただ畏まって拝聴するしかありません。 しかしこの「伝説」は、まもなくあっけなく崩れ去りました。 学生達が、 「先生、おいしいよ」 と言いながらむしゃむしゃ食べているのを見ると、 何と、レタスかなんかの生野菜だったのです。 「やはりおいしいものは誰が食べてもおいしいのだな」 と、私も納得。 それからは遠慮なくトマトの丸かじりをすることにしました。 ↑最近のトマトは形ばかりよくて・・・。写真はトマトとオレンジです。 生野菜の次はおコメです。 やはり大学教授の偉い先生がおっしゃいました。 「日本人は粘っこいおコメが好きですが、 中国人はさらさらしたおコメが好きなんです」 (この先生も日本のブランド米を食べたら変るかもしれないな) と密かに思いましたが、 「粘っこいおコメはおいしいですよ」 なんて言ったらまたまた軽蔑されそうですから ぐっと言葉を呑み込みました。 その当時の中国のおコメは粘りのないおコメばかりで、 炊き方も蒸かすほうが多く、日本人としては甚だおいしくないご飯でした。 その上、おコメの中に小石やごみが混じっていて、 おコメを洗いながらそれらを取り除く作業がたいへんでした。 その後、精米技術が向上して口の中でガリッということもなくなり、 それと同時に中国の東北米が出回ってきました。 この東北米というのは日本のジャポニカ米を種にしたもので 粘っこいおコメです。 私は早速東北米に切り替えました。 中国の大学生はほとんど全寮制ですから、 朝昼晩と学生食堂でご飯を食べます。 時々学食に飽きてくるのか、 「先生、私が料理を作りますから一緒に食べましょう」 と何人かのグループがやってきます。 食堂の料理に飽きているのは私も同じですから一も二もなく賛成です。 料理の得意な学生を中心に、5、6人で料理を作ってくれますが、 おコメのご飯だけは私が買ってきたおコメで、私が炊きます。 「先生、このご飯おいしいですね」 私の炊いたご飯をひと口食べて、声を上げた学生がいました。 南方のコメどころ出身の学生でした。 わが意を得たり、とばかりに私はジャポニカ米の特徴を説明し、 日本のおコメが如何においしいか宣伝します。 その後学生たちも日本留学のチャンスが増え、 留学から帰ってきた彼らは異口同音に 「日本のおコメはおいしい」 と話題になります。 日本の粘っこいおコメは誰が食べてもおいしいのです。 ↑東北吉林産の「秋田小町」 こうして中国人の食に関する「伝説」は次々と崩れ去っていきました。 しかし、 「冷たいビールは嫌いです」 という中国人はまだ多いようです。 「日本のビールは冷やさないとおいしくないのですが、 中国のビールは冷やさなくてもおいしく飲めるのです」 つまり、中国人が生ぬるいビールが好きなのは、 中国のビールの品質が良いからだと主張する人もいます。 まあ、それは措いといて、 つい一昔前までは、どこのレストランにも冷えたビールが置いてなくて、 日本人客が、 「冷たいビール、冷たいビール」 とよく騒いでいたものです。 中国人の店員たちは、 「どうして日本人は冷たいビールにこだわるのだ」 と怪訝そうな顔をしていました。 その後、だんだん 「日本人は冷たいビールがないとうるさいから」 と思ったのか、大型冷蔵庫の中にビールが入っている店が多くなりました。 今年の中秋節は好天に恵まれ、 私の部屋からも真ん丸いお月さんを眺めることが出来ました。 日本人の女性を奥さんに持つY君が手料理持参でやってきました。 「先生、ビールを買ってきましょう」 と言って出て行った彼はビールを一本抱えてすぐ戻ってきました。 「おっ!よく冷えているじゃない」 この辺りの小さな店に冷たいビールがあるとは思いませんでしたので、 私は思わず声を上げました。 「ええ、最近は冷たいビールを飲む若者が増えましたのでどこでも売っていますよ」 「ほう!」 私は嬉しくなりました。 中国人のY君と、日本人の私と、二人で日本料理をつつきながら、 冷たいビールで乾杯しました。 生ぬるいビールじゃあ、せっかくの十五夜さんも隠れてしまいます。 ビールはやっぱり冷たくなくちゃあ・・・ね。 ただ今、日中食文化は限りなく接近中です。
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2008年10月22日
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