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武藤直大の旅日記(二) □中国の新幹線に乗って、、、杭州―温州旅日記(つづき) 武藤直大 ■杭州に何があるのか 杭州に帰って旅のもう一つの目的であるマッサージに精出した。午前中に大学付属病院に行き、助教授のマッサージと針治療を受ける。私は15年前交通事故でムチウチ症とぎっくり腰になった。我慢できないほど猛烈に痛むのに、東京の大学病院では痛み止めの薬しかくれなかった。どんな検査をしても症状が出ていないので、治療のしようがないのである。 こんなに痛いのに、近代医学では何も出来ないし、それを日本の医者たちは反省している様子もない。少しでも効くのはマッサージ療法だった。自分でも習って痛みから逃れようとした。そこからいろいろとツテが出来て頼って、最後に杭州に通うようになったのである。 中国の医科大学ではマッサージも西洋医学と同じように研究されていて、漢方医の教授陣がいる。その先生たちに治療してもらっているうちに、私の体の別の弱点がはっきりした。膝である。膝の周りの筋肉が衰えているので、立ち上がりにくく、転びやすい。揉むのと、少し怖くて痛い針治療をしてもらったが、 「これは治療や薬だけでは絶対に治らない。自分で運動をして筋肉をつけなさい。歳を取っていても、この通りやれば3ヶ月で筋肉はつきます」 と膝の屈伸や、脚を上げる運動を図解した紙を渡された。日本のテレビコマーシャルで盛んにやっている薬などでは治らないらしい。 病院を出ると街歩き。昨年まで続いていた道路工事は終わっていて、歩道は注意しなくても歩けるようになった。街で最大のデパートに行ってみた。デカイ。目抜き通りの交差点の四つ角が全部一つのデパートである。その二つは高層ビルで、2階からは道路の上を横切って動く横断歩道が通じている。 中を歩くと、ここもブランドショップが大きな面積を占めている。輸入品は税金が高いので、衣料や鞄類も日本より高めである。 「誰が買うんだろう。こんなに大きな店を構えてやっていけるのだろうか」 不況にあえぐ日本人には当然の疑問が湧いてくるのだが、 「このデパートには年間3000万円買う富裕層の客が600人ついているそうだ」 と友人は涼しい顔である。震災後の日本に来て、1000万円以上の買い物をして帰る中国人女性の姿を昨夜のテレビで観た。年間3000万円の顧客ぐらいはあり得る話だ。 夜になると、食事の後はまたマッサージである。今度は街のマッサージ店のオネーさん、おばさんたちに足裏をやってもらう。テレビを観ながら出されたスイカを食べて、大学病院では感じられなかった快感に身を任せる。 杭州には西湖という観光名所の湖があるが、市内には運河が縦横に流れている。ホテルの裏にもあるので朝の散歩をする。運河の両岸はツツジや柳などの植栽がされて公園のようになっている。小魚を釣っている老人もいた。 現役時代の出張と違って難しい交渉ごとはない。ぶらぶら歩きしながら何の仕事も責任も負っていない。だから考えることもない。家で待つ家族もいない。少し寂しいが、景色に見とれているうちに陶然とした気分にもなってくる。 ふっと、日本にいるときには感じられなかった詩情のようなものが湧いてくる。杭州にはそういう力があるようだ。去年は西湖のほとりでそうだった。杜甫や白楽天のような大詩人と同じ場所に立って、心境だけは同じになれるのではないか。今年は運河のほとりで恥ずかしげもなく挑戦する。 江南の春 杭州運河如静脈 杭州の運河は 静脈の如し 流千古瞬刻不止 千古を流れ 瞬刻も止まらず 水面欣喜西施艶 西施(杭州にいた中国の4大美女)の艶に 欣喜せし水面 今映紅花緑葉乱 今は映す 紅花緑葉の乱れるを 突如起民家嬌声 突如起こる 民家の嬌声 子女群野菜売車 子女野菜売りの車に 群がる 微風揺柳枝戯漣 微風柳枝を揺るがせ さざなみと戯る 後聳大廈無顔色 後に聳える大廈(大ビル) 顔色無し 目にしたありのままを文字にしただけで、形だけは整ってしまうのである。杭州の土地にこういう風情が残っているのか、新しく出来たのか、中国は不思議な国だと思う。 (完) ↑写真は昨年、上海と重慶を旅したときのものです。 ↑旅の目的はマッサージ。昨年上海と重慶を旅したときのもの。 |
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2011年05月14日
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