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建築計画が白紙となった2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場に関して、以前から計画見直しを提言していた建築家・槙文彦氏(86)を中心とするグループに所属する大野秀敏氏(65)、中村勉氏(69)がスポーツ報知の取材に答えた。
5月末から、屋根を支える2本の巨大アーチ構造(キールアーチ)を中止すべきと強く訴えてきた槙グループ。ようやくその声が届き、安倍晋三首相が建設計画を白紙としたことに、グループ内からは安堵(あんど)の声が出た。
大野氏(以下大)「長らく主張していたことが政策の方向付けに反映されたことは良かった。とはいえ、残された時間はギリギリだった。何とか、踏みとどまったというイメージですね」
下村博文文部科学相は、秋までに工費の上限などを盛り込んだ新たな整備計画を発表し、デザインだけでなく設計や施工方法も一括したコンペを年内に行い、年明けからの着工を目指すとした。当初、予算を1300億円としていたのに、2520億円にまで膨張した当初の計画と同じ轍(てつ)を踏まないためには、何が重要なのだろうか。
中村氏(以下中)「総工費に関しては、同規模の日産スタジアム(収容人数7万2327人)が参考になる。当時の建設費は603億円。労務費などが上がるインフレ条項を考慮すると、約1000億円が妥当。できるだけ早く、首相官邸か文部科学省内にプロジェクトマネジャーを置き、総工費や工期などを厳密にチェックすべき。最初に設計を行い、おおまかな概算を出した上で、予算を決める必要がある」
「責任の所在」が明らかでなかった点が問題の原因に挙げられるだけに、一刻も早い責任者の選出を進言。同時に、政府側からの与条件の明確化も必要とした。
大「従来案では有識者会議で出た競技場への希望を、大風呂敷を広げて何でも受け入れた。そのため、さまざまな機能や設備を導入し、費用が膨らんだ。何が必要で何が必要ないかは、設計側は判断できない。その点を、政治家がきちんと決めて提示しないと」
五輪のため 中「これまでは、VIP席など機能を盛り込み過ぎていた。どこまでシンプルにできるかを追求すべきだ。五輪のために徹するということを忘れてはいけない」
その点で、両氏が声をそろえて唱えるのが、開閉式屋根の不要論だ。
中「技術的に難しい上、故障も多いため維持管理費がかかる。今回のコンペでは見送るべきだ」
大「コンサートをやるために屋根をつけるということだったが、計画では開催は年間12日だけ。それだけのために本当に必要なのか、ということ」
政府は、計画の白紙化を発表する前から槙氏を会合に招き、意見を聞いてきた経緯がある。大野氏は「見直しが決まったことで、一つの役割を終えた。グループとしては、幕引きでしょう」と、今後のコンペへの参加を否定したが、2人の言葉は新整備計画にとって、重いものとなることは間違いない。
◆中村 勉(なかむら・べん)1946年4月1日、東京都生まれ。69歳。東大工学部建築学科卒業後、槙総合計画事務所入所。槙文彦氏に師事し、建築・設計、都市計画に参加。77年に建築家の長島孝一氏とAUR建築・都市・研究コンサルタント設立。2003年ものつくり大学教授、08年同大名誉教授。日本建築学会地球環境委員会委員長、東京建築士会会長など。
◆大野 秀敏(おおの・ひでとし)1949年、岐阜県生まれ。65歳。75年、東京大学大学院工学系研究科修了。76年に槙総合計画事務所に入所。現在は、株式会社アプルデザインワークショップ代表取締役所長。元東大大学院教授。主な設計建築物にKAAT神奈川芸術劇場など。
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