昨年10月に喉頭がんのため声帯を全摘出した音楽プロデューサーのつんく♂(46)が9日、東京・目白の学習院大学百周年記念会館で行われた歌手のクミコ(61)のコンサートにゲスト出演した。今年4月、近大入学式で声を失ったことを告白して以降、ステージに立つのは初めて。自身が作曲したクミコの新曲「うまれてきてくれて ありがとう」の歌声を聴きながら涙を流し「生きている意義を感じられるような楽しい人生を歩んでいかなければ」と誓った。
クミコのやさしく、力強い歌声がサビにさしかかると、つんく♂は何度も何度もハンカチで涙をぬぐった。
うまれてきてくれてありがとう うまれてくれて ありがとう 命よ ありがとう
失ったもの、そして得たもの。生きることの重み、幸せ。さまざまな思いが胸をかけめぐった。声帯摘出を告白した入学式でも気丈だったつんく♂が、病気公表後初めて人前で泣いた。
終演後は関係者を通じてコメントを発表した。「『うまれてくれてありがとう』という部分に『ほんとうにありがとう 出会えてありがとう』と感じました」と心中を明かし、「僕もこうやって命を残していただいたので、少しでも世の中のお役に立ちたいと思いますし、それだけではなく、私自身も生きている意義を感じられるような楽しい人生を歩んでいかなければ」とつづった。
つんく♂にとっても手術以降、初のコンサートのステージだった。ダークグレーのスーツにハットをかぶり、患部の首にはストールを巻いて登場。妻と3人の子供も客席から見守った。ステージ上では元気そうに大きなジェスチャーで感情を表現。タブレット端末を操作し、クミコと会話する場面もあった。
9月に発売された「うまれて―」は、NPO法人「日本子守唄協会」の創立15周年を記念した楽曲。会長で、同曲の作詞も担当した湯川れい子さん(79)がクミコのために用意した曲で、つんく♂の入学式でのメッセージに感銘を受け、自ら作曲を頼み込んだ。つんく♂は歌詞にも助言したといい、湯川さんは「『抱っこしてズシリと重い』なんて書くと、『抱っこしたくてもできない赤ちゃんもいるんじゃないだろうかと僕は思います』とメールが返ってきました」と秘話を明かした。
つんく♂の3人の子供たちもこの楽曲が大のお気に入りで、寝る前には「ありがとうのやつ聴きたい」とせがまれているという。つんく♂のあふれる思いを受け取ったクミコは「つんく♂さんとの出会いはご縁としか言いようがない。この歌を自分の子供と思って大切に育てていきたい」と歌い継がれる名曲にすることを誓った。
◆つんく♂の闘病から復帰まで
▼2014年3月 喉頭がんと診断。声を残すため放射線治療と化学療法を選択。
▼同9月25日 「完全寛解」と診断される。
▼同10月17日 がんが再発し手術を受けたことを告白。
▼15年4月4日 母校・近大の入学式に出席し、手術で声帯を全摘出していたことを告白。「声を捨て、生きる道を選びました」
▼同7月3日 東京ドームでの楽天―日本ハム戦で始球式に登板。
▼同9月10日 闘病手記「だから、生きる」を刊行し、「ハロー!プロジェクト」のプロデューサーを引退していたことを明かす。
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