倉敷長屋日記

福田の家、荒壁つきました

玉島の長屋改修

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竹小舞WS

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ほとんど1年前になるが、玉島の長屋を測量したのを、覚えて下さっているだろうか?

工事が中止になった訳でも、何か事情が変わった訳でもない。
施主のKさんの「閑な時でいいですから…」という甘く優しいお言葉に、私が甘えに甘えたせいで、のびのびになっていただけなのだ。申し訳ない。

Kさんがもともとセルフビルドを希望されていたので、岡山理科大学の山崎先生(今春、教授にご昇進された。祝!)に「土壁、一緒に作りませんか?」とお願いしたところ、喜んで学生4名を連れて参加下さった。
おまけに、京都大学の後輩の岡山県立大学の津田先生にも宣伝して下さったお蔭で、県立大からも津田先生以下学生3名が参加下さった。
Kさんのお友達も駆けつけてくれて、いつもの作業部隊山ちゃんと吉井さんも加わり、左官の太田さん親子を先生に総勢17名の大所帯で竹小舞を掻いた。

太田さんは、みんなに「先生」と呼ばれて「ただの通りすがりのオッサンです」と照れていた。
「すごいがぁ〜。京大卒の生徒が3人も居るで」と言うと、「コホン!出来の悪い生徒には、ビシビシ行きます!覚悟して下さい」と口では言うものの、現場でも怒った顔を見たことがない太田さんのこと、根気に優しく指導して下さる。

竹小舞を掻くのを見るのは、ちっとも珍しくないが、見るのとやるのでは大違い。
数年前に荒壁をつけたことはあったが、小舞を掻くのは初めてだ。

しかし、こういう作業をすると性格が如実に表れる。恐ろしかぁ〜
Kさんのお友達は、全員織物をされているそうだ。通りで器用なはずだ。しなやかに美しく編んで行く。
山崎先生は科学者らしく、方眼用紙の升目みたくキッチリ四角に掻く。
Kさんは、物を作り出すとアーティスト魂が燃えると見えて、目が真剣だ。施主なので、当たり前といえば当たり前だが。
“なんちゃって左官”を目指している吉井さんは、ブツブツと要領を唱えながら掻いている。
ハナから器用さを期待されていない山ちゃんは、ひたすらカメラマンに徹していた。
私ですか?アバウトな性格そのもの…らしい(ご想像下さい)。

きっと少し昔までは、こうやって村の衆が総出で小舞掻きをやっていたのだろう。
左官の修業期間は長い。平滑な壁を作れるようになるまで10年近くかかるのではないかと思う。
平滑な土つけは、とても素人にできるものではない。が、小舞掻きは約束事を守って、コツを掴み、順番を追って行けばそこそこ(あくまでもソコソコだが)には掻けるように思う。

土壁が敬遠される理由のひとつに「工事費が高い」というのがある。
パタパタ、ビスで止めつける壁と違い、人間の手が掛かる分費用はかさむ。それだけの価値・値打ちはあると思う。
指導して下さる左官さんが居れば、小舞くらいは自分で掻くのも手だ。
最も、小舞も出来が悪ければいい壁はできない。嫌がらずにキッチリ指導して下さる左官さんを見つけるのが大仕事かもしれない。太田さんみたいな素人作業におおらかで協力的な左官さんは、本当に珍しいのだ(ありがたい!)。

太田さんのご厚意に甘えて、土壁作りの面白さに目覚めて、調子に乗ってしまった私達は荒壁WSも行うことにした。
お昼にはKさんのお父さんはじめ親類の方々がバーベキューと炊き出しをして下さった。その美味しさにつられて「また、やりたい」と思ったのは、言うまでもない。美味しい食事は、モチベーションを上げる!

それでは、続きはまた〜

写真は「使用前」「使用後(の長屋を見つめる吉井さん)」「間渡し竹作りをする松田さん」「竪竹を掻く太田さん(右)と山崎先生(左)」「学校は違っても協力して作業をする学生たち」「モチベーションを上げたバーベキューと炊き出し」

調査0615/母屋

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母屋はギャラリーとして使えるように改修する。

納屋と比べると構造体の傷みは少ない。(写真1枚目・写真6枚目))
浴室(増築部分)に接する下屋の母屋と妻梁は差替えが必要だが、床下の状態も良く(写真2枚目)、外壁を剥いでみたが柱もまだ使えそうだ。

小屋は一部ロフトで残す以外は、現しにしようと思う。(写真3枚目)

私は、ギャラリーとかブティックはあまり部屋の個性が強くない方がいいと思っている。
主役は部屋でないからだ。主役を引き立たせるための舞台としての役割を果たせばいい。
とはいうものの、女性のヘアスタイルと同じで主役の印象を左右してしまうから「何でもいい」という訳でもない。

Kさんはアーティストなので、ギャラリーのイメージがある程度できている。
Kさんのイメージから行くと、母屋全体をギャラリーとして使うには広すぎるようだ。
そこで相談して、ここは「スケルトン・インフィル」で考えることにした。

母屋にはKさんのおばあちゃんが煙草をしていた時の陳列台が残っている。(写真4枚目)
近くの家具屋さんが作ってくれたそうだ。たまたま、その製作者が前を通り掛かったので、Kさんと談笑されていた。
この通りには畳屋もある。20年くらい前までは、ちょっとした通りには、ひと通りの店が軒を並べていたように思う。輸送コストもかからず、現物を自分で確認でき、作り手の顔が見え、「つけ」もきいた(笑)
この通りには、まだそんな空気が残っていた。それもKさんがここを気に入っている理由のひとつではないかと思う。

母屋にはおばあちゃんが使っていた家具も残されている。(写真1枚目)
特に食器棚は“いい感じ”なので、手入れをした後、アトリエに運んで画材入れにする予定だ。(写真5枚目)

まだ1日しかこの長屋に接していないが、Kさんがここにアトリエを構えたい気持ちが少しわかる。
玉島の中心に近い場所の割に、静かで穏やかな空気があり、時間の流れ緩やかなのだ。

夏から秋にかけて改修工事に入る。
バーベキューが日当替りの“なんちゃって左官”ワークショップを数回(竹小舞掻き、荒壁つけ、中塗)行う予定だ。
日程(8月予定)が決まりましたらUPしますので、土壁に関心のある方、自分で土を塗ってみたい方や見てみたい方、どうぞご参加お願いします。

調査0615/納屋-2

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Kさん(施主)は可能なら納屋の梁を取りたいとおっしゃった。
しかし、この架構から梁を抜くと軸組が持たない。

既に軸組全体に相当な歪み・傾きが見られること、梁の寸が小さい(末口4寸〜5寸3分/@半間)こと(写真1枚目)、許容以上に蟻害を受けている梁(写真1枚目/奥から2本目)があることから、補強が必要だと判断した。

Kさんのご希望に沿う形での補強を考える。

写真を見て、木造建築に詳しい方なら「あれ?」と思われただろう。この軸組は胴差を持たない。(写真1枚目・2枚目参照)
「家曳き/回転の術」の納屋も同じ造りだ。
梁を柱差ししており、一階の胴差はない。
梁が胴差に組み込まれているのではなく、梁は対面の柱間を突っ張っているだけで上に張られた踏天井(二階床)が水平構面として力を伝達していると思われる。

Kさんのご希望では、納屋の二階は不要とのこと。その代わりにロフトのような収納場所が欲しいとおっしゃった。
一度、既存壁を取る予定なので、柱差しされている梁の込栓を抜き、太めの敷梁を桁行方向に設けた上で寸の大きな梁を間隔を広げて架ける。その部分をロフトにし、梁間方向も両端の梁(幸い二本とも損傷が少ない)を残し、その上もロフトにする。そうすれば、補強を兼ねた、軸組をコの字に囲んだロフトができる。

小屋組は既存のまま使えそうだが、雨漏りの跡が全体に見られ(写真3枚目)、野地板と垂木は撤去せざるを得ない。
小屋組が傷んでないのが救いだ。(写真4枚目)
二階の天井は撤去し、小屋組を現しにすることにした。

この納屋の屋根は寺社に葺くような本葺きだ。もう二度と手に入らないだろう版の小さな本葺きを何とか生かしたかったが、これだけ雨漏りが見られるとなるとほとんどの瓦は流用不可能だろう。
学生に「洗い」をしてもらって、下屋に本葺きを持ってくる予定を諦めた。
Kさんはアーティストなので、残った瓦で庭に何か作って下さるといいな。

二階の窓から他の屋根を覗いた。(写真5枚目)
屋根ごとに違う素材が使われている。葺いた時期もバラバラだ。
Kさんの話だと、おばあちゃんが少しずつ手を入れた結果こうなったのだそうだ。
おばあちゃんが少しずつ直しながら暮らしてきたこの長屋を大切に思い、自分で改修して使いたいとおっしゃるKさんの気持ちに応えたい。

調査0615/納屋-1

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若い画家のKさんに、玉島にある古い長屋の改修工事の設計をご依頼いただいた。

大正時代に建てられたらしい長屋は、Kさんのおばあちゃんが煙草屋をしながら住んでいたそうだ。
玉島は港でえらく栄えた土地だが、JR山陽本線の駅を設けなかったことで次第に衰退し、新幹線が停まる(といっても「こだま」だけだが)「新倉敷」駅前と比べると活気は少ない。それだけに古い建物が多く残っている。
倉敷といえば美観地区が全国的に有名だが、玉島にもかなり豪奢な木造建築が現存している。

とはいえ、長屋は庶民の民家(多くは借家)であり、この長屋も「長屋普請」で決して建築的価値が高いとは言えない。その上、何度も「場当たり的」な改修・増築を繰り返しているが、かえってそれが建物を苛める原因になってしまったようだ。
が、Kさんは建築的価値からではなく、おばあちゃんが暮らしていたこと、静かな環境であること、長屋の持つ空気が好きなことから、ここを改修してアトリエとして使いたいと言う。
工費の事情もあり「できるところは自分で施工したい」というご希望があった。過去にもそういった工事の経験もあるので「どうせやるなら、楽しんでやりましょ!」と、ウキウキと安請合いしたのだ。

たまたま岡山理科大の山崎先生と実験の打合せでお会いする機会があったので、この長屋の話をしたら「興味ありますね〜 ボクも見たいし、学生にも見せてやりたい」とおっしゃって下さった。

面白い事はみんなで楽しむに限る!

Kさんに打診したら「どうぞ、実験や教材に使って下さい」と、ありがたいお言葉をいただいた。
手始めとして、調査・測量に女子大生2名にアシスタントとして参加してもらうことにした。
実際の工事では竹小舞かき、荒壁塗り、中塗りをワークショップ形式で学生たちや一般の方に参加してもらう予定だ。

まずは調査だ。
調査は私と理科大から沖縄出身のMさん、徳島出身のTさん、東山の家でお世話になった中山棟梁と新入社員の山本クンの5名で行った。
山崎先生も高速を飛ばして駆けつけて下さり、会議までの時間現場で彼女たちの様子を見守って下さった。
長屋は大きく分けて「納屋」「水周り」「母屋」の3ブロックが連なっている。
このうち「水周り」は今回撤去する予定だ。

午前中に「納屋」を測量・調査した。ここはアトリエとして改修する。
大きく張り出した深い庇があるが、軒桁はかなり傷んでおり取替が必要だ。(写真1枚目/測量しているのは山本クン)
壁は柱外に竹小舞がかかれており(写真2枚目/このやり方は初めてだ)、軸組の歪みに追随して壁もうねっていて竹小舞からのやり直しが必要だ。(写真3枚目/測量するMさんとTさん・4枚目/同じく中山棟梁)

MさんもTさんも建築学科の3回生だが、とても慎重な測量と丁寧な記述で助かった。山崎先生は「まだ3回生なので、役に立つかどうか」と笑っていらっしゃったが、彼女たちは測量アシスタントとして立派に役を果たしてくれた。いっぱしの建築家気取りの若い建築士より、よほど優秀だ。
これも山崎先生はじめ教授陣が建築学科の一期生として厳しく・優しく・大切に育てている賜物だと思う。

中山棟梁とは使える部分と使えない部分を検討し、新しく補強のために入れる部材の納まりやサイズ、施工方法を相談する。
こういう時に的確な判断をして下さる経験豊富な棟梁のお陰で、次々とプランが沸いてくるのだ。
現場に立ちながら、改修後の姿を想像してみる。「なかなか行けそう」と一人ごちる。
しかし、道は遠い。大きな部材の入れ替えや壁全体の作り直しが必須なのだ。

「かなり傷んでいますね…土壁も小舞から作り直しになりますよ」とKさんに申し上げたら「覚悟はできています。土も塗る気マンマンですから」と、落ち込むでもなくニコニコと笑顔で応えて下さった。
明るく前向きな施主に救われる。

そうそう、楽しんでやらなくちゃ!ね!
長くなったので、続きはまた〜

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