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先週末、美山里山舎で土壁についての話をさせていただいた。 土壁の断熱性能は低い。 気密性能については、土壁自体が無垢(ぐっつり詰まっている)なので高いことは間違いないが、土が乾いた時に柱(こっちも若干痩せるし)との間に隙間ができるので建物としての気密性は低い。柱に溝を掘ってチリジャクリをしたり、ヒゲコをつけたり、ヒモを打ったりして隙間解消の努力はするが、あの建物版サランラップみたいな気密シートに敵うはずはない。 現在、住宅の性能を評価する基準は「気密」と「断熱」だ。 これは、壁の中がガランドウな建物に対する評価基準であって、土壁の“心地よさ”を評価してくれるものではない。 性能評価が低いにもかかわらず、なぜ土壁の空間は心地よいのか? それを、科学的にどう説明すればいいのか? 困ったゾ…自慢じゃないが、“心地よい”という感覚を科学する、そんな知識は持ち合わせていない。 以前、木の家ネット・岩波さんの呼びかけで土壁の温熱環境勉強会を開いた時に、愛知産業大学の宇野勇治准教授に研究成果をお聞きしたことがあった。 窮地に陥ると、普段はスリープ状態の脳ミソがモソモソと再起動して「すがる藁」を探しだすというのは、私の数ある得意技のひとつだ。 「ヨシ!ここはひとつ、宇野先生にSOSハッシ〜ン!」 宇野先生は嫌な顔ひとつせず(といっても、お顔を拝見していないが…そこはそれ、雰囲気、雰囲気)研究レポートをメールで送って下さり、丁寧に電話で解説までして下さった。 これぞ、百人力!美山では、宇野先生のおフンドシ(失礼)で相撲を取らせていただいた。 宇野先生のレクチャーによると、土壁の特性はこうだ。 1.温度変化が緩やか(外気の影響が少なく、急激に温度が上がったり下がったりしない) 2.調湿性能がある(夏、涼しいのはこのためか) 3.蓄熱性能が高い(冬、ほっこりした暖かさをもたらす) 4.断熱性能は低い(断熱材を足すと、抜群の断熱性能を発揮) 5.気密性能は考えなくても、ま、いいっか(土自体の気密性能は高い。しかし柱の間に塗ることを考えると密閉しているとは言えない。それをいい方に考えると、わざわざ換気扇をつけなくても、ほどほどの自然換気が見込める) 賢い私は、土壁自体の断熱性能を断熱材入りの中空壁と比較するから話がややっこしくなることに気がついた。 プラスターボードと土壁の断熱性能をうんぬんするならわかる。 断熱材と土壁を比較するのは、P.Bに最新式の武器を持たせて、土壁は丸腰で決闘するような話だ。 そんなバカな話はない。 断熱性能を上げたければ、断熱材を足せばいいのだ。それはP.Bでも同じこと。 ただ、どうも私は土壁に断熱材を足すことに気持ち悪さがある。 結局、断熱性能が高くても低くても“心地いい”なら、いいんじゃない? 土壁の温熱環境は断熱だけでは説明できないと思う。 色んな要素(調湿性能、蓄熱性能等)が互いに作用しあっているはずだし、何より伝統構法の建物は壁が少なく開放性が高いので、建具の位置や種類も建物の温熱環境にかなりの影響を及ぼしていると思われる。 軒を深く出し、窓には庇をつけて夏の高度が高い日射を遮り、冬は日射を取り入れ、春と秋には風が吹き抜けるように建具を配置した上で、土壁の良いところを発揮できるように建物全体の温熱環境を考えるべきではないか。 壁だらけの壁式在来工法は、壁量計算によって「地震や風に強い」と判断される。 伝統構法は、壁の量ではなく、変形しても耐力が落ちないという変形能力の高さを評価するべきであって、壁量計算ではその特性は計れない。 それと同じことが土壁にも言えるのではないか。 断熱材や気密シートを武装した中空壁を、断熱と気密で性能を評価するのはいい。 中空壁の気密性能が低ければ、中空層に湿気が入って壁の中が結露するからだ。 土壁自体は密なので結露することはあり得ない。あり得ないから、論じるに値しない。 外側に板を張った場合には中空層ができるが、結露の可能性は低い。 隙間だって、わざわざ換気扇をつけて強制機械換気をしなくても、放っておけば勝手に自然換気をしてくれると考えると、目くじらをたてずに「ありがたや」と思えるではないか。 土壁は土壁の特性に適した評価基準で判断していただきたい。 とはいうものの、私の脳ミソはそこまで考えるのがいっぱいいっぱいだ。 それが、どういう基準になるかはわからない。これから先は、新進の宇野先生に期待している。 宇野先生のように、土壁の温熱環境なんてマイナーな研究をして下さる方は、日本の土壁の救世主だ。 私にできることは、それを現場にフィードバックさせることくらいだ。 話はガラッと変わるが、玉島の長屋で竹小舞と荒壁をみんなでワイワイ作った。
次回は、その時の報告をしようと思う。(サボらないで書くから読んでね〜) 写真は予告編で、チラっとその時の様子 |
土壁
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