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宮部みゆきさんの「誰か」の続編になる「名もなき毒」。
大企業の会長の娘菜穂子と結婚した平凡なサラリーマン杉村が、人の良さから事件に巻き込まれていくシリーズです。
娘と孫をこよなく愛す会長のトップとしてのオーラや杉村がいつも利用する喫茶店「睡蓮」のオーナーも健在でした。杉村が勤務している社内報「あおぞら」の園田編集長の毒舌も以前と変わらずなのですが、
今回は弱い部分も見せてくれます。

昨年福岡では西日本新聞に連載されていたので、大体は覚えていたのですが、やはり一冊の本になって通して読むとつらさ十倍という感じです。

タイトルからもわかるように世の中に存在する「毒」がたくさん出てきます。
マイホームを建築中に妻が勉強するハウスシック、土地汚染。
事件の発端になるコンビニのウーロン茶に混入された青酸カリ。
そして、今回最も邪悪な毒を撒き散らす原田いずみという若い女性。

彼女の吐き出す悪意の言動はすさまじく、宮部作品では珍しく途中で気分が悪くなるほどでした。
通常犯人を追い詰めた背景とかに同情する余地があったりするのですが、彼女の場合は温厚な両親、優しい兄に囲まれて育っているにもかかわらず子供の頃から異常に怒りっぽい性格だったというのです。
何を原因としているかもわからない怒りの噴出は家族を悲劇に巻き込み、周囲の人を不幸に陥れます。
今回杉村をターゲットにした彼女は彼の幸せに怒りを覚えたのでしょう。救いがないなかで、杉村は次第に憐れみを感じるようになるのです。

原田いずみはデフォルメされているにしろ、どの世界にもこういう人はいるような気がします。
学校でも職場でも毒を巻く人はいます。
誰にも理解されずに、親しく言葉を交わす友人もなく、ただ常に怒りを感じさせる人。
そういう人と関わることはやはり怖くて、でもどこかで憐れんでいる私たち。
自分の中にもそういう部分があることを知っているからかな、う〜ん難しい問題ですね。

原田いずみを最も邪悪な毒と書きましたが、青酸カリ殺人の犯人は別にいます。
この犯人が犯行を認めるシーンは再読にもかかわらず涙が止まりませんでした。
許しがたい罪ではあるけれど、もしかしたら同じ思いを抱いている人はたくさんいるかもしれない。
こんな風になるまでに手を差し伸べることは出来ないのでしょうか?

でも、現実には隣の人と言葉を交わしたこともないマンション住まいの私。
たとえ自分が同じ状況になったときも、他に助けを求めることはしない気がします。


答えの出ない重苦しい社会と個々の事件、ところどころに挟まれる杉村一家のほのぼのした会話と彼が勤める編集部の面々とのやりとりがほっとさせてくれます。

閉じる コメント(29)

あまりす先生、本当にそうですね。自分を含め誰もが持っている毒の怖さを自覚することも大事かも。

2006/10/9(月) 午前 8:52 メロディ

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宮部みゆきは妙なアニメの原作で株を上げたね〜w(^^)w

2006/10/9(月) 午後 7:29 [ esu**i123 ]

esupaiさん、株が上がったかどうか…^^; 彼女は元から実力を認められているしね〜。

2006/10/9(月) 午後 9:02 メロディ

まだ読んでないのですが早く読みたくなりましたね。宮部作品は何作か読んでますがどれも満足いく作品でした。

2006/10/10(火) 午前 0:17 nor*nor*_*agon

NORIさん、宮部さんの作品はハートウォーミングが売りだったのに、最近はちょっとビター気味ですね。

2006/10/10(火) 午前 0:21 メロディ

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宮部みゆきと高村 薫は、どっちが美人だろう(?v?)

2006/10/12(木) 午前 6:56 [ esu**i123 ]

esupaiさん、日本の女性は美しい! と「Dear Woman」でSMAPも歌ってますよ(^_-)-☆

2006/10/12(木) 午後 6:49 メロディ

本屋さんで見て「あっ、これがメロさんが紹介してたのか〜」と思って買ってみようかなと思いましたが、結局その日は「名もなき毒」は買わず荻原浩の「神様からひと言」を買わせて頂きました。もちろんメロさんがお薦めしていたからですよー。これからもメロさんのお薦めを参考にさせて頂まーす!とりあえず「名もなき毒」は前作を読まないと楽しめなそうですのでもっと先になりそうです・・・。読めるかな?宮部みゆきさんはSF小説のイメージがあるのだけど、サスペンス作品の方が面白いのかな?

2006/10/13(金) 午前 6:34 manobuyu

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宮部みゆきは、いつも犯罪を考えてるのでしょうか。。。。

2006/10/15(日) 午前 7:26 [ esu**i123 ]

ma_no_bu_yuさん、「神様からひと言」の感想楽しみにしてますよ。宮部さんはもともと現代ミステリーが主体です。それから時代物やSFファンタジーに拡げていってますね。どれも面白いけれど、私は最初の頃の作品が好きです。

2006/10/15(日) 午前 7:57 メロディ

esupaiさん、私も同じことを思いました。。。。

2006/10/15(日) 午前 8:00 メロディ

初めまして。たった今読み終わったばかり。それぞれ人には毒の部分があるって事でしょうね。誰もが解毒剤を必要としていて、彷徨い歩いているのでしょうか。シリーズ物だったんですね。「誰か」探してみます。

2006/10/24(火) 午後 3:23 coico

犯人は人殺しであるにも関わらず、哀しさばかりを感じました。とにかくこの作品は、いずみという人間の毒に圧倒され、読んでいる私まで疲れてしまいましたよ。でも、いずみも視点を変えれば可哀想。もっと人を愛したり、人生を楽しめることができれば、こんな毒をもった人間にならずに済んだのに…。と、思いっきり登場人物に感情移入してしまう作品でしたが、ミステリとしても面白かったです。「毒」をテーマにこれだけの側面を描ける宮部さんは、やはりすごい才能の持ち主です。

2007/2/13(火) 午後 10:34 zo_no_mimi

coicoさん、今さらですがトラバありがとうございます(~_~;) 「誰か」もう読まれたかな?

2007/2/14(水) 午後 6:05 メロディ

ぞうの耳さん、宮部さんには珍しくキツかったですね。原田いずみが大人になって誰か愛することが出来ていたら変われたかもしれませんね。こんなに極端ではないけれど、たまに他人を羨むだけの人を見かけると同じように思います。トラバありがとう♪

2007/2/14(水) 午後 6:09 メロディ

原田いずみは本当に怖かったですよね。宮部さんのオススメ本に「犯罪に向かう脳」というのがあり、その中の「サイコパス」という症例に彼女はピッタリでした。そのことに読みながら気付き別の感慨を持ちました。作家さんって本当にすごいなぁ…って。トラバさせて下さいね。

2007/5/7(月) 午前 10:41 金平糖

金平糖さん、トラバありがとうございました。本当にこの毒には震えがきました。宮部さんはただ可哀想ではなく、受ける側にも厳しい目線でしたね。たった一つの訴えたいことをこんなに悲しい物語に広げていく彼女はやはりタダモノではないですね。新作が待ち遠しいです。

2007/5/7(月) 午後 8:29 メロディ

強烈な毒が出てくる中、編集部内でのやり取りはホっとできる瞬間でした^^;人間の毒ばかりだと、読んでても辛いですよね。杉村さんは平凡なサラリーマンだけど、今後も活躍しそうなラストでしたね^^

2007/11/25(日) 午後 8:56 れおぽん

れおぽんさん、トラバありがとう♪
読む方もキツかったですね。でも、杉村さんのほんわかキャラと編集部や喫茶店のマスターとの関係は癒されます。
もちろん、最愛の奥様とお嬢さんとの会話はこちらが照れるくらい幸せそうね。

2007/11/25(日) 午後 10:39 メロディ

ここまで極端なものは、なかなかない(あったら大変…)と思うけど、似たようなことはどこにでもあるんじゃないかな?実際、私にもあったしね^^; 今回は、書評というより、個人的体験みたくなっていますが、TBしますね!

2010/3/24(水) 午後 11:24 やっくん

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