四川大地震災害支援活動/慶應義塾大学坂茂・松原弘典研究室

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松原弘典です、みなさん御無沙汰しています。
 
2010年3月25日から27日まで、私は2年に一度開催される日本の国土交通省と中国の建設部の交流会議である「日中建築住宅会議」に参加してきました。今回が15回目になるこの会議は、今年は日本側は井上俊之大臣官房審議官、中国側は建設部の馮俊住宅改革発展司長を団長として成都で開催されました。私の北京の設計事務所が日中住宅産業協議会にお世話になっていることから、この会議に参加しツアーに華林小学をくみこんでいただいて日本の皆さんを小学校に案内することもできました。私も久々の成都でしたし、今回は復興が急ピッチですすむ都江堰も視察したので、そのレポートをここに残しておきます。
 
●会議
26日の発表の内容は以下のようなものでした。
・(中国側1)中国の住宅の発展について
   馮俊 住宅都市農村建設部住宅改革発展司 司長
・(日本側1)日本の住宅制作について
   井上俊之 国土交通省大臣官房審議官
・(中国側2)5月12日ブン川大地震後の住宅都市農村の再建状況の紹介
   楊供波 四川省住宅都市農村庁 庁長
・(日本側2)日本の住宅建設にかかる耐震対策、省エネルギー対策について
   砺波匡 国土交通省国土技術政策総合研究所企画部基準研究官
・(中国側3)中国の省エネルギー基準と政策
   韓愛興 住宅都市農村建設部建築省エネルギー・科技司副司長
・(日本側3)日本のマンション建替えについて
   鈴木徹 国土交通省住宅局マンション政策室企画専門官
・(中国側4)中国の住宅公示の品質管理
   曾憲新 住宅都市農村建設部工程質量安全監督司処長
・(日本側4)日中建築住宅産業協議会の新たな展開と内装付き住宅の試み
   社本孝夫 (株)日本建築住宅センター代表取締役社長
・(日本側5)居住建築物における窓の省エネ影響度分析
   石黒義則 YKKAP(中国)投資有限公司上海研究開発室 高級経理
 
発表は抽象的なものもあり具体的なものもあり、大上段なものもあり細かい数字を追ったものもあり。
 
地震に関連したものでいうと中国側発表2の楊さんの発表でいくつかデータがあったので紹介すると、
・地震で被害を受けた人口は全省人口8700万人の3分の1。
・1000万あまりの人が家屋が倒壊するなどして帰るべき家がなくなった。
・2010年3月の段階で、農村部では366万世帯の住宅の再建が完了、うち146万世帯が新築、220万世帯が修繕。都市部(城鎮部)では26万戸が新築で135万戸が修繕が終了している。現在修繕はほぼ終了しており、新築の26万戸のうちののこりの20%も地震2周年までにほぼ終わる予定。
とのこと。
我々の「080523現地視察1-2」のログで私は、地震直後に政府は「中国政府は約500万人の被災者住宅を必要と概算しており、3か月以内、8月10日までに100万戸の仮設避難住宅を建てる目標を出している」と書きましたが、実際は被災者数はもっと多く、被災者住宅戸数もふくらんだということになります。それから新築だけでなく修繕の戸数が多かったということもわかります。
 
ほかにも、日本からの発表は、豊富な図表などもあって興味深いものでした。発表1や2で国交省の住宅政策のことがよくわかったし、3は日本のマンションの建替えの話しで、これはきっとすぐ中国でも必要になってくる議論でしょう。発表4では日本の技術を生かしたマンション計画の北京での事例が紹介されていて参考になったし、発表5は、中国は南北に大きい国土を持ち、国全体の省エネをまじめに議論するなら北方での断熱だけでなく南方での遮熱も重要だという話しには目をひらかれた感がありました。
 
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●華林小学
27日は1日かけて被災地復興の状況を視察しました。最初は私からのお願いで華林小学を視察コースに入れてもらったのです。国交省の「JAPAN PROJECT国際賞」(平成20年度)もいただいているわけだしそれくらいいいでしょう。なつかしの校舎は当時のまま建っていました。(おそらく動員されたと思われる、土曜だし)子供たちが庭で器械体操をしていました。
 
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竣工から1年半ほど経過していますが、とくに大きな問題もないようです。一番心配だったコーナー部分の外部に出た紙管はおそらくクリア塗装を上から再度おこなったのでしょうか、いくらか塗りムラがありましたが、水で管じたいがへたっているようなことはありませんでした。ちょっと屋根が出ているだけで直接あまがかりになる機会は断然減っています。木ジョイントもざっと目視した限りではひび割れたりしていませんでした。教室内は明るく、大事に使われている感じでした。
 
●復興事業のようす
小学校のあとはバスで都江堰(とこうえん)にいき、市内と、それから周辺の農村復興現場を視察しました。政治的には2010年の5月12日が復興2周年で一つの大きな区切りとされているようです。都江堰市内はあちこちで援建工事を間に合わせようとする現場でクレーンだらけでした。復興プロセスでは、いくつかの主要被災都市が国内の援建都市とカップリングされました。都江堰は幸運にも上海が援建都市に指定され、市内のあちこちに上海の会社の援助をしめす広告や、上海市内の病院の分院ができていたり、上海のデベロッパーが開発している住宅物件があったり、という感じでした。地震があったことなどよく見ないとわからない風でもあります。建設バブルの都市にも見えなくはない感じでした。
 
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高速わきに建設中のリニア鉄道の駅、成都と都江堰を結ぶとか。ほかにも高速からはあたらしい体育館や郊外都市がつくられていて、この期に及んだ建設の集中には驚きを禁じえませんでした。
 
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これが我々が視察対象に指定された都江堰の「安置点」(被災者を収容する居住地点をさすようです)の1つである「彗民雅居」です。延床10万平米で70平米のユニットがメイン、計1140戸。建設コストは2300元/平米。室外機置き場はあるが空調は住民各自持ちで、室内は床はモルタル壁天井は白塗装のみの仕上げ。都江堰市中心部にはこうした安置点がもう1か所あるとのこと。建設資金の財源は1.国家からの被災民援助金と2.被災地土地使用権の国家への還元のほか、3.上海市からの援建支援資金があり3が大部分を占めるそうです。この物件の建設も上海からのゼネコンが請け負っており、これをどうやって、いくらで、だれに配分するかは都江堰市マターでありまだ明らかにされていないそうです。工事はほぼ完了しつつあり、今外構を作っている段階。地震2周年までには完了するとのことで、それは実際そうなるでしょう。
 
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一方で見学ルートには組み込まれていなかったのでバスの車窓から見るのみでしたが、都江堰市内のあちこちににはまだ仮設住宅が残っていて、住民もいて使用されていました。ここにすむ住民たちを2010年5月12日までに恒久住宅に入居させる、というのが大きな目標となって動いているようですが、実際どうなるか。街のはずれには地震当時のがれきを集めたと思われるがれき山が散見され、風邪で飛ばないようにシートがかけられていました。がれきの行方はまだ決まっていないようです。
 
都江堰市内は復興事業を2周年までにけりをつけるために建設ラッシュでしたが、同時に街の外の農村を見学しました。こちらはほぼ復興事業も終わり、油のための菜の花が咲き乱れたのんびりした風景でした。私たちはもちろん一番いいところだけを見せられているのでしょうけれど、地震の痕跡はあとかたもなく、むしろ豊かな農村ライフだけしか見えない感じといった感じでしょうか。
 
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都江堰市向峨郷鹿池村です。ここは住宅のほとんどが倒壊しましたがそのあと上の写真のような4階建ての団地を作りました。8棟211戸で、2009年6月には入居しました。1人あたり36平米の住居が与えられていますので、4人家族なら144平米の住居になります。面積で計算するので1家族が2戸もらう例もあり、自分たちは狭く使って貸し出している農民もいるとか。ここの財源は1.被災家族1戸2万元の国家からの補助、2.被災地土地使用権の国家への還元、の清算あとは住居は被災民に分配される、という説明でした。周囲から浮いた感じの団地でしたが、それなりに愛されて使われているような印象もありました。2枚目写真はそばの小学校で、カナダ系の上海の木材会社が寄贈した学校だそうです。400人近くが学んでいるそうで宿舎まで併設されていました。木造なんだけど耐火のために木はほとんど不燃材で覆われており、木造建築という感じはしませんでしたが。いささか現地には不釣り合いなプレゼントに見えました。
 
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最後に見学したのはやはり農村の戸建て復興の例で、都江堰市天馬鎮と呼ばれる村でした。ここも地震で壊滅的な打撃を受けたんですが、国家からの補助と農民の自助努力で新しい村ができたといわれています。写真で見られるような住居は2階建て、1戸あたり120平米程度で、このあたりで建設すると平米760元で建設できるとのこと。1戸当たり8-9万元の建設コストになります。これを国家からの補助2万元と被災地の使用権の行政への返還で2万元、のこりをローンなどで自己資金をくんで農民が自己資金で建設するのだそうです。見た限りはみなきちんと自分たちで内装し、きれいに暮らしていました。
 
まもなく地震から2年を迎えるということで、都市部は急ピッチで整備がまとめに入っている一方で、農村はすでに復興がおわりつつある現状を目にしました。確かにいつまでも過去を振り返ってばかりもいられないのでしょう。現実というのはいろんな意味で移り変わるというか、厳しいものだなあと、復興ラッシュの都江堰を見て思った次第です。
(松原弘典)

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新建築掲載

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2008年12月号の新建築に今回の小学校のプロジェクトが取り上げられています。
また、これまでに行ってきた災害復興についても取り上げられ特集が組まれています。
是非ご覧ください。

リンクはこちらです。

四川大地震復興プロジェクト 成都市華林小学紙管仮設校舎
http://www.japan-architect.co.jp/japanese/2maga/sk/sk_frame.html

(土井亘)

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pingmag掲載

このたび僕がインタビューを答えた記事がpingmagというデザインや建築など幅広く紹介してるサイトに掲載されました。

以下がそのURLですので是非ご覧ください。
http://pingmag.jp/J/2008/11/14/sichuan/

(土井亘)

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47NEWS掲載

この度僕たちの活動が47NEWSにて取り上げられました。
以下がURlですので是非ご覧ください。

http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008111201000392.html

(土井亘)

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ヘラルド朝日掲載

ヘラルド朝日(朝日新聞の発行する英字新聞)2008年9月25日号に我々の活動が紹介されました。
朝日新聞国際編集部柄崎記者の「Joint effort creates much-needed classrooms」という記事です。
ご覧ください。

インターネットではこちらで記事をご覧いただけます。
http://www.asahi.com/english/Herald-asahi/TKY200809250066.html
(松原弘典)

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