六本木の隠れ家でカクテルを飲める一人でやってるショット・バー

六本木の隠れ家でカクテルを飲める一人でやってるショット・バー

無題

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

2012年7月9日月曜日。

イメージ 1

イメージ 2

2012年7月9日月曜日。

Bar.のダイヤル式の古い電話機が鳴り響いた。
けたたましいアナログのベルの音は、
存在感を否応なく、主張する。

悲報だった。
私も何度か行った事のある銀座のバーのバーテンダーが亡くなった。

20年以上も前の事らしいが、
そのバーテンダーと、この店のBar.のマスターが
20歳代だった頃に自分達の将来の店の話をした事が有るそうだ。
そして、このBar.が開店した時、
身重の奥様をつれて、開店祝いに駆けつけてくれたという事だ。

流石に今夜は、マスターも愁いを隠せないでいる様だ。

私の知る、その銀座のバーのバーテンターは、
面倒見が良く、若いバーテンダー達にも信任が厚く、
信頼された存在だった。

その銀座の店の出身者や彼の教えを請い、
独立していったバーテンダーが大勢いる。

今後、その銀座の店の現場は、
彼の弟子か仕切り、店は、営業を維持する事が決まったそうだ。

これから先、何年経とうとも、
彼の酒に込めた想いや、バーに対する想い、
バーテンダーとしての姿は、消える事がない。

私は想う。
魂を受け継ぐ者が居る限り、
その魂は生き続けると。
志は、受け継がれ、広がっていく。
そして、魂は永遠のものとなる。

この店、Bar.のマスターは、黙って、酒を造り続けている。

静まりかえった店内で、
グラスの中の氷の音だけが哀しく鳴った。

止まった時計の針が動き出したのは、
Bar.の扉が開き、
賑やかな街の音と共に、御機嫌の女性客が2名、
夏の夜の微風を運びながら訪れた時だった。

「マスター、おめでとう。御誕生日でしょう。
あれ、今日は、店の開店パーティーの日じゃなかったっけ?
今年は、パーティーをやらないの。」

Bar.のマスターは、笑顔で、
「今夜は、Bar.の開店を覚えていて下さる御客様が、安心して、飲めるように
静かに営業しております。」
と、答えていた。

今夜は、私にとっても忘れられない晩になった。





エピローグ

2018年7月9日月曜日。
私は、そろそろ、いく事にしよう。
陽が沈み、この街に夜のとばりが落ちる。

この店の灯が今夜も燈る。

それぞれの想いが交差して、新たな想いとなる。

今夜、また、魂に沁み入る一杯の酒が、
新たな物語りを紡ぐ事だろう。





※これは、あくまで、私の完全なフィクションです。
絶対に実際の出来事や実在の人物とは、全く関係ない話であります。


Bar.営業中。
106-0032港区六本木第七ヴィレッヂビル1階奥
03−3423−7577日祝休み7:00〜翌4:00営業
http://blogs.yahoo.co.jp/bar34237577
http://homepage1.nifty.com/krt/bar/
http://www.youtube.com/user/bar34237577
http://www.youtube.com/watch?v=cV5PPR6Qe7c

2012年7月7日土曜日。

イメージ 1

2012年7月7日土曜日。

人生を行ったり来たりしている様なリズミカルな、踏切の音が止んだ。
踏切を渡り切ると、丁度、夏の落日の斜陽が目に差し込んできた。
地下鉄に潜り込み、神々しい光が消えた時、
世間の営みが私の目にも観えてきた。

いつもの駅で電車を降りる。
ほんの数十分前の昼の世界は消え、
街は、すっかり、夜の顔になっていた。
今夜も私は、何がある訳でもない、穴蔵の様な小さな酒場で酒を飲む。

Bar.のカウンターには、
若い職人風の男性客と、その恋人らしい理系風の女性客が、
SFの様な未来の話をしていた。

「2045年には、ついに人工知能が自ら人工知能を作って、急速に進化するらしいのよ。
人工知能を取り入れて、精密機器を使って作る、飲料メーカーの経営するバールを
メトロポリタンの中に作る計画もあるらしいのよ。
何でも量子コンピューターの原理を使って、人間の閃きや直感と同じ仕組みで、
しかも、人間の脳以上のデーターに裏付けされた、
最適の飲物をミリリットル単位で正確なレシピ通りに作るんですって。
データーや個人情報を提供すればするほど、私だけのカクテルを作ってくれるんだって。」

理系女子のSF話に職人男子が答えた。

「俺は、そんな、既製品みたいなカクテルは、飲みたくないよ。
人間が作って、出来不出来も含めて、カクテルなんだよ。
寿司屋の職人もそう。体調や客との波長で味が違って、楽しいじゃないか。
前から言ってるだろう。機械とばかり話をしていると、魂が無くなちまうんだよ。
欲望むき出しの野良猫の方が、よっぽど人間味を感じるぜ。」

「魂ってあるの?」

「魂のこもった仕事って云うだろう。生きた人間の思い入れなんだよ。
どんなに機械を人間に似せて作ったって、魂が無いんだよ。
欲望や嫉妬、哀しみや歓喜が有るから苦しいのさ。だけど、その方が楽しいだろう。
アンドロイドの流す涙何て、俺のチェイサーにもなりゃしない。」
職人男子が熱く語った。

「そうね。確かにアンドロイドのバーテンダーは、嫌よね。
バーテンダーって良い仕事よね。歳をとればとる程に価値が上がるじゃない。
どんなに知識豊富で、腕の良い若いバーテンダーより、
シワだらけの年配バーテンダーの方に注いでもらうと同じ、お酒でも美味しく感じるのよね。」
理系女子も酒好きらしい。

「世の中や時代が、どんなに変わっても、身の周りの状況が、どんなに変化しても、
目に見える物だけに、とらわれた価値観を捨てて、目に観えないものを信じる事が出来た時に、
人は、自分らしく生き続ける事が出来ると、俺は信じている。」
職人男子は、言い終えると、酒を飲み干した。

私は、思う。どんなにテクノロジーが進んでも、決して無くならないモノが有る。
ライブだ。
演劇でも音楽でも笑いでもいい。そして、酒場もそうだ。
カクテルや寿司を作る機械が出来たとしても、酒場って奴は、
ファストフード店にはない、血の通った魂が宿っている。
バーチャルでは無い、本物の物語りを感じずにはいられない。

職人男子が思い出したかのように言った。
「"再会"ってカクテルが有るんだって。
この店のマスターが20歳代に初めて造ったオリジナル・カクテルなんだって。造ってもらおう。」

"再会"そのカクテルは、ジンとバーボン、ハーブの酒を使った癖の或る強いカクテルだ。
だが、そんなデーターなんか関係なく、若いアベックの2人は、
リアルな体験に心を動かされていた。

バーテンダーは、シェーカーとミキシンググラスを用意すると、酒の調合を始めた。
シェークの音が店内に響き渡り、カクテル・グラスに薄緑がかった白っぽい液体が注がれた。
次にバーテンダーは、素早くミキシング・グラスで、琥珀色の液体を撹拌し、
先程のカクテルにフロートして、若いアベックの2人に差し出した。

2人は、黙って、カクテルを飲んだ。
理系女子は、ウトウトとしていた。
職人男子が気遣う様に言った。
「酔ったのか。」
「酔うとらんとよ。」
理系女子は、故郷の言葉で答え、職人男子の肩に頭をもたげて、目を閉じた。

店内のBGMは、ビリーホリデーのオールオブミーが流れていた。
何か、懐かしく、そして、大切な想いが蘇る実感がした。
私は、魂に沁み入る一杯の酒を飲み干した。





※これは、あくまで、私の完全なフィクションです。
絶対に実際の出来事や実在の人物とは、全く関係ない話であります。

Bar.営業中。
106-0032港区六本木第七ヴィレッヂビル1階奥
03−3423−7577日祝休み7:00〜翌4:00営業
http://blogs.yahoo.co.jp/bar34237577
http://homepage1.nifty.com/krt/bar/
http://www.youtube.com/user/bar34237577
http://www.youtube.com/watch?v=cV5PPR6Qe7c

2012年6月16日土曜日。

イメージ 1

イメージ 2

2012年6月16日土曜日。

近頃では、六本木でも大手のチェーン店が増え、
個人店が少なくなった。
安心と引き換えに、夜の文化的な香りも消えていった。

私は、ネオンが煌めく街の景色から扉一枚隔てた、
このBar.の店内で、グラス片手に物思いにふけっていた。

20世紀から21世紀にかけて、
六本木の街は、大きく変貌した。

20世紀の六本木の景色は、
喧騒とした夜の世界が、煌びやかに、うごめき、
太陽が昇った後の、日曜日の午前中には、
人間はおろか、猫一匹、歩く事も無く、
眠りについた街の風景が広がっていた。

アンタッチャブルの様に街に巣喰っていたカオスの影たち。
違法カジノやドラックで浮かれていた連中の店は、
次第に消えていったかの様に観える。

かつて、街の誰もが知っていた、タブーは、
遠い昔話となった。

この、治安が良いと言われている東京の街中で、
防弾チョッキを身にまとった店主や
目を銃弾で撃ち抜かれた店長が居たなんて、話は、
21世紀になって、この街に来た人々には、
おとぎ話程度にしか感じないだろう。

今や、六本木の街には、開放的な風が吹き、
縛られる事の無い若者達は、
自分達だけの世界を謳歌して街中を闊歩する。
日曜日の昼間には、家族連れが訪れる街となった。

カオスは消え、陽の光に照らされた街に、陰影は無くなった。
そんな時代に、流されて、消えていったものも沢山ある。

あのヘタクソな似顔絵描きの流しの酔っぱらい爺さんは、何処に行ったのだろうか。
1990年頃まで居た、ライブハウスにギターの絃(ゲン)だけを売って
生計を立てていたオッサンは、何処に行ったのだろうか。

そこそこに酔いが廻ってきた頃に
雨の音が止んだ。

激しい雨は、夜中まで降り続いたようだ。
雨上がりの早朝は、
街中が生まれ変ったかのように澄んでいた。

日曜日の早朝の六本木交差点を抜け、
カトリックの教会を過ぎると、人影も無くなる。
赤坂の氷川神社付近には、霧が立ち込めていた。
鎮守の森の息吹が充満し、物の怪(もののけ)の気配を
外国人も感じ取るのだろうか、
さっきまで、六本木の街中で、大騒ぎをしていた人々も
物静かに帰路についていった。





※これは、あくまで、私の完全なフィクションです。
絶対に実際の出来事や実在の人物とは、全く関係ない話であります。

Bar.営業中。
106-0032港区六本木第七ヴィレッヂビル1階奥
03−3423−7577日祝休み7:00〜翌4:00営業
http://blogs.yahoo.co.jp/bar34237577
http://homepage1.nifty.com/krt/bar/
http://www.youtube.com/user/bar34237577
http://www.youtube.com/watch?v=cV5PPR6Qe7c

2012年5月26日土曜日。

イメージ 1

イメージ 2

2012年5月26日土曜日。

ラヂオから流れるデュークエリントンの調べに乗って、
外の雨音が語りかけてくるのは、
もう20年も昔の感触だった。
ただ、時をやり過ごしていた日々が蘇る。
浴びる程に飲んだ想い出の酒をロックグラスに注ぎ、
口を付けると身体の隅々の細胞達が目を覚まし、
生き返った心地になる。
酔いに任せて懐かしい曲を口遊むが、歌詞が思い出せない。
もう使う事の無くなったジッポライターを手にとっても
オイルの香りがする事は無かった。
通り過ぎて行ったシーンが途切れ途切れに
グラスの氷の中で溶けていく。
先の事など考えられない。
思考停止状態の私を救うのは、この一杯の酒だった。
Bar.の酒棚に、この酒があるのは、当たり前の事実だ。

酒場の酒棚には、それぞれの店の個性がある。
Bar.の酒棚には、物語りがある。

以前、Bar.のマスターが言っていたが、
酒の品揃えを考える時に、
バーテンダーの特性が出るという。
御客からの注文を想定して、どうやって、対応するかを考えるらしい。
だが、それだけでは無いと云う。
どうしても一つの想い入れを持って、残しておく酒が、
どのバーにも、どのバーテンダーにもある物らしい。

それは、・・・
Bar.が開店した当初に、
よく二人で来店していた客が、最後の一杯に、決まって飲む酒があったと云う。

マスターは、随分と月日が過ぎてから、
その女性が、お亡くなりになったと、人づてに聞いたらしい。
連れの男性は、今では、数年に一度、来店する程度だが、
その酒を飲む事は、まだ、無いと云う。

しかし、彼にとっては、
ブッシュミルズ10年モルトがBar.に在るのは、
疑う余地の無い当然の事で、
いつか彼が、ブッシュミルズ10年モルトを
飲みたいと想った時に、提供出来る日が来る事を
Bar.のマスターは、知っている。
だからBar.の酒棚には、
ブッシュミルズ10年モルトが今も在ると云う。

そして、私は、今夜、もう一つのバーの物語りを観た。
閉店間際に、訪れたのは、
Bar.のマスターが以前働いていた店の後輩にあたるバーテンダーだった。

バカルディ・ゴールド・リザーブ・ラムを手土産にBar.を訪れた。
このバカルディ・ゴールド・リザーブ・ラムを
こよなく愛していた常連客が、お亡くなりになったそうだ。

古き良き時代、そう、一昔前の愛すべき酔っ払いと、云う感じで、
同じ事を何度も繰り返して、話しながら、
ダブルで3杯飲んで千鳥足で帰っていく。
少し、癖のある変なオジサン。。だったと云う。

その愛すべき酔っ払いの御霊に献杯をして、
Bar.のマスターと後輩バーテンダーは、
バカルディ・ゴールド・リザーブ・ラムを飲み干しました。

酒場という空間で、紡がれていく物語りに触れ、
追憶の日々を感じて、
私は、少し苦く、切ない味の酒を飲み込んだ。





※これは、あくまで、私の完全なフィクションです。
絶対に実際の出来事や実在の人物とは、全く関係ない話であります。


Bar.営業中。
106-0032港区六本木第七ヴィレッヂビル1階奥
03−3423−7577日祝休み7:00〜翌4:00営業
http://blogs.yahoo.co.jp/bar34237577
http://homepage1.nifty.com/krt/bar/
http://www.youtube.com/user/bar34237577
http://www.youtube.com/watch?v=cV5PPR6Qe7c

2011年9月16日金曜日。

イメージ 1

2011年9月16日金曜日。

「野暮だねぇ〜。」
カウンターの奥の席で、妙齢の男性客が、あきらめにも似た口調で、
グラス片手に、つぶやいた。

先程まで、店内に居たアベックの事だろうか。
嵐の様に、ドカッドカッと現れたかと思うと、
バタッバタッと去っていった。

アベックの若い男は、ヘベレケの口調で、
「彼女にアレを。例の。強いの飲ませて。」
男が注文したのは、酒を飲み始めたばかりの若者が
バカ騒ぎをしながら飲む、飲み物らしい。
数年前に私が、海外のバーで酒を飲んでいる時も
若い米国人の旅行客が大騒ぎをしながら、
そのカクテルを飲んでいた。
カウンターのバーマンに
「あれは何か?」と尋ねたら
「クレイジーな飲み物だ。お前は、やめておけ」
と、忠告されたのが、その飲み物だ。

アベックの男性は、相手の都合も気持ちも関係なく、
一杯を飲むか飲まないかという間に
女性を連れて退店していった。
突然の来客に、その場の空気を奪われてしまった。

Bar.の時間が元に戻り、心地よいリズムで再び動き始めた頃に
妙齢の男性客が、つぶやき始めた。

「野暮だね〜。」
妙齢の男性客が続けて言った。
「だいたい女を酒で酔わせようって魂胆が頂けないね。
女に袖にされたって、構わないから、
その場の空気を乱さずに、粋に振る舞わなきゃ。
粋な飲み手が居なくなったねぇ〜。」

もう、遠い昔話になってしまったが、
粋な飲み手が、粋に遊んでいた時代があった。

店の周年パーティーでは、御祝儀を、そっと置いていったり、
店の従業員に手み上げを差し入れたり、
さりげなく従業員に御年玉をあげたりして、
店主が御礼をするという光景は、よく見かけたものだ。
ポチ袋を常に持ち歩いている粋な呑み助が
行きつけの店で遊んでいた。

「男は、一軒は行きつけの店を持っていなきゃ恥ずかしい。」
と、言われていた時代の話だ。
あの頃の彼ら呑み助は、店を、こよなく愛して大事にし、
気を使っていた。

店の中での立ち振る舞いも御洒落でスマートだった。
ズカズカと他人の世界に深入りをしない。
隣の席の御客とは、
軽い会釈する程度の間合いが心地好かった。

人の頭越しに無神経に話をしたり、
割って入る様な無粋はしない。

気を付けなくては、いけないのは、
常連客になり、慣れてくると、
他の店ではしない、甘えが気づかずに出てしまう。
気を許している証拠なのだが、
親しくなり過ぎない方が、イイ事が多々ある。

いつから野暮な振る舞いが多くなったのか。
自分の価値観で物を語れず、
世間が決めた銭勘定だけでしか価値を見出せない事に
本人も気づきもせずに語ったふりをする連中が増えた気がする。
寿司屋で他所の寿司屋の話を平気でしたり、
同じカウンターで誰が何を、どんな想いで飲んでいるかも知らずに、
酒の値踏みを語る連中。
安酒だの、高価だの、味が、どうだのと、
目に見える世間の価値感に左右される連中。
酒なんてものは、嗜好品だ。
其々の人の思い入れがある。
其々の人が自分の人生を飲んでいるんだ。
他人が土足で値踏みする事じゃねぇんだよ。

マナーは、忘れ去られ、ルールに縛られた世界になった昨今。
優しさが無くなった時にルールで人が死んで行く事さえある。
そんな時代になってしまった。






※これは、あくまで、私の完全なフィクションです。
絶対に実際の出来事や実在の人物とは、全く関係ない話であります。


Bar.営業中。
106-0032港区六本木第七ヴィレッヂビル1階奥
03−3423−7577日祝休み7:00〜翌4:00営業
http://blogs.yahoo.co.jp/bar34237577
http://homepage1.nifty.com/krt/bar/
http://www.youtube.com/user/bar34237577
http://www.youtube.com/watch?v=cV5PPR6Qe7c


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事