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『はいもしもしー』 「あ、つっちー? おひさー、朋子だよ」 『おおうもっちゃん久しぶり。 元気してる?』 「元気だよ、そっちはどう?」 久しぶりに、朋子は創に連絡を取った。
互いに高校を卒業して、上級学校も卒業して。
就職が決まって離ればなれになってからは、メールで連絡しあうのが主流だった。
最近はお互いにばたばたしていたこともあって、メールすらままならなかった。
しかしそのばたばた期間に、朋子は重要なことを決めていた。
中学時代からそっとやちょっとの事では驚かない、ただし驚いたときのリアクションが大きい創がどんな反応をするのか。その様子を想像して、朋子は電話口でくすりと微笑む。
『こっちはなんとか元気にしてるかな。じゃなきゃこの業界やってらんないよ』
「あはは、相変わらず忙しそうだね」 『でさー、どしたん? わざわざ電話ってことは、何かあった?』 さすがに十年来の親友は勘が鋭かった。朋子が電話をかけたというだけで、何かがあったなと看破してみせた。しかしさすがの創も、朋子がこれから告げようとしていることまで察しているのだろうか?
「実はね〜、なんだと思う?」
『じれったいなぁ』 「ふふっ、聞いて驚くなぁ、なんてね。実はね、結婚が決まりました」 『……はい?』 朋子が決めていた、重要な事。それは、人生のパートナーを得ること。
もっと端的に言えば、結婚することである。
本当はもっと早く伝えたかったのだが、朋子も朋子で準備があったり仕事があったりで時間を合わせる余裕がなかったのだ。
案の定、創は電話の向こうで固まっているようだ。 「だから、本居朋子は結婚します」
『ええっ、ちょい、ちょい待ち……! 短大出てから付き合ってる人がいるってのは聞いたけど』 「うん、旦那さんがそのカレ」 『……』 「つっちー?」 電話口がすっかり沈黙する。さすがに朋子も声を掛けざるを得ない。
そういえば親友は、驚きが過ぎるとそのまま硬直してしまう悪癖を持っていた。
『……おおーっ、おめっとさんおめっとさん! もっちゃんおめでとっ! うわあどうしよう、式の日に帰れるかな、有休足りるかなっ!?』
しばらくの沈黙の後に続いた、珍しく驚きと喜びを全面に出した創の声と台詞。
アパートの隣人の迷惑になってはいないだろうかと、朋子は少し心配になる。
『オッケーオッケー、何とかして帰るから。親友の結婚式、ここで帰らにゃいつ帰る!』
急な連絡にも迷惑がらず、むしろ大喜びで祝ってくれる親友。
朋子は、遠く離れた都会にいる彼女の様子を思い浮かべて思わず笑ってしまう。 きっと、高校時代からほとんど根っこ部分は変わっていないのだろう。
「ありがとつっちー、無理しないようにね」
『大丈夫大丈夫、私にかかれば無理も道理になるからさ』 「相変わらずだねぇ、じゃあ、日取りが決まったら正式な招待状出すよ」 『うん、待ってる待ってる。』 「はいはい、ばいびー」 『あいあいー』 最後の締めも、お互いに小学校の頃から変わっていない。
自身の結婚と親友達との再会。 そのふたつが同時に訪れる日が楽しみで楽しみで。
朋子はその日眠るまで、笑顔を絶やすことはなかった。
(〆)
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