|
夜明けとともに目が覚めた。 私は寝袋から出て、下着の上にシャツとズボンを着てから靴を履き、テントの中から這い出した。 草原地帯にはまばらに樹木が生えており、そんな原野にはうっすらと霧が立ちこめていた。 あたりの空気は、しーんと静まりかえっていて冷たかった。 思わず上着を着込む。 ケトルに水を入れ、携帯コンロに火をつける。 寒さで、手が思うようには動かない。 「また、水を汲みに行かなければ・・」 MSRのガソリン・ストーブは、大きな音を立ててケトルのお湯を沸かしていった。 私は、その熱湯でコーヒーを入れた。 私は熱々のコーヒーを注ぎ、そのマグカップを手にして立ちながら風景を眺めた。 「長い旅だった・・・。」 思わず、そんな言葉がつぶやき出てきた。 目を足元に注ぐと、靴には泥がこびり付いていた。 「でも、もう終わったんだな。」 早朝のすがすがしい空気は、心底・・私をホッとさせるものがあった。 最後まで諦めずにやり遂げた・・という充実感。 しかしながら、どこかで寂しさも感じられる・・。 たしかに・・厳しい道のりだったけれど、やりがいがあり楽しかった・・。 終わってしまった「寂しさ」というものを、噛み締めずにはいられなかった。 私が口にしたコーヒーは苦くて、そんな少しのやりきれない気持ちを代弁しているかのようだった。 それでも、熱々のコーヒーは・・私を暖めてくれた。 「新しい旅が始まる・・・。」 そう思った。 新しいものへの期待と、胸の熱い高まりを感じながら、コーヒーを飲んだ。 しばらくして霧が晴れ、広くて穏やかな空が広がっていった。 目の前には・・自由という名のものが、広がっているように感じられる。 「さてさて、何処に行くかなぁ。」 |
終わった旅
-
詳細
全1ページ
[1]
コメント(5)
|
ひとつの旅が終わりを告げた・・。 やっと辿り着いた終着点。 果てしなく長く感じられる旅であった。 今まで・・担って来た大きなバックパックを地面に降ろし、肩に食い込んできた重荷から自由になり、青空を見上げながら、タバコに火をつけ・・今まで歩んで来た道を思い出しながら・・噛み締める。 現実の旅だったら・・こんな風にしたに違いない(笑)。 (ちなみに、タバコはもう止めましたが・・) 実際・・歩んで来た道は、心の内なる旅だった。 道は恐ろしい程に険しかった・・。 常に・・絶壁の道を手探り状態で進まなければならず、何度・・崖から転げ落ちそうになったことか。 一歩すすむごとに、多くの勇気を要求され・・、鋭い岩の先端が心を削った・・・。 それでも・・その道に、危険を承知で足を踏み入れたのは・・私なのだ・・。 「傷ついても・・前に進んでみせる。」そんな想いを心にもって歩んで来た。 それでも・・ 雨の日には足を滑らし・・ 嵐の日には根こそぎ風にもってかれそうになり・・ 何度、道半ばで諦めようと思った事だろう。 これは・・長い人生において小さな事かもしれないけど、 今・・私にとって大切なことをやり遂げる事が出来て・・、ホッとするのと同時に・・すごく充実感が溢れている。 ここまで来れた事を、無事に旅を終われた事を神様に感謝したい。 こんなに、おだやかな気持ちで・・この時を迎えるとは思いもしなかった。 願っていたものは叶わなかったけれど・・ 私は彼女から・・多くの豊かな恵みをもらえた。 だから、私はわたしになれた・・・。 感謝の気持ちでいっぱいだ・・。 本当に・・彼女に出会えて良かった。 ほんとに、穏やかで・・良い終わり方だったと思う。 さて、今日から・・また旅が始まる。 まだ行き先は分からないが、果てしない旅が・・・。 ふたたび、ブーツを履き・・ヒモを締め、別のバックパックを背負って・・歩きだす。 空は穏やかで・・すみきった空が広がっているではないか・・・。 まるで、神様に祝福されているかのように。 ふたたび・・夢を持ち続けて・・・。 命がつづく限り・・・必ず何処かに辿り着くのだから。 |
|
|
|
|
全1ページ
[1]




