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☆☆☆☆ 鑑賞メディア;DVD 初公開年月 2007年5月12月 監督:タナダユキ3点 原作:松田洋子『赤い文化住宅の初子』(太田出版刊) 脚本:タナダユキ4点 撮影:下元哲4点 美術:石毛朗3点 編集:渡会清美4点 音楽:豊田道倫2点 主題歌:UA『Moor』4点 録音:湯脇房雄1点 久しぶりの更新である。 と、いうのは邦画の面白いのを見ていないからだ。これからは、☆一つや☆二つの作品は書くのもやめようと思っている。何作品か観ているのだが書くに値しない、けなすだけの作品に労力や頭を使うのは無駄だからだ。むしろ怒りが湧いてくるぐらいのオバカ作品ならそれなりに書く意欲も湧いてくるというものだ。 私が21世紀なってから評価している女流監督(こんな言い方自体が古いことは分かっているがこの監督には似合う)の一人タナダユキの2007年の作品である。 この作品は、私の師である呉智英先生を介して知った。先生が原作者、松田洋子のまんが「赤い文化住宅の初子」を評価されていた。それがタナダユキによって映画化されていたので食指が動いたのだ。 先生も指摘されていたが、この作品自体設定に無理がある。舞台は広島福山の現在の話なのだが、どうみても平成の話ではない。 まず、初子は中3で可愛く清楚だ。にもかかわらず、余りに貧乏で不幸だ。父は借金を作って失踪しホームレス。母は働き過ぎて亡くなった。兄がいるが高校中退で町工場で働いているが、バイトと変わらない待遇。しかも時々切れる。 仕方ないので初子もラーメン屋でバイトするが、給料はピンはねされるだけでなく、すぐにくびになる。 このような状況で適当な身寄りが無い場合、行政に相談すれば施設に入れるか生活保護を受けられるはずだ。学校の先生もその状況は把握しているはずなので、高校進学にさいしても様々な便宜を図ってくれる。 私が小学校や中学校の時も施設から学校に通っている子はいた。実家の近くにも施設があった。昭和40年代ですらこんな悲惨な中学生はいなかったはずだ。 タナダユキは「俺たちに明日はないッス」でも昭和としか考えられない高校生を演出していた。また、学校の先生を徹底的に嫌っている。回りの大人は自己中で下らない欲望にまみれているだけという、中2病のような青臭さを持っている。 これらの無理やテーマの古さや幼稚さがあるにもかかわらずこの作品は映画として成立している。そこが面白い。 赤い文化住宅といいながら、その鉄の錆びた赤さをそれほど強調するでもなく、むしろ赤毛のアンによって赤を強調しているうまさ。赤いちゃんちゃんこや赤いマフラー、赤い糸のあやとり。最後は赤く燃え落ちる安アパート。 サービスなのか何なのか分からないが坂井真紀に下半身を露出させてみたり、大杉漣に生ごみを食べさせたり鈴木慶一のような優しい中年に意地の悪いラーメン屋の親父を演じさせたりおかしいのである。しかし、そこが変でおかしい。テレビでは決して受けないであろう演出が映画的であるともいえる。 初子は都会に出て多分風俗に身を落とすのであろうが、それは暗示されるだけだ。 また、暗転の後のタイトルバックに流れるUAの歌は映画全体の雰囲気を良く表していて、最近の邦画では珍しく好感が持てた。
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